産経新聞記者としてプロ野球、1992年アルベールビル冬季、同年バルセロナ夏季五輪を取材。運動部長、論説委員などを経て退職。現在はスポーツライター。著書に「ブレないスポーツ報道（言視舎）」など。

津田 俊樹

<figure id="attachment_385480" aria-describedby="caption-attachment-385480" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="59da2e71"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/a6dccb851c1780e68ff42b94ffa5e8bd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385480" class="wp-caption-text">男女マラソン日本代表選手への期待を熱っぽく語る瀬古氏</figcaption></figure>
<p>パリ五輪の男女マラソンは８月10、11日、いずれも午前８時（日本時間両日午後３時）スタートで行われる。日本陸上競技連盟マラソンリーダーの瀬古利彦氏（68）は<span class="strongInContent">「女子の前田穂南選手（28）に最も期待しています。逃げて逃げまくれば、金メダルだってあり得ます」</span>と、日本女子マラソンとしては20年ぶりの快挙を予想した。</p>
<p>今大会はパリ市庁舎をスタート、オペラ座、ルーブル美術館の前を通り、ベルサイユ宮殿付近で折り返すと、エッフェル塔前を過ぎ、皇帝ナポレオンが眠るアンバリッド広場にゴールする42.195キロで競われる。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>花の都・パリの名所旧跡を巡るものの、選手には最大高低差156メートルという史上最難関コースが待ち受ける。1984年ロサンゼルス五輪、1988年ソウル五輪に出場、指導者として日本代表の強化、選考に深く関わってきた瀬古氏は<span class="strongInContent">「オリンピックは記録より勝負といわれますが、今回のパリは地獄のレースになると思います。私が優勝したボストンマラソンには有名な『心臓破りの丘』がありますが、その比ではないでしょう」</span>と、かつてない過酷なサバイバル戦になると見立てる。</p>
<p>当日の気象条件は気温20度前後、湿度50%前後が予測されるなか、急峻な坂を上るのは苦しいが、それに怯まず果敢に挑み、仕掛けることによって勝機が見えてくる。</p>
<p><span class="strongInContent">「前田選手には思い切りの良さがあります。今年１月の大阪国際女子では中間点過ぎでペースメーカーより前に出て後半は１人で走り、２位でゴールし２時間18分59秒の日本新記録を樹立しました。パリでも15キロから18キロまでの長い上り坂で最初のスパートをかけて、28キロ過ぎの急坂でもう一度スパート、そう、２段ロケットです」</span></p>
<p>優勝争いの本命は２時間11分53秒の世界記録保持者、ティギスト・アセファ（27、エチオピア）と、東京五輪女王で２連覇を目指すペレス・ジェプチルチル（30、ケニア）の２人。持ちタイムで前田はアセファと約７分の差がある。まともに競り合えば力の違いを見せつけられてしまう。だからこそ、瀬古氏は激しいアップダウンを味方につけ、大逃げの一手に出てアフリカ勢を慌てさせる作戦を授けた。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<div data-friday-nextpage-lead="結果を出し続ける“流れ”を作れるか"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<figure id="attachment_385488" aria-describedby="caption-attachment-385488" style="width: 771px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f166c5ba"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/27827efe05f00aceed18392be1943797.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385488" class="wp-caption-text">瀬古氏が金メダル獲得を期待する前田穂南</figcaption></figure>
<p>エチオピアとケニアの選手は勝利が至上命令である。そのためにビッグスポンサーがつき、手厚いサポートを受けている。瀬古氏は続ける。</p>
<p><span class="strongInContent">「ビジネス上の争いのプレッシャーに加え、国の威信もかかわっていますから、ますます負けられない。両国のライバル関係はすさまじいものがあります。彼女たちが牽制し合っているスキを突く作戦です。前田選手があれよ、あれよと逃げまくれば面白い」</span></p>
<p>日本の女子マラソンは&#8217;00年シドニーで高橋尚子、’04年アテネで野口みずきと２大会連続金メダルを成し遂げた。20年ぶりの王座奪還なるか、前田の大逃げに注目したい。また、東京大会８位入賞の一山麻緒（27）、将来性を秘める鈴木優花（24）も出場する。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>さて、男子は赤﨑暁（26）、小山直城（28）、大迫傑（33）の３選手。瀬古氏は<span class="strongInContent">「スピードがあるし、伸びしろを秘めている」</span>と赤﨑のチャレンジ精神に託す。</p>
<p><span class="strongInContent">「でも、神様がいますから」</span></p>
<p>絶対王者のエリウド・キプチョゲ（39、ケニア）に一目も二目も置く。’19年10月、非公認ながら人類で初めて２時間を切る１時間59分40秒をマークするなど、不動のトップランナーとして君臨している。</p>
<p><span class="strongInContent">「苦しい顔など見たことがない。オーラがあるんですよ、彼には」</span></p>
<p>現在、’16年リオデジャネイロから２大会連覇中。パリも制すれば、1960年ローマ、1964年東京のアベべ・ビキラ（エチオピア）、1976年モントリオール、1980年モスクワのワルデマール・チェルピンスキー（旧東ドイツ）を追い抜き、前人未到の五輪３大会連続金メダルの偉業を達成する。</p>
<p>39歳という年齢からすると、最後の五輪になるだろう。母国の後輩で２時間０分35秒の世界記録保持者、ケルヴィン・キプタムが今年２月、24歳の若さで交通事故死した。自らの後継者のためにも、マラソンの神様は全身全霊を込めて勝ちにくる。</p>
<p><span class="strongInContent">「正直、アフリカ勢とは差があります。男子は入賞が目標です。３年前、大迫選手が６位と粘ってくれた。次のロサンゼルス大会を含め、先につながるレースをしてほしい。日本がレベルアップするには、結果を出し続ける、という“流れ”が大事ですから」</span></p>
<p>ジェンダー平等を掲げる今大会は男女のマラソン開催日が初めて入れ替わり、男子が先に走り、女子のレースがフィナーレを飾る。前田が華麗に締めくくり、マラソン王国復活への第一歩を刻むことに期待したい。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<figure id="attachment_385489" aria-describedby="caption-attachment-385489" style="width: 765px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9f35ad6b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/937067b2ef3903a6688009ac7ecd86eb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385489" class="wp-caption-text">一山麻緒（左）と鈴木優花（右）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_385490" aria-describedby="caption-attachment-385490" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="af6a6031"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/292086cf05e599ad74ab41b24f52c0da.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385490" class="wp-caption-text">左から３人目が赤﨑暁、大迫傑（中央）、小山直城（右端）。表彰台に絡む走りができるだろうか</figcaption></figure>
<figure id="attachment_385491" aria-describedby="caption-attachment-385491" style="width: 800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="118c8063"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/4468dfe944106386d178b79d61e4f6d0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385491" class="wp-caption-text">前人未踏の五輪３連覇がかかるキプチョゲ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_385492" aria-describedby="caption-attachment-385492" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9a6a7cf0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/587eb6a7ae7bf110edafd6046f12d669-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385492" class="wp-caption-text">「私が優勝したボストンマラソンには有名な『心臓破りの丘』がありますが、その比ではないでしょう」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_385984" aria-describedby="caption-attachment-385984" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c51903ea"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/5ec158efcfc4286ec7474a3cb3121835.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-385984" class="wp-caption-text">パリ五輪のマラソンコース。これまででもっともタフなコースだという</figcaption></figure>


結束武郎（瀬古利彦）、共同通信社（２～５，７枚目）

2度の五輪を走り、日本陸上競技連盟マラソンリーダーをつとめる瀬古利彦氏が8月10、11日に行われる男女マラソンで20年ぶりの快挙を予測。今回は史上もっともタフなコースで記録勝負にならないからだという。

「地獄のコースで大逃げを打て」パリ五輪女子マラソン　瀬古利彦氏が20年ぶり金候補に前田穂南を指名

あなたへのオススメ

「地獄のコースで大逃げを打て」パリ五輪女子マラソン 瀬古利彦氏が20年ぶり金候補に前田穂南を指名

あなたへのオススメ

「地獄のコースで大逃げを打て」パリ五輪女子マラソン　瀬古利彦氏が20年ぶり金候補に前田穂南を指名