マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡 賢治

<p>〝令和のブラックマンデー〟となった８月５日、日経平均株価は4451円28銭安の過去最大の下げ幅を記録した。ひと月前には、史上最高値を更新したばかりで、まるでジェットコースターのような急落となった。その後、相場は順調に戻しているようにみえるが、ここから個人投資家はどんな銘柄に投資すべきなのか。金融ジャーナリストの岡村友哉氏に聞いた。</p>
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<ul>
<li><span class="strongInContent">◇岡村 友哉（おかむら・ゆうや） 金融ジャーナリスト</span></li>
<li><span class="strongInContent">【PROFILE】　</span>1980年、広島県生まれ。大手証券会社、投資情報会社を経て’10年11月に独立。経済専門番組のキャスターのほか、マネー誌、各種セミナー講師として活動している。</li>
</ul>
<h3><span class="strongInContent">「なぜここまで？」……歴史的な下落の背景には「円キャリートレード」</span></h3>
<p>日経平均株価は、８月２日に値下がり幅で歴代３位の2217円安（下落率5.8％）、その翌営業日である５日に歴代１位の4451円安（下落率12.4％）を記録しました。</p>
<p>日銀が追加利上げをしましたが、たった0.15％。会合後の会見で植田日銀総裁がタカ派姿勢を示したとはいえ、東日本大震災後や新型コロナの世界的流行後を想起させる暴落劇には、「なぜここまで？」という感を抱いた投資家が大半ではないでしょうか。</p>
<p>その後の戻りの速さにも驚きました。日銀の内田副総裁の〝火消し発言〟も材料になりましたが、改めてドル円相場と日本株の関係性の強さ（円安なら株高／円高なら株安）を痛感しましたし、その背後にあった「円キャリートレード」の存在の大きさを再認識させられました。</p>
<p>今回、円キャリートレードの解消（巻き戻し）が超速で進行し、これが下落の“震源地”であることを早い段階で市場が見抜いたことが大きかったようです。円キャリートレードの解消が進めば売り圧力は減少するというわけですが、これは重要なポイントなので、さらに詳しく解説します。</p>
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<figure id="attachment_387801" aria-describedby="caption-attachment-387801" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2c48815b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/a5da165f9b2f883941f240e59b2693c6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-387801" class="wp-caption-text">金融のプロが注目する、歴史的暴落を乗り越え逆行高する好業績「中小型株」とは……</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">市場を揺るがした「円キャリートレード」とは</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>大きな相場のうねりが超速で起きた背景には、巨額の資金を世界中のマーケットで運用しているグローバルな機関投資家のポジションの偏りの存在がありました。その中でも、より日本株へ影響が大きかったのは「円キャリートレード」の偏りでした。</p>
<p>円キャリートレードとは、低金利の円を借り入れて、ドルなどの高金利通貨に換えて運用することで、金利差による収益を得ることを狙った取引です。</p>
<p>基本的に、投資家は「円売り・ドル買い」のポジションを持つため、この取引が増加すると為替市場では円安圧力が強まり、これまでの円安の原動力となっていました。</p>
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<p>しかし、７月31日に日銀が追加利上げをした直後から、日米の金利差が予想よりも早期に縮小するという見方が浮上。</p>
<p>円キャリートレードを仕掛けていた投資家は、あわてて「円売り・ドル買い」ポジションの解消に動きました。それが為替市場では、大規模な「ドル売り・円買い」となり、恐ろしいほどのスピードで円高が進行しました。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="円売りボジションは解消、だが…"></div>
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<p><span class="strongInContent">■円</span><span class="strongInContent">売り</span><span class="strongInContent">ボジションは解消、だが円相場の影響力は衰えず</span></p>
<figure id="attachment_387802" aria-describedby="caption-attachment-387802" style="width: 1352px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7bf684d6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/1aa392a851b593e35cf3bc5ad76b2943.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-387802" class="wp-caption-text">【表１】８月13日時点でついに「円買いポジション」に……</figcaption></figure>
<p>米国のCFTC（商品先物取引委員会）が開示している、シカゴ・マーカンタイル取引所の通貨先物市場における投機筋（ヘッジファンドのこと）の円の建玉（未決済分の残高）を見てみましょう【表１】。これが長らくマイナスになってきたのは、通貨先物市場において投機筋も「円売りポジション」に偏っていたことを示しています。</p>
<p>ただ、この円売りの建玉が日銀会合後に急激に縮小。そして、８月13日時点ではついに「円買いポジション」に転じたことが分かります。円買いに転じたのは’21年３月８日以来のこと。投機筋もこれまで積み上げてきた円売りを超速で解消していったことが分かります。</p>
<p>それまで、日本株は、円安による企業の業績改善を材料として上昇していた側面が強く、このパニック的な円高が暴落につながっていったのです。足元の相場をみても、「円安・株高」あるいは「円高・株安」という連動性は高く、今後も円相場が日本株に大きな影響を与える展開が続くでしょう。</p>
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<h3><span class="strongInContent">過去のショックとは違うことを市場は理解</span></h3>
<p>「円キャリートレード」の解消による急激な円高と株安。株価の急落に伴い、さらなる下落に備えて保険をかける機関投資家の行動により、日米で市場の価格変動の度合いを数値化した「ボラティリティ」が跳ね上がりました。</p>
<p>ボラティリティが急激に上昇すると、機械的に株が売られ、またボラティリティが上昇するという悪循環が一時的に発生します（ボラティリティ上昇→株価下落→ボラティリティ上昇→株価下落）。ただ、そうした動きも日米同時に短期で収束。</p>
<p>８月５日の暴落は何か世紀末のような雰囲気でしたが、〝何とかショック〟と名が付く過去の事例とは違うだろう……ということを市場は冷静に捉え、行動していたようでした。</p>
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<h3><span class="strongInContent">個別銘柄も下落から大きく戻る展開に</span></h3>
<p>８月大荒れの日本株市場。日経平均株価でいえば、７月末終値３万9101円に対し、８月５日安値３万1156円まで見た後、16日時点で３万8062円まで修復しています。</p>
<p>あれだけのドローダウン（下落率）がありながら、７月末終値を100とした場合の現在位置は97.3。「ハイ、元通り」感も相当強い……。これは個別株でも同じことが言えます。</p>
<p>８月の急落時に年初来安値を更新してしまったプライム上場銘柄は、全1646銘柄中で1067銘柄（全体の65％）ありました。その中で時価総額の大きい上位10銘柄の騰落率を見てみましょう【表２】。</p>
<figure id="attachment_387803" aria-describedby="caption-attachment-387803" style="width: 1792px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1cccff19"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/4b681ace7211dfe07a95883167503238.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-387803" class="wp-caption-text">【表２】８月の急落時に年初来安値を更新してしまったプライム上場銘柄は、全1646銘柄中で1067銘柄</figcaption></figure>
<p>３月下旬に上場来高値を更新したトヨタ自動車ですら、８月に年初来安値を更新。７月末からの＜最大ドローダウン（下落率）＞でいえばトヨタで－26％、三井物産でも－32％というまさに阿鼻叫喚。</p>
<p>ただ、その横に記載されている＜リバウンド力＞を見ると、いずれも「ほぼ下落率と同等の反発力」を記録していることが分かります。</p>
<p>つまり、今回の暴落→急反発の過程で起きたことは、相場の下落局面で買う「リターン・リバーサル（逆張り）」と呼ばれる現象であると断定できそう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="８月の月間騰落率が10％以上という銘柄とは……"></div>
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<p>相場が一度壊れたことで、投資家がリスクに対し極度に身構え、高配当などの割安株や業績が景気に左右されにくいディフェンシブ株を、一時的に株価が下落したタイミングでコツコツ買う……そんな光景は一切なかったといえます。</p>
<p>下落率の大きい株の反発力を狙いにいく（買戻しに着目する）ような動きが短期間で実現したわけですが、８月が月初来プラスになっているのはキーエンスのみ。売られ過ぎた分の修復は入っても、まだその傷が完全には癒えていないのが現状。</p>
<p>また、急落によって含み損を抱えた投資家の保有株が山積みとなっているので、戻った水準での「売り」圧力も非常に強く、ここからの上値は重いと想定しておくのが自然でしょう。</p>
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<h3><span class="strongInContent">年初来安値更新後、８月の月間騰落率が10％以上という銘柄とは……</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>下がった分、戻しただけ……これでは日経平均株価同様、まだ８月は月初来でプラスにはなりきれません。</p>
<p>下がったけど、その後の上昇が目覚ましく、８月が月初来大幅プラスになっている銘柄はないのか？　時価総額が比較的小さい中小型株を含めて、調べてみました。</p>
<p>プライム銘柄で８月に年初来安値更新という憂き目に遭いながら、その後の強烈切り返しで、月初来プラス10％以上上昇している銘柄は複数ありました。</p>
<p>その中で時価総額500億円以上の銘柄に絞ると北越コーポ、イーレックスなど全11銘柄になります【表３】。こちらでも、PER、PBR、配当利回りなどで見た割安株が優先的に買われているかというと、そうでもありません。</p>
<figure id="attachment_387804" aria-describedby="caption-attachment-387804" style="width: 1848px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ae13a7e5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/e4fc76216002b2dce23b933edf03094b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-387804" class="wp-caption-text">【表３】この中から、岡村友哉さんがピックアップしたのは……</figcaption></figure>
<p>上がっている株の共通点でいえば、地合い悪化に飲まれて８月に年初来安値まで突っ込みながら、その時期に発表したポジティブな決算材料に対し、平常時以上に超絶好反応を示したというような銘柄が多いことが挙げられます。</p>
<p>本来であれば、この時期に年初来安値を更新するはずはなかった、業績面の材料がある成長株にお金が流れ込んでいるのは間違いなさそう。「悪かろう安かろう」という言葉もあります。単に配当利回りが高い（株価が安いから）、といった要素ではなく、業績面で見た“クオリティの高さ”、これがキーワードになっていくのではないかと考えます。</p>
<p>■有料版<span class="strongInContent">【FRIDAYサブスク】</span>では、８月の暴落を乗り越えて、逆行高する好業績の中小型株11銘柄の中から注目したい「３銘柄」を岡村友哉さんがピックアップして公開しています。</p>
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<p><a href="https://friday.gold/article/271389" target="_blank" rel="noopener">【FRIDAYサブスク】<span class="strongInContent">『【実銘柄公開】金融のプロがピックアップ…歴史的暴落を乗り越え逆行高する好業績の中小型株とは…』</span>はコチラ</a></p>
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松岡賢治

8月5日、日経平均株価は過去最大の下げ幅を記録した。その後、相場は順調に戻しているようにみえるが、ここから個人投資家はどんな銘柄に投資すべきなのか。金融ジャーナリストの岡村友哉氏に聞いた。

下げたけど…金融のプロが注目！歴史的暴落を乗り越え逆行高する好業績「中小型株」とは？？

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