<figure id="attachment_388753" aria-describedby="caption-attachment-388753" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="aee7ad18"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/c6659a2d544025a95d3521398e17c4dc.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388753" class="wp-caption-text">まつい・やすまさ／’63年、富山県生まれ。東工大卒業後、テレ朝へ入社。’23年に定年退職し、故郷・南砺市井波のすばらしさを全国に伝えたいと個人事務所を立ち上げ。写真は井波の実家で撮影</figcaption></figure>
<h2>４部屋にギッシリ</h2>
<p><span class="strongInContent">「お邪魔しま……!!」</span></p>
<p>部屋に入るなり、圧倒的な迫力に言葉を失った。棚を埋め尽くす箱、箱、箱……。大半が1960年代から’70年代に絶版になった、超貴重なプラモデルである。持ち主は、元テレビ朝日アナウンサーの松井康真（やすまさ）氏（61）だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「（富山県南砺（なんと）市井波の）実家だけで４部屋にギッシリです。20年ほど前に数えると3000点以上ありました。東京の自宅に保管したモノを合わせれば、把握（はあく）しきれません。テレ朝を定年後は、大好きなプラモデルに囲まれて暮らしています」</span></p>
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<p>プラモ好きが高じ、今年３月には業界の雄『タミヤ』の模型史研究顧問に就任した松井氏。″中年オトコの夢″を叶えた元アナウンサーの、超マニアックな生き様をお届けしよう。松井氏がプラモデルの魅力に引き込まれたのは10歳の時だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「親戚のオジサンに、近所のなんでも扱っている『よろず屋』のような店で『好きなのを買ってあげるよ』とプラモデルを勧められたんです。理由は覚えていませんが、私が選んだのは『タミヤ』製のフランスの戦闘機『ミラージュ』と旧ソ連の爆撃機『イリューシン』でした。縮小されたフォルムは実物に忠実。しかも組み立て説明図を見ると、漢字交じりで小学生には難しい解説がビッシリと書かれています。これは子供騙（だま）しでないぞと一気に魅了されました」</span></p>
<p>松井氏は『田宮模型（当時）』の総合カタログや『タミヤニュース』を取り寄せ、プラモの世界にグイグイ引き込まれる。</p>
<p><span class="strongInContent">「’74年の総合カタログを見ると、同年で生産中止のキットがいくつかあったんです。『大切に取っておかないとマズいな』と感じました。それからです。絶版危機のキットを集めるようになったのは」</span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="プラモ愛と熱意"></div>
<h2>地方取材で玩具店回り</h2>
<p>松井氏は、ただ古いプラモをコレクトしていただけではない。近所の玩具店を自転車で回り、模型専門雑誌の「これ売ります」欄をチェックし往復ハガキを送って、より貴重なファン垂涎（すいぜん）の「お宝」を片っ端から集めたのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「例えば『タミヤ』の初版キットは、上下の箱を合わせた空間に収まっています。一方、重版以降はキャラメル箱のように入口が開くタイプ。レア感が違うんです。お宝感が出るのは箱だけではありません。スウェーデンの戦闘機『ドラケン』は、プラパーツの色が普通は銀色なのですが、初版にはほとんど見かけない幻の緑色のバージョンもあるんです。私は２種類とも手に入れました」</span></p>
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<p>テレ朝に入社すると『ミュージックステーション』や『ニュースステーション』などの看板番組を経て、プロ野球の実況を担当。キャンプ取材や試合中継で地方に行くたびに、時間を見つけプラモの置いてある玩具店を回った。</p>
<p><span class="strongInContent">「春のキャンプだと、２週間ほどの取材で１日休みがあります。その日はレンタカーを借り、当時はナビなどありませんから、電話帳と地図を頼りに店を回りました。『お宝』を見つけても、いきなり『譲ってください』などと野暮（やぼ）なことは言わない。『これは’60年代に絶版になり今では手に入りませんよね』と、店の人にプラモへの熱意を伝えるんです。ある時、宮崎の模型屋のショーウィンドーで’72年に絶版となった米国のＭ40戦車、通称『ＢＩＧｰＳＨＯＴ』の完成品を見つけました。発見した時は熱心に見ていただけですが、翌年のキャンプ取材で再びうかがうと店主が『去年も来たよね』と覚えていてくれた。そして『近々店をたたむから』と言って、『ＢＩＧｰＳＨＯＴ』を譲ってくれたんです。僕の熱意が、店主に伝わったんだと思います」</span></p>
<p>最近はネットのオークションサイトで「お宝」を落札することも多くなった。ただ、一抹の寂しさもあるという。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="あの事故がキッカケで"></div>
<h2>あの事故がキッカケで</h2>
<p><span class="strongInContent">「お店の人と直接交渉する時には、こちらの熱意を認めてもらわないと入手できませんでした。ネットオークションでは便利な反面、お金さえあれば落札できる。なんだか人情がなくなったような気がして、複雑な心境になります」</span></p>
<p>松井氏は東京工業大学卒で理系の出身だ。科学の知識と″プラモ愛″は、報道番組でも大いに発揮された。’11年３月の東日本大震災の直後に起きた、福島第一原発の事故である。</p>
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<p><span class="strongInContent">「他局は、原子炉の正確なイメージを表現できていませんでした。私は、たまたまネット上で１号機の原子炉建屋の二面図を見つけたんです。『いずれ削除されてしまうだろう』とすぐに保存。複数の原発関係者に『本物ですか？』と問い合わせると『間違いない』とウラがとれたので、この二面図を基にフルスクラッチの原子炉建屋模型を約２週間かけて自宅で作りました。複雑な配管や圧力容器などを忠実に再現した、144分の１のスケールモデルです。デスクに『これは良い』と絶賛され、模型はテレ朝の報道番組でたびたび使われました」</span></p>
<p>他にも専門誌『世界の艦船』編集長に資料協力してもらい北朝鮮の貨客船『万景峰（マンギョンボン）号』模型をフルスクラッチするなど、松井氏の作る模型は番組に貢献した。</p>
<p><span class="strongInContent">「プラモマニアとして（深夜のバラエティ番組）『タモリ倶楽部』にも、10回ほど出演しました。最後に出たのが『ボウリング・いのしし』や『カミキリ』など、動物や昆虫のＢ級プラモを専門家たちが愛（め）でるという企画。これが、アナウンサーとしてのラストの仕事だったんです」</span></p>
<p>’23年３月に松井氏は定年を迎える。テレ朝から慰留（いりゅう）され、定年延長する選択肢もあった。ただ松井氏には、定年後にやりたいことが二つあったという。</p>
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<p><span class="strongInContent">「一つは地元・富山県井波の活性化。もう一つが、公式ガイドブックも執筆し子供の頃からお世話になった『タミヤ』への恩返しです。幸い、交流のある田宮俊作会長から『定年になったらウチを手伝って』と言われていたので快諾しました。模型史研究顧問となった当面の仕事は、この10年ほとんど手つかずの本社（静岡県静岡市）内にある『歴史館』のリニューアルです。『タミヤ』の歴史が散逸しないよう、しっかりと充実させます」</span></p>
<p>ここまで大好きなプラモの世界に没頭できたのは「妻をはじめ家族の理解のおかげ」と語る松井氏。第二の人生で″プラモ愛″を深化させる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="松井氏の&quot;プラモ愛&quot;と素顔写真"></div>
<figure id="attachment_388754" aria-describedby="caption-attachment-388754" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="77b8a599"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/29415bc3298d2975a29b997f25139027.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388754" class="wp-caption-text">実家の２階にあるプラモデルの収納部屋。自分用に『タミヤ』のオリジナル看板を作った</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_388755" aria-describedby="caption-attachment-388755" style="width: 2494px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3126851a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/c032b55ffb182b1dd84510de14bb5b4e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388755" class="wp-caption-text">彩色やフォルムなどを忠実に再現する。作製時の表情は真剣そのもの</figcaption></figure>
<figure id="attachment_388756" aria-describedby="caption-attachment-388756" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a4dc4369"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/09e9ab301d523ed724c8f0e02a7db3a9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388756" class="wp-caption-text">ドイツの重戦車『キングタイガー』の原画（小松崎茂画伯）はメーカーの倒産で関係者から譲り受けた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_388757" aria-describedby="caption-attachment-388757" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a94fc274"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/5c070204de96eb88f3a43ad0d779f17d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388757" class="wp-caption-text">スウェーデンの戦闘機『ドラケン』。プラスチックパーツの成型色は銀色と緑の２色が。緑が超貴重だ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_388759" aria-describedby="caption-attachment-388759" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4c190fa5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/26da5dc8d62e539ad2c27bab2f1ecff2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388759" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　松井康真･元テレ朝アナが定年後に叶えた″中年オトコの夢″「プラモデルに囲まれて暮らしています」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_388760" aria-describedby="caption-attachment-388760" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="78ed9870"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/08/2cb5d6f045d5487f24cf984954919582.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-388760" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　松井康真･元テレ朝アナが定年後に叶えた″中年オトコの夢″「プラモデルに囲まれて暮らしています」</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2024年9月6・13日合併号より</p>
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幸多潤平

元テレ朝アナウンサーの松井康真は定年後、大好きなプラモデルに囲まれ、第二の人生を謳歌している。3000点以上のお宝を収集し、「タミヤ」の顧問にも就任。"プラモ愛"がスゴすぎる超マニアックな生き様に…

「プラモデルに囲まれて暮らしています」元テレ朝アナ・松井康真が定年後に叶えた″中年オトコの夢″

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