1975年、東京生まれ。講談社「フライデー」編集部契約カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。各国軍、自衛隊、警察、海保をメインに取材。主な著書は「陸自男子」(コスミック出版/'18年)、「試練と感動の遠洋航海」(かや書房/'96年)、「がんばれ女性自衛官」(イカロス出版/'00年)、「特殊部隊の秘密」(PHP研究所/’15年)、「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社/'19年)など。また、「東京マグニチュード8.0」「ヱヴァンゲリヲン」など自衛隊に関するアニメや漫画の監修なども行なっている。

菊池 雅之

<h3>特別フォトレポート<br>
全長333ｍ・乗員約5000人、太平洋の守護神が装備を一新<br>
最新鋭ステルス戦闘機に加え、海軍型オスプレイも配備された<br>
貴重な内部をスクープ公開</h3>
<figure id="attachment_390259" aria-describedby="caption-attachment-390259" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="76381654"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/2c19d4b1499e2c3efe76c323468de085.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390259" class="wp-caption-text">カールビンソンの甲板上にひしめく、F/A-18。米海軍の主力戦闘機だが、今後は最新鋭のステルス戦闘機F-35Cへと更新されていく</figcaption></figure>
<p>耳をつんざくような轟音（ごうおん）を響かせながら、最新鋭のステルス戦闘機Ｆ-35Ｃが、整然と、発艦デッキに向かって甲板を移動。カタパルトにセットされると、直ちに機体後方で横幅15ｍほどの大きさの甲板の一部が起き上がって、巨大な板状の壁となる。これは「ジェットブラストディフレクター」と呼ばれるもので、エンジンの爆風から駐機中の機体、乗員らを守る役割を持つ。</p>
<p>爆音を轟（とどろ）かせ、Ｆ-35Ｃは甲板を滑り出す。陸上基地の滑走路の長さは１～２㎞を超えるのが普通だが、空母では100ｍ程度しかないために、自機のエンジン推力だけでは飛び立てない。カタパルトの助力を得て一気に加速すると、Ｆ-35Ｃは瞬く間に、蒼空へ。すぐさま次の機体が発艦準備にかかり、数分間隔で、次々と飛び立っていった――。</p>
<p>６月27日から８月１日にかけ、ハワイ周辺海域において環太平洋合同演習「リムパック」が行われた。冒頭は、演習の中核を担った米海軍空母「カールビンソン」による発着艦訓練の様子だ。</p>
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<p>カールビンソンの艦載機部隊である第２空母航空団は９個の航空部隊で構成されており、’19年頃よりＦ/Ａ-18戦闘機から、レーダーに探知されにくく長距離ミサイルの搭載が可能なステルス戦闘機Ｆ-35Ｃへと入れ替えが進められている。</p>
<h2>戦闘機など70機搭載</h2>
<p>垂直離着陸が可能な海軍型オスプレイも配備されており、カールビンソンの戦力は軍事基地一つに匹敵すると言われる。生まれ変わったカールビンソンの姿を日本人で初めて密着撮影した。</p>
<p>カールビンソンは全長333ｍ、最大幅77ｍ、満載排水量10万ｔ超。世界最大級の空母である。この巨大な艦の中で、約5000名もの乗員が働いている。戦闘機や攻撃機、電子戦機など最大70機もの航空機を搭載することが可能だ。</p>
<p>狭い甲板で効率良く作業するため、デッキクルーたちは、紫、青、緑、黄、茶、赤、白の７色に色分けした服を着て、一目でどの仕事をしているか分かるようにしている。例えば黄は発着艦に係る作業全般を行う乗員、赤はミサイルや爆弾などを取り扱う乗員、という具合だ。</p>
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<p>甲板作業全般を統制するのが「エアボス」と呼ばれる幹部であり、甲板を見下ろせる航空管制室から常に厳しい目を向けている。空母は軍艦だが、航空機が主たる武器だ。そのため、空母の艦長は必ずパイロットもしくは航空士官から選ばれている。</p>
<p>カールビンソンは’82年の就役時から、太平洋からインド洋、中東アラビア海を主たる担当エリアとしている。現在の母港はサンディエゴだが、中国の挑発行為が活発になるたびに、アジア地域へと駆け付けており、日本にも寄港している。</p>
<p>空母は軍事力の象徴である。</p>
<p>中国はアメリカとの戦力均衡を目指して空母を三亜（サンア）や青島（チンタオ）へ配備。現在、４隻目を建造中だ。中国が空母を揃えつつある状況は、アメリカにとって看過できない。米本土から遠く離れた横須賀に寄港している理由は、もともと極東地域への即応態勢を取るためだった。だが、今やほとんど、中国への牽制（けんせい）が主たる任務となっている。</p>
<p>’21年に来日した際は、初の太平洋展開を行っていた英空母「クイーンエリザベス」と合流。10月に沖縄周辺で初となる日米英蘭加新共同訓練を実施した。前年の’20年に中国海軍は日本の領海侵入を複数回行うなど、挑発行為を激化させていたため、中国に米英でプレッシャーをかけたのである。</p>
<p>「リムパック」を終え、カールビンソンは帰還したが、軍事的緊張が高まればすぐに日本に向けて出港する。装備を一新した「太平洋の守護神」は、中台有事に備え、サンディエゴからニラミを利かせている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="カールビンソン…衝撃の「内部」写真"></div>
<figure id="attachment_390260" aria-describedby="caption-attachment-390260" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="56ae59cf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/c92853182e260e4e0b4d05ae588fff76.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390260" class="wp-caption-text">垂直離着陸が可能な海軍型オスプレイは、空母の上でも重宝されている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_390261" aria-describedby="caption-attachment-390261" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c4228944"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/0225a31db38934237f442ff1ac570706.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390261" class="wp-caption-text">米国海軍は、カールビンソンと同じニミッツ級の空母を10隻所有している</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_390262" aria-describedby="caption-attachment-390262" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="49a0cabe"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/bd841e2c9aa17d8e35181e0f76177dfa.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390262" class="wp-caption-text">甲板上に駐機して離陸待ちするF-35C。その周りでは、色とりどりの上着を着た乗員らが束の間の休息をとっている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_390263" aria-describedby="caption-attachment-390263" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="261407b3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/71aa902f5b80f109805684b14fb6fb4f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390263" class="wp-caption-text">甲板で効率よく戦闘機を取りまわすため、航空管制室では、機体を模したマグネットで動線を確認していた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_390264" aria-describedby="caption-attachment-390264" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5afad426"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/09/94512fd667b92b5065dce6392a3a2c83.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-390264" class="wp-caption-text">カールビンソン内の食堂に集まる乗員たち。食事はステーキやパスタなどが用意された、ビュッフェ形式だ</figcaption></figure>
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<p>『FRIDAY』2024年9月20日号より</p>


菊池雅之（軍事フォトジャーナリスト）

６月27日から８月１日にかけ、ハワイ周辺海域において環太平洋合同演習「リムパック」が行われた。演習の中核を担ったのが米海軍空母「カールビンソン」だ。装備を一新したその姿を、日本人で初めて密着撮影した

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