『頭文字D』伝説再び! 公道レース漫画『MF ゴースト』の魅力

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舞台は202X年。自動運転機能をそなえたEV(電気自動車)と水素を使ったFCV(燃料電池自動車)ばかりが走る日本で、絶滅危惧種となってしまったガソリン車のスポーツカーが『MFG』と呼ばれるカーレースでバトルを繰り広げる。そんなクルマ漫画が『ヤングマガジン』で好評連載中のしげの秀一作『MF ゴースト』だ。今回は、クルマ漫画の金字塔『頭文字D』の魂を受け継ぐ『MF ゴースト』の魅力に迫る。

漫画3話分をこちらで公開中です

主人公の片桐夏向(カナタ・リヴィントン)は、イギリス出身の19歳。ホームステイをしながら『MFG』に参戦する

「トヨタ 86」がスーパーカーに挑む『MF ゴースト』

2017年より連載が始まった『MF ゴースト』。イギリスからやってきた主人公の片桐夏向(カタギリカナタ)が「トヨタ 86」で日本発祥のモータースポーツ『MFG』に参戦する物語だ。「アウディ R8 V10 plus」「メルセデス・ベンツ AMG GT S」「フェラーリ 488GTB」「日産 GT-R NISMO」など数多くのスポーツカーを相手にレースで順位を競う。作品には、現在も市販されているクルマが多数描かれ、また、読み進めていくうちに、聞き覚えのある人物の名前も出てくるので、『頭文字D』ファンは作品に親近感を持つことだろう。たとえば、『MFG』の考案者はリョウ・タカハシ。「トヨタ 86」を操る片桐夏向は「藤原の教え子」などだ。自動車ライターの安藤修也さんが作品についてこう話す。

「『MFゴースト』は、大ヒット漫画『頭文字D』の後継作と言えるでしょう。『頭文字D』がそうでしたが、弱いものが強いものを倒すという設定で、『トヨタ86』が世界の名だたるスーパースポーツカーに真っ向勝負を挑みます。レース漫画ですが、サーキットが舞台ではなく、一般道を使う点がおもしろいところ。リアリティがあるので、とても興味を引く漫画なんです」

日産のGT-Rも日本車代表として活躍する

『グリップウエイトレシオ』がレースの鍵を握る

ここで、主人公が乗る『トヨタ 86』について簡単に説明しよう。環境問題、安全問題、時代の変化などにより国産スポーツモデルに逆風が吹く中、2012年に登場したのが、トヨタとスバルの共同開発でつくられた『トヨタ 86&スバル BRZ』だ。スポーツカー王道のFRレイアウト(後輪駆動)で、珍しくなったMT(マニュアルトランスミッション)も選べる。価格も260万円台~と、昨今のスポーツモデルの中では比較的手頃とあって、老若男女問わずクルマ好きが熱い視線を送っている。「トヨタ 86」の乗り味を安藤さんはこう話す。

「実際に乗ると、強いパワーを感じるわけではないのですが、クルマとの一体感を味わえる、運転がとても楽しいクルマです。とにかく軽いので、コーナーでヒラヒラとクルマが動くんです。この手のクルマはライトウェイトスポーツと呼ばれ、昔、国産車が元気だった時代に多数つくられていました。しかし、今では国産車だと『トヨタ 86』と兄弟車の『スバル BRZ』、『マツダ ロードスター』くらい。とにかく自由に操れる楽しさが一番の魅力なんです」

作中の『トヨタ 86』の馬力は明らかにされていないが、メーカーが公表している車のスペックでは、最高出力が約200馬力だ。一方、レースに登場するクルマは、「アウディ R8 V10 plus」が4WDで610馬力、「ランボルギーニ ウラカン」は4WDで640馬力とエンジンパワーが圧倒的に違う。どう考えても「トヨタ 86」が勝てる見込みはないが、前作の『頭文字D』同様、「もしかしたらこの展開はあり得る」と思わせる仕掛けが作品の随所に描かれている。安藤さんはこう続ける。

「ポイントは、『グリップウエイトレシオ』という『MFG』のレギュレーションですね。まだ作中ではその詳細が明らかにされていないのですが、重いクルマほど太いタイヤをはけて、4WDやミッドシップレイアウトのクルマにはハンデがつけられるという決まりです。まず、クルマはエンジンのパワーを路面にしっかり伝えなければ、その能力をフルに発揮できません。そのため、特にハイパワー車には路面との接地面積が増える太いタイヤが装着されています。一方で、クルマは当然軽いほうが速いわけですが、軽量化すると太いタイヤをはけないというジレンマに陥るわけです。これによってパワーにおけるハンデが小さくなり、レースに参戦しているクルマがイコールコンディションになっているのではないかと。だから『トヨタ 86』にもチャンスが出てくるのです」

『MFG』には、タイヤのグリップに関するレギュレーションがあり、これがバトルを面白くする

神奈川県・箱根の峠がレースのステージに

クルマには不可欠な4つのタイヤがレース結果を左右することが示唆されている『MFG』。年間5つのステージでレースが行われることが決まっており、単行本化されている1〜4巻では、1周約40キロで、コーナーの数が大小300はある「小田原パイクスピーク」を舞台にレースが繰り広げられる。作品を読むと、神奈川県・箱根の一般道が見事なまでにコースとして使われているのがとても興味深い。安藤さんはこう話す。

「今は少なくなりましたが、箱根の山道は、自動車メーカー各社が新車の性能を確かめてもらおうと自動車メディア向け試乗会の開催地として選ぶほどの場所です。私にとっても馴染みがある場所で、描写されるシーンを見ていると『あの場所だ』とよくわかります。作品の世界ですから、登場するクルマたちは現実的ではないスピードでコーナーを曲がっていきます。でも、もし、世界トップクラスのドライバーがクローズドされた箱根の峠を運転したなら、あんなクルマの動きになるのかも、と思えるのがおもしろいところ。作品では箱根の道路や街並がものすごくリアルに描かれているので、漫画を読んでドライブに出かけると、より作品の世界が楽しめると思います」

箱根の公道で行われるリアルなバトルが熱い。ちなみにレース中継は、画像右中央に描かれているドローンによって行われている

2019年5月7日には、単行本の5巻が発売開始。『MFG』の第2ステージ『芦ノ湖GT』の予選が描かれ、新たなライバルも参戦する。まだ読んでいない人は、ぜひ下のギャラリーから『MF ゴースト』の世界を覗いてほしい。

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頭文字Dの魅力に迫った記事も公開中(3話試し読み付き)

コミックDAYSでは、5月15日から21日までの限定で、『頭文字D』10話、『MF ゴースト』5話を無料公開します。ほかにも多くの漫画が試し読みできます。

 

取材協力/安藤修也(あんどうのぶや)

1976年生まれ、埼玉県出身。自動車雑誌『ベストカー』『CARトップ』、アイテム情報誌『Get Navi』の各編集部に勤めたのち、2010年より、自動車評論家・清水草一氏率いるフリーランス集団『フォッケウルフ』に所属。自動車専門誌、一般誌、Webなど幅広い媒体に寄稿している。

『MF ゴースト』第1巻1~3話

  • 取材・文油野崇

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