空から見たら「東京五輪会場」ほぼ完成 代々木、晴海、渋谷、葛西
空撮ドキュメンタリー 大きく変わる東京の容貌
新国立競技場[渋谷区・千駄ヶ谷]
選手村に50階建てタワマン
「東京五輪のメイン施設は大きすぎて、地上から見ても全体像はわかりません。空から撮影すると、工事の進捗状況などがよくわかりました。2年ほど前から半年に一度のペースで撮っていますが、新国立競技場や選手村は見るたびに姿を変えている。来年夏の開催に向け、競技施設はほぼ完成しています」
こう話すのは、東京五輪の競技施設を定期的に撮影する写真家の叶悠眞(かのうゆうしん)氏だ。
晴海(はるみ)の選手村、渋谷の国立代々木競技場、葛西のカヌー会場……。叶氏が空から撮った写真からは、各施設の工事が順調に進んでいることがわかる。
「選手村は東京ドーム約3個分の敷地内に建てられますが、以前は大きな駐車場以外何もないようなところでした。それが’17年春から工事が始まり、14~18階建ての宿泊施設21棟と商業棟がアッと言う間に建った。施設周辺の公園も含め、今年12月には完成予定です」(叶氏)
選手村は劇場やインターネットカフェ、ヘアサロンなどを完備。敷地内はバスが巡回し、移動もスムーズにできる。五輪後には50階建てのタワーマンション2棟に改修される予定だが、早くも来月から一般向けに販売が開始されるという。建築エコノミストの森山高至(たかし)氏が話す。
「購入者に引き渡されるのは、4年後という異例の前倒し販売です。本来なら、改修が完了してから販売するべきでしょう。おそらく不動産会社が、マンションの価格下落を予想しているんです。晴海エリアは交通機関が発達していません。最寄りの勝どき駅まで徒歩で10分以上かかり、道路も渋滞しがち。ゆりかもめの新豊洲駅もありますが、海を挟んでいるので歩いて20分以上かかりますから。五輪開催前のプレミア感があるうちに、売ろうということだと思います」
総工費1500億円にのぼる、新国立競技場についてはどうだろうか。
「先月から最終工程である、フィールドの工事に入りました。今年11月の完成に向け、今後は内装工事が主となるでしょう。ただ新国立競技場も、五輪後の用途に不安があります。運営主体のJSC(日本スポーツ振興センター)は収益を生む事業を民間から募集するとしていますが、具体的な使用方法は未定。莫大な維持費がかかるので、プロのサッカーチームからホームスタジアムにしたいなどのオファーがなければ、赤字を垂れ流すことになりかねません」(森山氏)
将来性があるのは有明地区だ。
「ゆりかもめや、りんかい線が通り、交通の便が良く、開発できる土地も多い。テニスやバレーボール、体操など多くの競技が行われるので、五輪後はスポーツの街というイメージが定着します。それぞれの競技会場は、他の地区に比べて大きくないため公共施設としての転用も容易。運動好きの人たちが転居し、大いに発展すると思います」(森山氏)
五輪施設の完成で、東京の容貌は大きく変わりそうだ。
東京ドーム3個分の敷地に宿泊施設21棟 選手村[中央区・晴海]
’64年の東京五輪でも使われた施設は大リニューアル中! 国立代々木競技場[渋谷区・渋谷]
有明テニスの森[江東区・有明]
カヌー・スラロームセンター[江戸川区・葛西]
『FRIDAY』2019年5月3日号より
- 撮影:叶悠眞