「努力の人」早稲田・齋藤直人が語る「うまくなりたい」という熱意

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将来の日本代表SHでの活躍が期待される早稲田の齋藤直人主将

いつからそんなに努力をしているのでしょうか。

本当の努力家は、この手の質問が一番、困るらしい。

「いやぁ…わっかんない、です。高校から? 大学から? いつからって言われると、わかんないです。大学に入ってからは寮がグラウンドの近くにあって向き合う時間は増えたと思いますけど…。あ、その意味では大学からですかね…」

齋藤直人。『FRIDAY デジタル』でも以前「8年ぶりに帝京を撃破 創部100周年「早稲田のサイトウ」の躍動」という記事で取り上げた、大学4年生のラグビー選手だ。

グラウンドの端から端まで走る運動量、パスのスピードと飛距離、ゴールキックも任されるキッキングスキル、スペースの攻略を支える判断力、防御力…。接点から球をさばくスクラムハーフに必須とされる全ての資質を、高次元で兼ね備えている。

2018年春には日本代表予備軍にあたるナショナルデベロップメントスコッドに帯同し、国際リーグ・スーパーラグビーのクラブの若手勢と対戦。見事に活躍した。すでに「大学ラグビー界の名手」という枠からは外れたこの人は純真な努力家でもあり、1年後輩の丸尾崇真にはこう驚かれる。

「常にラグビーに活かされる何かをしています。ずっとボールを触っているし、プレー(映像)をよく観るし、身体に悪いものは食べない。欲求や快楽よりもラグビーへ…という感じが凄い」

しかし、本人がいざ自らの「努力」について掘り下げる際は、「努力…。皆、していると思います」。今年度主将を担う早稲田大学ラグビー部の日常を例に挙げ、こう話すのだ。

「自分だけがやっているというよりは、皆やっているんで」

印象的なエピソードがあったようだ。それは早大・上井草グラウンド脇の桜が薄桃色に染まった、4月初旬のことである。

齊藤が翌日に予定されたフィットネス測定で好記録を出すべく、体調維持に努めていたところ、寮の目と鼻の先にあるグラウンドやジムで同期や後輩が必死に汗を流していた。

このクラブには、高校までの実績とは無関係にレギュラー向けの「赤黒ジャージィ」を目指す部員が多数いる。仲間たちの真剣さに感化された主将は、予定を変更した。

「……ストレッチだけは、しようかな」

努力そのものは特別なことと思わない齋藤が、控えめに誇った努力が1点ある。それは、努力の方向性を誤らないための努力だ。

週末のオフは、主将に与えられた1人部屋を清掃。机にノートを広げ、1週間でしたい個人トレーニングの計画を立てる。直近の試合や練習で感じた課題を踏まえ、日々メニューを更新しているのだ。

現日本代表主将のリーチ マイケルも、2015年冬の段階で「毎週、1週間のスケジュールを組み立てる」と段取りのススメを説いていた。もしかしたらこの行動は、これから何かを始めたい全ての人に気づきを与えるかもしれない。齊藤はこうだ。

「いま何が必要かを考える時間は、作っているかと思います。(個人練習も)ずーっと同じことをしているわけじゃない気がします。どうせやるなら、必要なことをやりたいじゃないですか。ちょっと前までは練習場に長くいて何でもやりたいみたいになっていましたけど、それでは効率悪いし、お腹も空くし。そこには、気付けてきたかなって」

 努力の方向性に磨きをかけたのは、3月のことだ。

大学生主体のジュニア・ジャパンに加わり、フィジー・スバでのパシフィックチャレンジに参加。環太平洋諸国の期待の若手たちとぶつかり、「(それ以前の経験が奏功して)外国人への耐性ができた。ディフェンスにも行けていて、怖さとかはあんまりなかったですね」と手応えを掴んだ。何より、同行スタッフからも多くを学んだ。

特に森田恭平アシスタントコーチには、「オンとオフ(の切り替え)は大事」と気付かされた。森田が普段務める神戸製鋼には、ニュージーランド代表112キャップ(代表戦出場数)のダン・カーターや名キッカーのヘイデン・パーカーがいる。齋藤は、語られた名手たちの逸話をもとにさらなる進化を誓う。

「ダン・カーターでも飲む時は飲む。ずっとやれる人はいない…みたいな。自分は甘いものが好きなんですけど、極力、オフは食べて、普段は抑えよう…となりました。ウエイトトレーニングは、したくなってもオフは抑えようと思いますね。恭平さんからは、プレースキックのことも教わりました。カーター、パーカーは、ボールに足を当てる瞬間に、一番、膝が伸展した状態を作っている。(キックシーンの)映像を撮って観てみると自分はそれが全然できていなくて。角度を変えて蹴ったり、映像を撮ったりして(キックの練習を)やっていけたら」

ジュニア・ジャパンでは、日本代表入りへのアピールもしたかった。今年は、4年に1度のワールドカップを日本で迎える。現在、大会出場候補リストには入っていないが、心の奥底では諦めていない。昨季まで早大コーチだった三井大祐・慶應義塾大学新コーチの言葉を胸に秘め、日々を過ごしてゆく。

「1日1日、1回1回の練習を大事にしていたら、いつかは、その時が来る」

代表デビュー前から注目を集めるなか、こう言葉を選ぶのだった。

「注目してもらうのは嬉しいですけど、その分、ちょっと重荷というか、責任があるというか…。へぼいプレーはできないな、とは思います。ただ、注目されているから努力するってことはない。普通にうまくなりたいから、努力する。ただ、うまくなりたいから努力する」

当たり前のおこないとしての努力を、人に認められるためではなく自分がよりよくなるためにする。結果として、応援してくれる人、期待してくれる人、愛してくれる人の期待に応える。いまの早大主将は、そういうアスリートである。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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