作りかたも劇的に変化 平成アニメの[技術的ベスト5]は何か!?

平成ベストアニメ20④ 〔技術編〕は特に個性的な作品が登場 アニメ・ジャーナリスト数土直志が厳選!

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アニメの表現やファンの気質も変り続けた平成は、アニメの作り方、制作技術もまた大きく変化した時代であった。なかでもデジタル化の進展とCGの導入が、目立った特長であった。

最初の大きな試みは平成10年前後から始まった手塗りのセル画彩色のデジタルペイントへの移行である。また平成7年に世界公開された海外での『トイ・ストーリー』の成功が、エンジンとなった。全編CGのアニメが日本でも出来るのでないかと、国内でのフルCGを目指した試みが始まる。
しかしCGの技術が高度化すればするほど、日本アニメの危機感は強まる。日本は海外の大手CGスタジオの資金力と技術力に負けてしまうのでないかと。

しかしやがて日本アニメは、新たな突破口を見出す。かつてセルアニメで日本独自の手法が生まれてそれが世界を席巻したように、CGの世界でも日本独自の表現が育ち始める。

平成から令和へ、新しい時代の幕開けとなった今、3回にわたり平成アニメ「社会現象編」「ビジネスモデル編」「監督編」をお届けしてきた。

今回は特にデジタル化の進展のなかでエポックメイキングな作品を「技術編」として、「平成アニメ20選」の最後の5作品として紹介したい。

〔社会現象編〕「セーラームーン」「エヴァンゲリオン」「千と千尋の神隠し」「時をかける少女」「涼宮ハルヒの憂鬱」 を読む

〔ビジネスモデル編〕「ジャイアントロボ」「NARUTO」「ハチミツとクローバー」「劇場版 空の境界」「DEVILMAN crybaby」 を読む

〔監督編〕「少女革命ウテナ(幾原邦彦)」「オトナ帝国の逆襲(原恵一)」「千年女優(今 敏)」「攻殻機動隊 S.A.C.(神山健治)」「「APPLESEED(荒牧伸志)」 」 を読む

『人狼 JIN-ROH』(平成12年)

人狼 JIN-ROH 監督:沖浦啓之Blu-ray・DVD発売中 発売・販売元:バンダイナムコアーツ Ⓒ1999押井守/BANDAIVISUAL・Production I.G

全てのシーンが緻密で計算し尽くされた高い完成度。『人狼 JIN-ROH』は、観る者を圧倒する。平成13年に公開された本作の映像は、全てアニメーターと背景美術が手で描き、色彩はセル画にひとつひとつ塗られた。
セルロイドの板にアニメーターの線を写し、塗料を丁寧に塗っていく。昭和の初めから日本で長く使われてきた「セルアニメ」の手法は、平成10年頃か次第にコンピューター上で色を指定するデジタル彩色に替わっていく。平成14年頃には、ほとんど姿を消すことになる。『人狼 JIN-ROH』はセル画アニメの最後の輝きである。
セル画消滅は、やがて訪れるCG時代の予兆でもあった。この頃からCGの導入も活発化し、ロボットやメカニックの複雑な動きなど、それまで手で描いていたアニメの動きの一部はCGに置き換わっていく。

『ほしのこえ』(平成14年)

Ⓒ Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

平成14年、ひとりの監督がアニメ業界に衝撃を与えた。新海誠である。この年発表された『ほしのこえ』は長さ25分。異星文明の脅威に人類が立ち向かう近未来を舞台に、遠く引き離されながら携帯電話でつながる少年少女ふたりを切なく描いた。
誰もが涙するストーリーもさることながら、驚きの理由は別にある。新海誠監督は本作をほぼ一人で作りきったことである。もちろん一人で作るアニメーション作家の作品はこれまでもあった。しかし『ほしのこえ』は25分もの長さ、商業アニメのような強いエンタテイメント性を持つ。大量のセル画や原画・動画に代表されるアニメ制作は、いくつもの作業を多くの人で分担することで成立すると考えられていた。その常識をひっくり返した。
PCを使うことでアニメが、小説やマンガ、音楽のように個人で作れる時代の到来。そしてこれまでの「自主制作と商業作品」、「作家主義とスタジオ」といったアニメーション制作の二項対立も突き崩したのだ。

『秘密結社 鷹の爪』(平成18年)

©DLE

【秘密結社 鷹の爪】#01『参上!鷹の爪団』

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FROGMANこと小野亮が蛙男商会のブランドで平成18年に発表した『秘密結社 鷹の爪』も、一人で作り上げた作品だ。しかし目指すところは、『ほしのこえ』とかなり違った。
個性たっぷりのキャラクターたちがコミカルな逆を繰り出す『秘密結社 鷹の爪』は、動画制作ソフトAdobe Flashを用いたことで当時「フラッシュアニメ」と呼ばれた作品群のひとつである。フラッシュアニメの特長は、絵の動きは滑らかから遠いが、制作コストを抑えながら、かつ早く作品を完成できたことにある。これによりストーリーもアイディアも臨機応変に出来る。
その後大ヒットとなり、ロングランとなった『秘密結社 鷹の爪』は、アニメは投下予算や映像クオリティだけでない部分でも勝負できることがある。それを体現もした。
『ほしのこえ』がチームによる制作に対する個人制作の驚きであるとするのなら、『秘密結社 鷹の爪』は、これまでにない予算と、スピードに対する常識への挑戦だった。

『楽園追放』 (平成26年)

(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

CG時代に日本アニメがどのように生きるか、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』はそれに答えを示した。くっきりとした輪郭に塗り分けられた色、大きな目に抜群のプロモーション。描かれたキャラクターは、長年見慣れた日本の手描きアニメそのものだ。
しかし実際は、少女の姿をした主人公のアンジェラをはじめキャラクターは、鉛筆からでなく、PCのなかで生まれた。CGのポリゴンモデルで作られた女の子が可愛い、萌えの対象となる。『楽園追放』と同じ時期にTV放送された『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』は、「CGから生まれた少女で萌えられるか」を克服する革命であった。
また本作が70年の歴史を誇る東映アニメーションの企画と平成21年に誕生したCGスタジオのグラフィニカの制作だったのも見逃せない。誰もがCGとこれまで培ってきた日本アニメ文化の融合を意識し始めていたのが、平成20年代である。

『シドニアの騎士』 (平成26年)

(c)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
(c)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

シドニアの騎士 Knights of Sidonia PV Part 2

シドニアの騎士 第九惑星戦役」 最新予告映像 Knights of Sidonia Battle for Planet Nine NEW PV

同じCGを活用したアニメでも、平成26年にTV放送を開始した『シドニアの騎士』は目指す方向がやや異なっていた。老舗CGスタジオのポリゴン・ピクチュアズは宇宙空間を自在動くメカ、キャラクターたちの微妙な表情をくっきりとした輪郭でなく、むしろ繊細な線で描く。『楽園追放』がセルアニメの再現であったのに対して、『シドニアの騎士』は原作マンガの絵に近い。
3次元の手法で2次元的なよさを表現する。日本独自の映像と進化するセルルックCGは、早い段階から多様性に満ちていた。
平成29年にオレンジがCGで制作したTVアニメ『宝石の国』の表現は、キャラクターの二次元的なビジュアルが強調される一方で決して手描きではできないシーンばかりだ。セルルックCGはセルアニメの伝統を受け継ぎつつも、手描きアニメの模倣ではない。それを明確に意識した作品こそが『シドニアの騎士』である。

過去10年間に、想像を超えるスピードで発達し、普及してきた日本スタイルのデジタル・CGアニメ。今後もさらに激しい変化を続けそうだ。
平成の時代に衝撃を受けた新しいアニメの映像。みなさんだったらどんな作品、シーンを選ぶだろうか?

〔社会現象編〕「セーラームーン」「エヴァンゲリオン」「千と千尋の神隠し」「時をかける少女」「涼宮ハルヒの憂鬱」 を読む

〔ビジネスモデル編〕「ジャイアントロボ」「NARUTO」「ハチミツとクローバー」「劇場版 空の境界」「Devilman crybaby」 を読む

〔監督編〕「少女革命ウテナ(幾原邦彦)」「オトナ帝国の逆襲(原恵一)」「千年女優(今 敏)」「攻殻機動隊 S.A.C.(神山健治)」「「APPLESEED(荒牧伸志)」 」 を読む

 

  • 数土直志

    (すどただし)アニメジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

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