3300軒以上飲み歩いてわかった「いい居酒屋との出会い方」 | FRIDAYデジタル

3300軒以上飲み歩いてわかった「いい居酒屋との出会い方」

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山形県酒田市の「久村の酒場」。ここで飲むためだけに旅をしたくなる一軒
山形県酒田市の「久村の酒場」。ここで飲むためだけに旅をしたくなる一軒

北は札幌、南は鹿児島。日本全国、いろんな街で、ぶらりぶらりと飲み歩いてきた。

雑誌『おとなの週末』誌上で、「のんべえライター」として飲み歩きの記事を書き続け、気づけばはや15年余り。約3300軒の飲み屋を訪れたことになる。

そのうち約2年間は、月に一度「その街の銭湯に浸かり、飲み歩く」という、夢のような仕事であった。自分がしてみたい企画をダメ元で出したら、なんと通してもらえたのだった。

谷中、神田、人形町、亀戸、錦糸町、北千住、立石、神楽坂、銀座、青山、月島……。

下町から都心まで、それぞれの銭湯と街に味があり、愉快に飲み歩いた。

神田神保町「兵六」。時が止まったような酒場でしみじみと一杯
神田神保町「兵六」。時が止まったような酒場でしみじみと一杯

友人やネットから前もって居酒屋情報を仕入れる時もあるが、街をそぞろ歩き、直感で入ってみた店がよかったときのうれしさと言ったらない。ビールをくいっと飲みながら、ふふふ、と思わずほくそ笑むのである。時々、そんな店の壁に某飲み歩き番組のシールや出演者のサインが貼ってあると、「先を越された」感があり、ちょっと悔しいのだが……。

この仕事のおかげで、いい店を見つける「嗅覚」はだいぶアップしたと思う。「使用前」「使用後」的に言えば、8割増しくらいか。まあ、のんべえのご同輩であれば、体感していることかもしれないが、まとめてみると……。

外観がさっぱりしている

電光掲示板を使ったり、看板がやたらでかかったりというより、万事控えめがよい。また、よくある「がんこ親父が仕込み中」など、既成の札などは使っていないほうが好感度高し。

大通りや駅前すぐ、または駅ビルなどの一等地は避ける

地価が高い、つまり家賃が高いはずなので、当然ながら料理の質に比べて割高になる可能性が高い。もちろん、持ち家(店舗)で、数十年もそこで営んでいるような店は別格。

また、地下の店は一見入りにくいものの、ある居酒屋オーナーによれば「家賃が安いから、地下ばかり狙って出店している」という。家賃が安い分、いい料理や酒を良心的に提供している可能性は高い。狙い目かもしれない。

岩手県盛岡市「平興商店」は、女将さんが注いでくれる「もっきり酒」が楽しめる
岩手県盛岡市「平興商店」は、女将さんが注いでくれる「もっきり酒」が楽しめる

店名が当て字系ではない。

もちろんすべてではないのだが、いわゆる「族っぽい」当て字の店は避けたい。

古くても手入れがきちんとされている。

古い建物をきちんと手入れしてあり、玄関先などがきちんと掃除してあること。新しい建物より、むしろ古い建物のほうが長く続いている可能性が高いので、いい店確率アップ。

味のある提灯とのれん

シブイ提灯、縄のれんが下がった店は入ってみるべし。縄のれんでなくとも、堂々と店名や、「酒」などとと染め抜かれたのれんが下がる店は「いい店度」が高い。

お品書きに季節のものがある

お品書きが表に出ているなら、旬の素材が使われているかを見る。春ならフキノトウ、菜の花、アサリ、夏なら茄子やミョウガ、秋なら銀杏、サンマ、いろんなキノコ……ああ、飲みたくなる! 季節感は大事ですよね。

名酒場、浅草橋「むつみ屋」のすばらしいお品書き
名酒場、浅草橋「むつみ屋」のすばらしいお品書き

お品書きが短冊に書かれている

短冊にお品書きが書いてあり、壁にびっしりという店は、かなり高い確率でよい店だと思う。字は必ずしも上手でなくともよいのだが、いい店のお品書きは、なんとなく「味のある文字」で書かれていることが多い。

客がみんな楽しそうに飲んでいる

これはもう間違いない! 店の中はぜひのぞいてみたい。見えなければ、失礼してガラリとドアを開けてみてもいい。

 

「人は見た目が……」ではないが、お店も一緒。外見が好ましいと思ったら、おつきあいしたい。とはいえ、たまに「ここ、教わらなかったら絶対入らなかったわ~」という、外見イマイチなのにすばらしくいい店もあることはある。だが、この8か条があれば、いい店に当たる確率はアップするはず。まず店に「出会ってみる」ときの道しるべになると思う。

爽やかな、気持ちのよいこの季節、ぜひぶらぶらと飲み歩きをしてみてはどうでしょう。

美しく味わい深い煮こごりをアテに日本酒が進む(「むつみ屋」)
美しく味わい深い煮こごりをアテに日本酒が進む(「むつみ屋」)

 

本郷明美著 『ブラ酒場 女も酔う奇跡の55店』はこちらから購入できます。

  • 取材・文・写真本郷明美

    1967年福島県古殿町生まれ。専門商社、編集プロダクション勤務を経て1993年からフリーライターとなる。バリアフリー関連、歴史、教育などの分野を取材する一方で、自他共に認める根っからの酒好きを活かし、自称「のんべえライター」として記事を執筆。著書に『どはどぶろくのど 失われた酒を訪ねて』、『ブラ酒場』(ともに講談社)など

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