共通点がこんなに!霜降り明星は「ポスト・ナイナイ」の筆頭候補だ

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
いまや「お笑い第七世代」を代表する芸人となった霜降り明星/写真 アフロ

ラジオを聞いて感じた「ある共通点」

昨年末の『M-1グランプリ』で優勝した霜降り明星が快進撃を続けている。今年に入ってからは毎日のようにテレビに出続けていて、今では「お笑い第七世代」と呼ばれる新世代芸人のリーダーのような存在だ。

霜降り明星が優勝した後、ツッコミ担当の粗品はピン芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり』でも優勝を果たした。前人未到の二冠を達成して、その圧倒的な才能を世間に知らしめた。

霜降り明星が活躍しているのはテレビと舞台だけではない。YouTubeでも自身のチャンネルを持っていて、オリジナルの動画を配信しているし、東京と大阪それぞれでラジオの冠番組も持っている。特に、4月に始まった『霜降り明星のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)は好調だ。2人の肩の力が抜けたフリートークが楽しめる。

ラジオを聴いていて改めて思ったことがある。霜降り明星こそは、ナインティナインの正統な後継者ではないか、ということだ。ナインティナインの2人も、上京してから『ナインティナインのオールナイトニッポン』というラジオ番組を長年続けてきた。そこでは、東京のテレビの世界に足を踏み入れたばかりの2人が、仕事の裏話などを赤裸々に語っていた。

多忙な日々を過ごす霜降り明星が話すのも、仕事に関する話題が多い。少し前まで大阪のライブシーンを中心に活動していた2人が、現在では毎日のように収録現場で超大物の先輩芸人や芸能人と顔を合わせている。そこで味わった感動や焦りなどを熱をもって話す2人の姿は実に初々しく面白い。まさに初期のナイナイのラジオと重なる。また、ラジオではボケ担当の岡村隆史とせいやの方がメインでしゃべり、ツッコミ担当の矢部浩之と粗品が聞き役に回ることが多いというのも似ている。

お笑い界を「変革」する役割を担った二組

ラジオ以外にも霜降り明星とナイナイには共通点がたくさんある。まず、ボケ担当が背が低く、動きの笑いを得意としているということだ。岡村とせいやはどちらも汗をかいて必死にもがくタイプで、その一生懸命なのにどこか間が抜けているところが人々の笑いを誘う。天性のコメディアンという感じのキャラクターで、何とも言えない華がある。

さらに言えば、ものまねが上手いところも似ている。せいやはラジオでリスナーからの投稿ネタを読むとき、内容に合わせて芸能人の声真似をする。これがなかなか器用で面白い。岡村もラジオで声真似を巧みにこなすことが多く、この点も共通している。

また、学生時代に出会っているコンビである、という点も2組に共通している。ナイナイは高校のサッカー部の先輩と後輩の関係だった。矢部は後輩だったが、真面目なのにどこか抜けているところがある岡村に注目していて、コンビ結成を持ちかけた。

一方、粗品とせいやは、別々の高校に在籍していたが、学生向けのお笑いコンテストで火花を散らすライバル同士だった。お互いがその存在を認知していた。プロデビューは粗品の方が早かったが、せいやの才能を高く評価していた彼は、せいやを説得してコンビ結成を果たした。どちらのコンビも、ツッコミ担当がボケ担当の才能を認めていたことから始まっているのだ。

2組に共通するもう1つの要素は、既存のお笑い界を変革して、新しい時代を築く役割を背負っているということだ。ナイナイが上京した頃、彼らの先輩であるダウンタウンが破竹の勢いで東京のテレビに進出していた。ナイナイはしばしばダウンタウンに比較され、批判の対象になった。

言葉の笑いを得意とするダウンタウンと、動きの笑いを得意とするナイナイは、そもそも芸風が違うので単純に比較できるような存在ではない。だが、出てきた時期が時期だったため、勝手に「ポスト・ダウンタウン」の役割を期待され、ダウンタウンに才能では及ばないと非難を浴びたりしていた。

だが、ナイナイは孤軍奮闘した。『ぐるナイ』(日本テレビ系)をはじめとするレギュラー番組を成功させて、確かな地位を確立した。特に『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)は、ダウンタウンの笑いとも違う種類の笑いを追求する番組として人気を呼び、一時代を築いた。ナイナイという存在が、ダウンタウン一色だった時代の空気を変えた。

お笑い界の「年功序列」の風潮を打ち破った

霜降り明星も「お笑い第七世代」という言葉を旗印にして、新しい世代の芸人であることを事あるごとにアピールしている。それは彼ら自身の想像を上回るほどの反響を巻き起こし、テレビや雑誌でも「お笑い第七世代」というテーマで特集が組まれるようになった。上の世代の芸人にとっては、自分たちが時代遅れだと言われているようでいい気はしないだろう。だが、彼らの戦いには大きな意味がある。

霜降り明星が出てくる少し前、お笑い界にはやや閉塞感があった。テレビで主力となっている芸人が軒並み高齢化していたからだ。主に出ているのは30代後半から40代の芸人だった。10〜20代の若手芸人が出てきても、その輪になかなか入ることができない。一般企業と同様に、お笑い界にも年功序列の風潮が蔓延していて、新しく生きのいい若手が出てくるのは難しいだろうと言われていた。

ところが、霜降り明星がその流れを打ち破った。『M-1』『R-1』の優勝で実力を証明して、天下取りに名乗りを上げた。これに呼応するように同じ世代の芸人が何組も新たに出てきていて、お笑いシーンは一気に活性化した。「いまテレビによく出ている勢いのいい若い芸人」というだけでも、普通のお笑いファンなら5〜6組はすぐに名前が浮かぶ。こんな状況は少し前までは考えられなかったことだ。

ナイナイと霜降り明星の最大の共通点。それは、時代を背負う者であり、時代を動かす者になりうるということだ。霜降り明星がこれからどうなるかは未知数だが、規格外の大型新人ということで期待が高まるのは当然だ。偉大なる先輩であるナイナイがかつて成し遂げたように、お笑い界に風穴を空けて、新しい文化を作っていってほしい。

  • ラリー遠田

    作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビなどの評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)など多数の著書をもつ。公式サイト:http://owa-writer.com

Photo Gallary1

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事