紀州のドンファンの遺産13億円は「誰が」「いくら」もらうのか
市が「遺贈」受領表明も、野崎氏の兄弟は遺言書の無効を訴える。妻・Sさんの取り分は?
ドン・ファンはやっぱり、本物のカネ持ちだった。
9月13日、和歌山県田辺市が緊急記者会見を開き、「市民全体の利益を考え、遺贈を受ける方針を固めました」と発表。さらには、ドン・ファンこと資産家・野崎幸助氏(享年77)の遺産が、総額約13億円にのぼることも明らかにした。
野崎氏は「遺言書」を書いていたとされ、そこには〈全財産を田辺市にキフする〉との文言がある。市が発表した「遺贈を受ける」という言葉の意味は、野崎氏の財産を受け取る、ということだ。
それにしても13億円とは莫大であるが、内訳はどうなっているのか。「遺言書」を保管していた和歌山家庭裁判所は、弁護士に依頼し、野崎氏の財産を調査。本誌は今回、その調査結果を独自ルートで閲覧した。主な財産は、次のものだ。
・土 地 2億2537万円
・預 貯 金 3億492万円
・有価証券 7億683万円
・投資信託 2億6524万円
この他、建物や現金などを合わせると、合計金額は実に26億6131万円となる。田辺市はここから未返済の貸付金などを減らし、約13億円と発表したのだ。
気になるのは、この13億円を誰がいくらもらうのか、ということだ。少々複雑なので、整理して見ていこう。登場するのは、次の3者である。
・野崎氏の妻・Sさん(23)
・野崎氏の兄弟姉妹
・田辺市
「遺言書」どおり、財産を田辺市に寄付したとしても、妻には「遺留分」と呼ばれる取り分が認められている。遺留分は遺産の2分の1。つまりSさんは、わずか3ヵ月結婚しただけで、6億5000万円を手に入れることができるのだ。この場合、残りの半分が田辺市に寄付され、兄弟姉妹の取り分はゼロである。
ただ、ことはそう簡単には進まない。というのも、「遺言書」をめぐっては、今年8月、ドン・ファンの兄弟姉妹(とその子供たち)が「無効」を求める申立書を家裁に提出しているのだ。
「大の役人嫌いだった幸助が市に寄付するなんて書くわけがない。あの遺言書はデタラメです」(野崎氏の兄・豊吉氏)
「遺言書」が無効となると、遺産は法定相続分に従って分配される。Sさんは13億円の4分の3(9億7500万円)。残りの4分の1(3億2500万円)を兄弟姉妹でわける。
「遺言書」が無効であるほうがSさんの取り分は3億2500万円多いが、彼女にはこれを回避したい事情がある。
「Sさんと兄弟らの仲は、最悪と言っていい状況です。兄弟姉妹と相続の話し合いをすれば、揉めに揉めるのは目に見えている。Sさんは間違いなく、兄弟らには口を出させず、さっさと市と遺産を分割したいと思っていますよ」(野崎氏が経営していた会社の元役員)
時はカネなり――。多少相続が減っても、早く現金を手にしたほうが得策ということなのだろう。




『FRIDAY』2019年10月4日号より