岸、菊池、浅村……毎年主力が抜けても西武が連覇できた理由
防御率4点台とリーグ最下位でも新戦力が台頭するチームの秘話
岸孝之(34)、野上亮磨(32)に炭谷銀仁朗(32)、菊池雄星(28)、そして浅村栄斗(ひでと)(28)――毎年のようにエースや主砲、正捕手が脱(ぬ)けているのに、そのたびに強さを増し、連覇まで成し遂げる。「常識が通用しないのが西武ライオンズの強さ」だと言うのは夕刊紙デスクだ。
「とにかく打つ。切り込み隊長の秋山翔吾以下、正捕手の森友哉、中村剛也、外崎(とのさき)修汰に山川穂高とホームランを20本以上打っている打者が5人もいる。特筆すべきは2番の源田壮亮(そうすけ)です。アマチュア時代、『守備は超一流だけど打撃はさっぱり』と言われていた。実際、内野安打を狙うバッティングを得意としていて9番を打っていましたからね。それが西武に入るや、3割近く打つようになった」
秋山の表現を借りれば、「オートマティックに打つ打線」はいかにして、形成されたのか。球団関係者が解説する。
「象徴的だったのが、投手陣が20失点と大炎上した8月15日のオリックス戦です。これだけ一方的な展開になれば集中力が切れて、淡白な試合になるものですが、西武打線はなんと8点も取り返している。秋山によれば『ウチの打線にはムダな打席がない』のだという。西武打線は凡退しても進塁打を打つとか、相手投手に球数を投げさせるとか、必ず次の打者につながる打席にする。全員が全打席で徹底しているから、消化試合だろうが、優勝がかかった大一番だろうが、同じパフォーマンスを発揮できるというのです」
外崎によれば「自分が不調でも、前後の打者がパカスカ打つ。すると周りの勢いに乗ってヒットが飛び出すんですよ」という。もともと外崎は気負うタイプだったが、「自分が三振しても大丈夫だろう」と割り切って、今季は初の20発超え。見事に浅村の穴を埋めた。
リード面でプロの壁にぶつかり、一度は捕手を諦めた森は、正捕手の炭谷が脱けたことで開花した。有無を言わせずマスクをかぶらされるうちにリードが改善。数多く打席に立つことで、もともと天才的と評価されていた打棒が爆発した。
「首位打者争いしている森の同期が、ホームラン王争いをしている山川。二人は競うように早くグラウンドに出てくる。ナイターの翌日でも昼にはアップを始める練習の虫。そんな山川から4番を取り返したのが、おかわり君こと中村です。今季は序盤からこまめにマッサージを受け、ここ数年の課題だったコンディショニング不良を克服。こんな超高レベルで切磋琢磨しているんだから、そりゃ打つよね」(前出・球団関係者)
菊池の穴を埋めたのは、新助っ人のニール(30)だ。夕刊紙デスクが言う。
「前半戦は二軍暮らしだったが、ファームの許銘傑(シュウミンチェ)コーチの教えに熱心に耳を傾け、『直球は投げず、低めにツーシームとチェンジアップを集めてゴロを打たせる対日本人ピッチング』を習得。ショートに守備範囲が広い源田がいることも奏功して、破竹の11連勝をマークした」
穴や弱点を糧にして成長する逞(たくま)しさが、西武の強さなのである。
『FRIDAY』2019年10月11日号より
- 写真:時事通信社