「日本は準決進出も」元ワラビーズのレジェンドが語るラグビーW杯

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ファンタジスタと称されるクエイド・クーパー。オーストラリア代表キャップ70を持つ31歳がワールドカップについて語った(鎮勝也)

ラグビー界でファンタジスタ(魔術師)と呼ばれる男が日本にいる。

クウェイド・クーパー。

司令塔のスタンドオフとしてワールドカップ優勝2回のオーストラリア代表(愛称:ワラビーズ)を率いた。積み上げたキャップ数(各国協会が定める国際試合に出場した数)は70を誇る。

ステップは守備者を左右に置き去りにする。パスはオフロードを披露。タックルを呼び込んで捕球者を生かす。長く正確なキックを含め、シャンパン・ゴールドのジャージーをまとったそのプレーは世界の人々を魅了してきた。

ワールドカップには7、8回大会(2011、2015年)と連続出場を果たす。

クーパーは今年9月1日に来日。トップチャレンジに所属する近鉄ライナーズに入団した。今はチームを上部のトップリーグに再昇格させることに照準を合わせている。

現在31歳。経験を重ね、世界を知り、選手として働き盛りの男がワールドカップや今大会の日本代表について語る。

■あなたにとってワールドカップとは

最高の舞台です。トップクラスの選手たちが、色々な国から集まり、開催国という同じ場所で戦います。参加国の色々な文化に触れることができるのもいいですね。

■ワールドカップで力を出すようにするにはどうすればよいですか

私自身はワールドカップでベストのプレーができなかったかもしれません(※1)。それから考えるに、大切なのは準備ですね。ワールドカップはそれまで自分たちがやってきたラグビーとは別物です。例えばスケジュール。ある試合はお昼、またある試合は夜にあったりします。試合から試合の間の日数も、まちまちまです。そして優勝するためにはその状況下で約8週間を過ごさなければなりません。その間は自宅ではなくホテル住まいになります。ホスト国の日本代表の選手たちだってそうでしょう。そして、競技場には多くのサポーターたちがやってくる。その環境に慣れるための準備を徹底する、ということが大切なのではないでしょうか。

(※1)オーストラリアは7回大会(2011年)=3位、8回大会(2015年)=準優勝。どちらも2回(1991年)、4回大会(1999年)に次ぐ3回目の優勝はならなかった。

■日本はいかがでしょうか

いいチームです。決勝トーナメント(準々決勝)に勝ち進み、準決勝まで行ける可能性を秘めていると思います。日本はアイルランドのような強いチーム(※2)を倒しました。今、モメンタム(勢い)を持っています。8週間という長丁場のワールドカップで重要なのはモメンタムです。出場しているトップチームにそんなに力の差はありません。アイルランドは十分なモメンタムを持たず、日本は持っていました。それは試合で当たるタイミングや怪我なども含まれます(※3)。勝ち続けるためには、日本は今のいいモメンタムを保つ必要があります。

(※2)アイルランドは大会開幕時、世界一とされるニュージーランドをしのぎ、世界ランク1位だった。日本はそのアイルランドを9月28日、19-12で破った。

(※3)アイルランドは日本戦で大黒柱、スタンドオフのジョニー・セクストンが足のケガで欠場した。昨年のワールドラグビー(WA=世界のラグビー統括団体)の年間最優秀選手に選ばれた司令塔だった。突破力に定評のあるセンターのバンディー・アキも頭部打撲によって欠いていた。試合はベストメンバーではなかった。また、「滑るボール」を生み出す高温多湿の気候も災いした。

2016年、アルゼンチン戦でのクウェイド・クーパー。来季から近鉄ライナーズの一員に。すでに日本でトレーニング中

■優勝候補は

各チームはオールブラックス(ニュージーランド代表)という高い壁を越えなければなりません(※4)。ただ、予選リーグを突破して決勝トーナメントまで行ったチームにはすべて優勝の可能性が出てきます。そこまで来れば何が起こるかわかりません。

前回のワールドカップの時、我々ワラビーズは準優勝でしたが、決勝トーナメント1回戦のスコットランドであわや敗北というシーンに遭遇しました(※5)。私はリザーブとしてそれをピッチサイドから見ていましたが、大混乱に陥りました。我々のワールドカップが終わってしまう、と思いました。勝てたのは運があったからでしょう。その時は「死の組」と呼ばれた強豪が集まる予選リーグを無敗で突破して、安ど感から次は決勝戦を見てしまっていました(※6)

日本も先のことを考えないで、次の1試合に集中することが大切ですね。

(※4)ニュージーランドは今大会を制覇すれば3連覇。これまで9回の大会で最多の4回目の優勝となる。

(※5)A組1位のオーストラリアは格下と見られていたB組2位のスコットランドと対戦。35-34とわずか1点差の薄氷の勝利だった。当時、日本はB組に所属。初戦で南アフリカを34-32で破る金星を挙げるなどして、3勝1敗で南アフリカ、スコットランドと並んだが、勝ち点差で予選敗退となった。

(※6)オーストラリアは予選4試合で4連勝。開催国のイングランドを破り、「死の組」を制した。28-13フィジー、65-3ウルグアイ、33-13イングランド、15-6ウェールズ。

■もしケガ人などが出て、追加召集がかかれば、ワールドカップに参加しますか

ええ、呼ばれたらプレーできるコンディションはあります。まあでも、それよりも今は近鉄にどう貢献できるのか、ということを考えています。このチームに加わることができて幸せなのです。

■この大会後には代表チームでハーフ団を組んだスクラムハーフのウィル・ゲニア(※7)も近鉄に合流します。

彼と一緒に近鉄の力になる自信はありますし、我々自身がこのチームでまだまだ成長できるはずです。ゲニアとはクインズランド州の16歳以下代表を皮切りに、オーストラリア高校代表、20歳以下代表、そしてフル代表でも同じチームやりました。もちろん、スーパーラグビーのレッズ、そしてレベルズでもですね。気心が知れている選手とまた日本で一緒にラグビーをできるのはうれしい限りです。

(※7)ゲニアはこのワールドカップに参加中。出場は3大会連続となる。代表キャップは107を数える。

 

◆クウェイド・クーパー(Quade COOPER)

1988年4月5日生まれ。31歳。オーストラリア代表キャップは70。ニュージーランドのトコロアで育ったが、13歳の時に家族とともにオーストラリアに移住する。アングリカンチャーチグラマー高出身。2006年、スーパーラグビーのレッズと契約。今年はレベルズに所属し、全16試合に出場した。9月1日に来日。トップチャレンジ所属の近鉄ライナーズに加わる。ワールドカップは7、8回大会と連続出場。ポジションは主にスタンドオフ。186センチ、92キロ。

  • 取材・文

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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