ラグビー日本代表のピンチを救った“ジャッカル”姫野の「将来性」 | FRIDAYデジタル

ラグビー日本代表のピンチを救った“ジャッカル”姫野の「将来性」

強豪アイルランド撃破への“のろし”は、姫野のジャッカル(ボール横取り)から始まった

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10月5日のサモア戦。ボールを抱えながら突進する姫野。後半13分にはドライビングモールから押し込み、最後は姫野がトライを決めた/撮影:渡辺薫
ボールを抱えながら突進する姫野。後半13分にはドライビングモールから押し込み、最後は姫野がトライを決めた

突っ込んだ! 絡んだ!

悲願の準々決勝進出に向け、勝つだけでなくボーナスポイント獲得が求められたサモア戦。日本は苦戦した。後半に入って16対12と差を詰められ、もどかしい時間が続いた。

そんな時間帯に日本代表のナンバー8、姫野和樹(25)が牙を剥(む)いた。

後半9分、サモアがボールを持ちこんだが、そこで”ジャッカル姫野”が獲物を捕らえた。ジャッカルとは、倒した相手から立ったままボールを奪う行為のこと。姫野が最も得意とするプレーである。

タックルにより生まれたポイントに姫野は突っ込み、ボールに絡んだ。サモアの選手が姫野を剥(は)がそうと猛烈な勢いで突っ込んでくるが、動じない。

するとレフェリーが長い笛を吹いた。サモアがボールを離さない反則だ。このあと、田村優がペナルティゴールを決め、日本は19対12とリードを広げた。

姫野の渾身の”ジャッカル”が苦しい局面を救い、しかも3点を呼び込んだのである。

まだまだ姫野の勢いは止まらない。後半13分、日本は相手ゴール前のラインアウトからFW、BKが一体となって押し込み、最後はボールをしっかりキープしていた姫野がトライ。すると、豊田スタジアムでは期せずして、「姫野! 姫野!」の大合唱が起きた。ラグビーで個人の名前が連呼されるのは極めて珍しい。

姫野は日本のトップリーグ、トヨタ自動車でプレーしており、豊田はいわば地元。試合後、姫野は「ファンの皆さんの声援が後押しになりました」と語り、熱狂的なスタンドがチームの力になっていることを喜んだ。

このW杯、姫野の活躍は圧倒的だ。ジャッカルだけではなく、ボールを持ってどれほど走ったかを示すランメーターでもトップ級。まさにワールドクラスの活躍で、世界に対して”HIMENO”の名前が轟き始めた。

ラグビー専門サイトのrugbypass.comでは10月7日のコラムで「ベストフィフティーン」を選出。姫野も堂々と選ばれているが、その説明が彼のプレーの魅力を表している。

「秘密兵器が覚醒。ここまで3試合すべてプレー、世界でもよく知られる日本代表の他の第3列のメンバーよりも光り輝いている。ボールハンドリング、フィジカル、そして何よりボールを乗り越え、奪う能力に秀でている」

“ジャッカル姫野”はW杯で世界デビューを果たしたといってよい。

それを支えるのは、大学時代から地道な努力を重ねてきたからだ。いまではベンチプレスでは180㎏を持ち上げる怪力を誇り、ボールをつかんだら離さない。

この先、いよいよ重要な戦いの舞台を迎える。これまでの疲労の蓄積もあるだろう。しかし、日本が勝って歴史を創るためには、姫野のリーダーシップ、突進、そして何よりジャッカルが欠かせない。

9月20日 対ロシア戦

姫野は攻撃・守備いずれにおいてもチームの要となる重要なポジション。W杯初出場ながら高いパフォーマンスで観客を魅了し、チーム内MVPに輝いた

9月28日 対アイルランド戦

試合前に胸元の桜のエンブレムを指して笑顔を浮かべる姫野。この試合で繰り出した”ジャッカル”が相手チームの反則を誘い、窮地をしのいだ

10月5日 対サモア戦

地元・名古屋に凱旋。大勢の観客から送られる”姫野コール”に後押しされ、自身初となるW杯でのトライを決めた

10月5日 対スコットランド戦

姫野は4試合連続で試合に出場、決勝進出をかけた大一番でも躍動した。一進一退の攻防を続け、ジャッカルも飛び出した。最後までリードを守り切った日本は、決勝進出を果たす
『FRIDAY』2019年10月25日号より
  • 撮影渡部薫(メイン、ロシア戦、アイルランド戦、サモア戦)、佐貫直哉/JMPA(スコットランド戦)

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