ラグビーW杯 南アフリカを頂点に導いた神業PGとヤンチャ坊主

プールステージで主力を温存した、エラスムス監督の完璧な「ピーキングマネジメント」

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表彰式で、優勝トロフィー・エリス杯を頭上に掲げ、喜ぶコリシ主将と南ア・フィフティーン

11月2日、日本中を熱狂の渦に巻き込んだ『ラグビーワールドカップ2019日本大会』がついに幕を閉じた。優勝トロフィー『ウェブ・エリス・カップ』を手にしたのは南アフリカ。’07年以来となる3度目のVである。127年の同国ラグビーの歴史の中で初めて黒人主将となったシヤ・コリシ(28)がチームの結束を高め、みごと栄冠を勝ち獲ったのだった。

緑のジャージの「巨象」がスクラムで白いジャージのイングランドを押して、押して、押しまくる。情け容赦は一切ナシ。

ラグビーワールドカップの決勝、南アフリカは32対12と圧勝。エディー・ジョーンズのイングランドを完膚(かんぷ)なきまでにたたきのめした。

直接の勝因となったのは、スクラムである。開始早々から南アフリカはスクラムでイングランドを粉砕した。この日、スクラムでイングランドが犯したペナルティは6個。国際試合のトップレベルの試合では考えられないような数字だ。むしろ、準々決勝で対戦した日本のスクラムのほうがよく持ちこたえていたと感心したほどである。

そして反則が起きると、南アフリカの10番のハンドレ・ポラード(25)がボールをセットし、ペナルティゴールを狙う。その落ちついた動作は、何か冷徹な殺し屋を連想させる。距離、角度が難しくても、驚くほど正確にボールを蹴り、Hポールの真ん中を射抜く。まさに世界随一のキッカーである。

ポラードが淡々と仕事をこなし、ペナルティゴールによる3点を刻んでいくと、徐々にイングランドの体力と戦意が奪われていき、ついには手が届かない範囲まで差を広げ、W杯ではニュージーランドと並ぶ3度目の優勝を手にした。

しかし、大会前に南アフリカの優勝を予想する人は少なかった。大会に入って初戦でもオールブラックスに敗れたが、これまでのW杯の歴史を紐解くと、プールステージで1敗したチームは優勝したことがなかった。これで南アフリカの目はないだろう。私はそう思っていた。

ところが、南アフリカはプールステージでは主力をうまく休ませながら戦っていた。自らも南アフリカの名選手だったラッシー・エラスムス監督は、決勝戦でのスクラムの破壊力についてこう話した。

「わが軍のコンディションが良かったからではないでしょうか?」

ピークを決勝戦に持ってきたマネージメント・スキルは大いに評価したい。対してイングランドは前週のオールブラックス戦ですべてを吐き出していた。

エラスムス監督のマネージメント手腕で優れているのは多方面にわたる。幼少期は貧しい街で育ち、ラグビーで立身出世を果たしたシヤ・コリシ主将(28)は、こう話した。

「2年前、監督が来る前は、みんなSNSに夢中で、仲間との会話よりもスマホを見ている時間のほうが長かったかもしれない。監督は『SNSより大切なものがある。ラグビーだ。勝つために仲間と語ろう』と言って、チームのカルチャーを変えてくれた」

監督はヤンチャな選手を重宝した。その筆頭がスクラムハーフのファフ・デクラーク(28)だ。終始動き回り、相手のチャンスを潰す。身体は小さいけれどタックルは強い。デクラークのようなヤンチャ坊主を使いこなして、南アフリカは世界の頂点に立った。

SOポラードは、この日の決勝では6PG,2Gを成功。計22得点を挙げ、今大会通算69得点で得点王に輝いた
巧みなパスと正確なキックで、ベスト8で戦った日本も苦しめられたSHのファフ・デクラーク。小柄な体軀で、決勝でも屈強なイングランドFW陣を翻弄した

『FRIDAY』2019年11月22日号より

  • 取材・文生島淳

    スポーツ・ジャーナリスト

  • 写真ロイター/アフロ AP/アフロ 毎日新聞社/アフロ

Photo Gallary3

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