<figure id="attachment_88221" aria-describedby="caption-attachment-88221" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0f4a020c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/01/ab30c375997769832ea2acf8735f5bda.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-88221" class="wp-caption-text">12月21日には新国立競技場のオープニングイベントがあったが、霞ヶ丘アパートの元住民は招待されていない</figcaption></figure>
「東京五輪なんて楽しみでもなんでもありません。むしろ迷惑でしかない。私は絶対に観戦しません」
「霞ヶ丘アパート」の元住民・柴崎俊子さん(93)は、苦々しげにそう呟いた。
総工費1569億円をかけた東京オリンピックのメインスタジアム「新国立競技場」がついに完成した。12月15日には竣工式が開かれ、安倍晋三首相や小池百合子都知事らが出席。華々しくオープンを祝った。
だが、完成を喜ぶ政治家や五輪組織委員会のお歴々の陰に、新国立をまったく快く思っていない人々がいる。建設の〝犠牲〟となった都営団地「霞ヶ丘アパート」の元住民たちだ。
「’60年代に造成された霞ヶ丘アパートは、新国立の建設予定地に隣接していたため取り壊すこととなり、居住者は東京都から立ち退きを命じられました。アパートには約200世帯が暮らしていた。’14年に通告がなされ、’16年中に解体工事が行われました」（全国紙都庁担当記者）
霞ヶ丘住民の多くは、都が用意した近隣にある別の都営団地へと転居した。強制退去にともなう都の対応は、あまりにも杜撰(ずさん)だったという。元住民の菊池浩司さん(87)が怒る。
「私は32年間、霞ヶ丘に住んでいました。建設現場の事故で片腕を失くしたもので、家にはいろいろとバリアフリーを施していた。でも、転居の際に都に渡されたのは、引っ越し費用の17万円だけ。都の担当者には『私は障碍があるので新居にもバリアフリーを』と何度も頼みましたが、『では勝手に民間で借りてください』と表情も変えずに言われました」
それでも、多くの住民が持ち出しで引っ越し費用を賄い、何とか転居を終えた。しかし、住み慣れた家を追い出されて始まった新生活は、想像以上に辛かった。前出の柴崎さんが言う。
「霞ヶ丘の住民はほとんど高齢者の一人暮らしでしたが、餅つき大会や節分、盆踊り、忘年会と、年中行事があってみんな仲良く暮らしていた。しかし、都によってバラバラに転居させられたため、いまはまったく人とのつながりがありません。強制退去後、都の職員が様子を見に来たことは一度もない。戻れるものなら、いますぐ霞ヶ丘に戻りたい。これでは、孤独死しろと言っているようなものですよ」
霞ヶ丘アパートの跡地には公園が作られる予定だ。無理やり家を追い出された高齢者たちは、転居先から巨大な新国立を眺めながら孤独な日々を過ごしている。本誌は10人の元住民に取材をしたが、「東京五輪が待ち遠しい」と答えた人は、一人もいなかった。
<figure id="attachment_88222" aria-describedby="caption-attachment-88222" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cfe75c13"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/01/ce6cb81cdcbca693845477838d5ddcde.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-88222" class="wp-caption-text">現在、建設会社の資材置き場になっている霞ヶ丘アパートの跡地。東京五輪終了後は公園になる予定だ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_88223" aria-describedby="caption-attachment-88223" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2d50abe3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/01/9cf26eee57f40ce79684b39c2cdd85ae.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-88223" class="wp-caption-text">霞ヶ丘アパート元住民の菊池さん。「転居後、部屋は狭くなり友達も失った」と、寂しそうに語った</figcaption></figure>
『FRIDAY』2020年1月３日号より

田中俊勝

昨年末に新国立競技場が完成し、今年７月に東京五輪パラリンピックが開幕する。その陰で建設の〝犠牲〟となった都営団地「霞ヶ丘アパート」の元住民たちは快く思っていない。都の杜撰な対応を赤裸々に明かした。

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