東出3割減・唐田1割減 “不倫”ドラマ 視聴者の反応ここが違う

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東出昌大が主演した『ケンジとケイジ』は、初回の世帯視聴率が12.0%と順調なスタートを切りながら、2話で約3割の視聴者に逃げられてしまった。

一方、初回11.3%で始まった『病室で念仏を唱えないでください』は、唐田えりかのシーンを全カットしたことが幸いしてか、2話でも1割の減少に留まった。

東出と唐田の不倫騒動は、出演しているドラマの初期対応でなぜ明暗が大きく分かれたのか。

カンヌ映画祭に参加した時の東出と唐田  写真:AFP/アフロ

初回と2話の個人視聴率

関東地区で2000世帯5000人ほどのテレビ視聴動向を調べているスイッチ・メディア・ラボによれば、『ケンジとケイジ』(東出昌大と桐谷健太のW主演)の初回個人視聴率は5.0%。2話では3.5%と3割の視聴者が見なくなった(図1)。

一方『病室で念仏を唱えないでください』(伊藤英明主演)は、初回4.6%から2話は4.0%で、下落率は1割ほどで済んでいる。東出との不倫が発覚した唐田えりかが端役で出演していたが、2話では彼女のシーンを全てカットして放送された。

前者は二人の不倫が発覚した翌日の放送だった。

東出は主役でもあり、テレビ朝日としては対応出来なかったのかも知れない。結果として放送には、大きな影響がでた。

一方後者は、発覚の翌々日の放送だったが、唐田のシーンを全てカットして放送に臨んだ。結果として個人視聴率の下落は、小幅で済んだ。

連続ドラマでは、初回から2話で視聴率が1~2割落ちることはよくある。その意味で後者は、騒動の影響があまりなかったと言えよう。一方『ケイジとケンジ』には、明らかに想定以上の被害が出たと言える。

視聴率という実数は、裏番組の強弱による影響もある。

ところが両日とも、特に強力な裏番組はなかった。それでも世帯視聴率の占有率も、『ケイジとケンジ』の方は大きく落ち込んだ。やはり騒動によるマイナスがあっとみるべきだろう。

世代間の差

実は一連の不倫騒動への視聴者の反応は、世代によって大きな差があった。

『ケイジとケンジ』に対しては、C層(4~12歳)は2話で減るどころか1.8倍に増えていた。他にT層(13~19歳)も減っていない。小学生から高校生までは、不倫騒動の影響が全く出ていなかったのである。

ところが1層(男女20~34歳)以上は厳しかった。

1層は2割の視聴者が見るのをやめた。2層(35~49歳)はもっと厳しく3分の1が脱落。50歳以上でも3割前後が脱落していた(図2)。

不倫に対する理解や感覚の差が、世代間で明確に出たと言えよう。

ところが唐田えりかのシーンを全カットした『病室で念仏を唱えないでください』では、2話での減り方が大きく異なった。

僧侶が医師という設定が話題になったのか、C層はやはり2話で増えている。そして1層で1割減、2層3割減、50歳以上1割減で、『ケイジとケンジ』ほどには視聴者は減っていなかった。

唐田が端役に過ぎないということもあるだろう。それでも彼女を全てカットした点も、大人に好印象と映った可能性はある。

立場の差

世代だけでなく、視聴者の立場によっても、ドラマの見方は変わっていた。

『ケイジとケンジ』の初回と2話では、未婚女性の脱落率は19%。ふつうのドラマと比較しても、決して多いとは言えない。

ところが既婚女性は3割以上が見るのをやめている。問題をより自分事として受け止めた人々の評価は、かなり厳しいものだったと言えよう。

一方『病室で念仏を唱えないでください』では、未婚女性の離脱率が14%に対して、既婚女性は12%。『ケイジとケンジ』で厳しかった既婚女性が、こちらでは逆に、減少幅が小さかった。

端役であっても全カットという対応が好感されたのか、ドラマの内容への評価が高かったのかは詳らかに出来ない。

いずれにしても、不倫騒動が大きく影響しなかったことだけは間違いないようだ。

視聴者の声

両ドラマの対応については、SNSに投稿された視聴者の声でも明暗が分かれた。

結果が厳しかった『ケイジとケンジ』でも、ドラマの面白さをポジティブに受け止めた声もあった。ただしネガティブな声は、はるかに多かった。

「先週はあんなに楽しく観てたのにだめだ、もう平常心で観られない」

「不倫の件で東出昌大さんに嫌悪感しかなくて2話にして見るのを諦めた…」

「作品に罪は無いけどねえ~。でも現実問題、棒読不倫男はもう観たくもなくなりました」

「他の出演者が可哀想という感想しかない」

「イメージダウンを恐れて スボンサーの全部 降りちゃって 打ち切りになっちゃう予感」

一方『病室で念仏を唱えないでください』では、必ずしも唐田のシーン全カットに触れる声は多数派ではなかった。それでもTBSの対応を評価する声は、少なくなかった。

「唐田えりか出ないなら見ようかな」

「これでゆっくり観れます ありがとうございます」

「唐田えりかさん降板で人物相関図変わってる」

「TBSさんの迅速な対応に拍手です!」

「あの子出てなかったし もうこの先出ないみたいだから たくさんの人にみてほしい」

やはりテレ朝とTBSの対応の差は、視聴者の行動に影響を与えたと言えそうだ。

不祥事と初期対応

いわゆる不祥事では、初期対応が明暗を分けるケースが多い。

去年の「ゆうちょ・かんぽの不適切販売」では、第三者による調査が遅れ、郵政の信用は地に落ちた。吉本興業の問題でも、事務所トップの会見が遅れ、しかも歯切れが悪かったために、問題は長期化してしまった。

今まさに世界を震撼させている新型コロナウイルスの感染拡大も、国外の専門家は“人から人への感染”の可能性を早くから指摘していた。武漢市内でも感染者が多数出現と噂されていた。それでも12月末まで、市内の海鮮市場は営業を続けていた。深刻さを過小評価した中国の初期対応が問題になっている。

話をドラマに戻そう。

『ケイジとケンジ』は東出が主役でカットは難しく、しかも全9話の半分ほどが撮影済みだと聞く。しかし他に手がないのでズルズル続行してしまうのは、初期対応に失敗した不祥事に多く見られるパターンだ。

ドラマは見る者の情緒に訴える表現。それだけに役者の実存が大きく影響する。人気俳優が主役を務めれば視聴率が上り、ミスキャストだと惨敗する所以だ。

実は『ケイジとケンジ』の初回は、全国約160万台のネット接続テレビの視聴ログを集めるインテージ「Media Gauge」のデータによれば、初回は後半になるほど接触率が上昇していた

その結果の視聴率12%だった。2話以降、視聴者を増やす可能性は十分あったが、実際は3割の視聴者に逃げられた。

スポンサーも、東出をCMから外し始めている。生活者の印象を重視しての決断だ。

「今後の予定に変更はない」とテレ朝は発表しているが、このままでは典型的な”負のスパイラル”になりかねない。

「過ちて改むるに憚ること勿れ」のことわざもある。適切な判断を待ちたい。

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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