田児賢一・闇カジノ問題で追放の旧友が桃田賢斗の交通事故を語る
日本のバドミントン協会から永久追放された男は、マレーシアでユーチューバーになっていた 取材・文:ノンフィクションライター・水谷竹秀
遠征先のマレーシアで1月13日、バドミントン日本代表の桃田賢斗(25)が巻き込まれた交通事故のニュースは、日本中に大きな衝撃を与えた。現地では首相夫人が見舞いに駆けつける騒ぎにまで発展したが、同じ国にいる〝あの男〟は、どんな思いで受け止めていたのだろうか。
「事故を知ったのはSNSです。僕がマレーシアに住んでいるから何か知っていると思うかもしれないけど、状況は全然把握していません。マレーシアも広いから。桃田が事故したのがたまたまマレーシアってだけで」
電話口でまくし立てるのは、バドミントン元日本王者の田児(たご)賢一(30)である。だが、その言葉はどこか歯切れが悪い。
「(事故について)どう思うかは、皆と一緒だって。大丈夫かなっていう思い。桃田とは連絡を取ることもないし、彼は日本で頑張っていますから。それ以上言うことはありません」
田児は’16年4月、後輩の桃田とともに違法カジノに出入りしていたことが発覚し、日本のバドミントン界から「永久追放」された。その後はマレーシアへ渡り、同国のチームに所属してリーグ戦に出場していたが、選手としての収入はゼロで、生活費は支援者のマレーシア人ビジネスマンに支給してもらっていた。
「試合にはここ1年出ていません。現役でプレーしたい思いも特にないです」
一方の桃田は早々に復帰を果たし、世界ランキング1位など輝かしい成績を積み上げている。対照的な人生を歩む桃田の活躍ぶりについてぶつけると、田児は冷めた口調で語った。
「未だに桃田とセットで考えてもらわなくて結構です。彼のことはいち外野から見て応援している。それに僕もビジネスがあるので、そっちに集中しています。始めたばかりで、誰かのことを気にしている余裕もありません」
田児は昨年4月、首都クアラルンプールを拠点に、バドミントンのレッスンを行う『TAGOアカデミー』を創設した。日本から留学中の高校生らに指導し、日本への出張レッスンも行っている。
それ以外にも複数のビジネスを行っているが、そのうちの一つがユーチューバーだ。専用チャンネルを昨年9月に開設し、登録者は現在、約5万8000人。これまでに数十本の動画をアップし、その大半はバドミントンのレッスンや極意に関する内容だ。しかし、そこにかつての面影はなく、丸々と激太りしていた。動画のなかで田児は、こんな〝宣言〟もしている。
「隣のシンガポールはカジノありますよね? 先に言っておきますけど一切しておりません。それだけはくれぐれも勘違いしないようにお願いします」
取材の最後に、ビジネスは順調かどうかを聞いた。
「自分がやっていることには手応えを感じています。ユーチューブで皆さんに伝えられることを伝え、そこから何ができるかを模索しています」
金メダル候補の筆頭として桃田が注目を集めるなか、かつての盟友・田児はマレーシアで懸命に第二の人生を送っていた。
『FRIDAY』2020年2月7日号より
- 写真:田児のYouTubeより
- 撮影:水谷竹秀 蓮尾真司