徳勝龍 幕内番付最下位から優勝の原動力は共働きの「美人妻」
「いや~、大変なことをやってしまったなと思っています」
大相撲初場所で初優勝を飾った当日夜、徳勝龍(33)に本誌が声をかけると満面の笑み。千秋楽パーティやNHKへの出演を終えた直後だったが、嫌な顔一つせずに、部屋の前で取材に応じてくれた。
――14勝1敗の素晴らしい成績で、誰もが認める優勝だと思います。
「いや~、今日まで三役以上の力士とは対戦してなかったので、そういう意味では正代関(前頭4枚目・13勝2敗)に申し訳なかったな~って」
――来場所は上位陣とあたりますね。
「これからが大事だと思います」
――目指す番付はありますか?
「そんなのないですよ。本当に一番一番が大切だと思ってやっているので。本場所は恩師(近畿大学相撲部・伊東勝人監督)が1月18日に突然亡くなって、一緒に戦ってくれたのだと思います。本当にそれしかないです」
最後はガッツポーズ(写真)。徳勝龍の終始柔らかい言葉遣いに謙虚な人柄が滲み出ていた。
相撲ジャーナリストの大見信昭氏は、今回の優勝を「奇跡」だと語る。
「徳勝龍はこれまで三役にも三賞にも無縁だったうえ、この2年間はほとんど十両で過ごしていました。しかも、再入幕したばかりの今年の初場所で8日目から14日目までの取組のうち、6番の決まり手が『突き落とし』。これは多くの場合、攻め込まれて苦し紛れに出す技なんです。普通、逆転勝ちはそんなに続くものではありません。人知を超えた神風が吹いたとしか言えないですよ」
角界全体がノーマークだった徳勝龍の優勝。これを誰よりも喜んでいるのは、4年前に結婚した千恵夫人(33)だろう。
もともと相撲とプロレスのファンだった千恵夫人。親しかった東京・錦糸町のカレーショップの店長に「お相撲さんが来るよ」と誘われてお店を訪れ、居合わせた徳勝龍を紹介してもらったのが馴れ初めだという。千恵夫人は現在、都内の法律事務所に秘書として勤務している。
「『共働き』の関取は珍しいですよ。アットホームな木瀬部屋の所属だから、許されているのでしょうね。奥さんは飄々(ひょうひょう)とした方で、家で相撲の勝ち負けの話はほとんどせず、『勝ってほしい』と徳勝龍にプレッシャーをかけることもまったくしないそうです。そんなリラックスできる家庭だからこそ、徳勝龍は千秋楽の前日も自宅でいびきをかいてぐっすり寝られた。それが優勝できた一番の理由かもしれませんね」(相撲協会関係者)
千恵夫人と結ばれたことが、徳勝龍にとっての「大金星」だった――。
『FRIDAY』2020年2月14日号より
- 撮影:足立百合
- 写真:時事通信社