カープ油津駅とライオンズ南郷駅 キャンプを盛り上げる演出合戦

宮崎県日南市でキャンプを張る広島と西武。最寄駅がチームカラーにペイントされ、まるでペインティング合戦の様相を呈している。

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赤くペイントされたJR日南線のカープ油津駅。自販機まで真っ赤

春季キャンプが始まった。宮崎県では2軍も含め6球団がキャンプを張っているが、とりわけ熱量が多いのが、日南市の2球団、広島東洋カープと埼玉西武ライオンズだ。

広島は1963年から日南市天福球場でキャンプを張っている。この球場の開場の翌年からキャンプを行っているから実に58年目、球場は59年目。他球団のキャンプ地に比べ老朽化は否めないが、「日南市と言えば広島」という強固なイメージが定着した。

JR日南線の油津駅から球場までは徒歩で10分ほど。2017年には、駅から商店街のアーケードを通って天福球場までの約430mの道路が、真っ赤に塗装された。名付けて「カープ一本道」。これまでもこの道沿いには、小さなこいのぼりが飾られていたが、あたかもレッドカーペットのようなペインティングになったことで、初めて来たファンも絶対に道に迷わなくなった。途中の横断歩道は紅白のだんだらに塗られ、まるで大売り出しのようになっていた。

そして2018年には最寄り駅であるJR油津駅も「赤」に塗り替えられた。日南市の有志が総出で塗装したものだ。キャンプの最寄り駅がチームカラーで塗られるのは前例がない。これによって広島春季キャンプの名物が、また一つ増えた。

駅の前では、スマホで記念写真を撮るファンの姿が見られるようになった。

しかし、日南市にはもう一つ、プロ野球チームがキャンプを張っている。昨年パ・リーグで優勝した西武だ。2003年からこの地でA組(一軍中心)がキャンプを張っている。

西武ライオンズは、広島の最寄り駅油津から二駅先の南郷駅が最寄り。

春季キャンプ地の南郷中央公園は駅から1㎞以上あり、丘の上なのでかなりの距離感だが、多くのファンは駅から歩く。

昨年まで、南郷駅は「歓迎埼玉西武ライオンズ」の看板がかかって、のぼりがはためいていただけだったが、今年1月に市民有志ら30人がペインティング。ライオンズカラーの白と青に塗り分けられた。地元の高校生がクラウドファンディングで資金を集め、JR九州やライオンズファンなどが協力した。

ど派手な広島カープの前に、どうしても影が薄かった西武だが、少なくとも最寄り駅のカラーリングでは肩を並べたわけだ。

こだわりは、駅前のドリンクの自動販売機まで青と白に塗り分けたこと。これは、明らかに自販機を真っ赤に塗った広島カープの油津駅を意識してのことだろう。

ライオンズカラーにペイントされたライオンズ南郷駅。自販機のツートーンカラーがポイント

もともと南郷町は、日南市とは別の市町村だった。2009年3月30日に、北郷町、日南市と合併して日南市南郷となったが、南郷はカツオ、マグロの水揚げで知られる漁業の町。日南市油津もマグロ漁港があり、ライバル関係にあった。

地域の人に言わせれば気風や文化も少し異なるという。それだけに対抗意識もあったのだ。

日南市の中心街である油津には、日南市観光協会があるが、この時期、協会はカープのユニフォームを着た職員と、ライオンズのユニフォームを着た職員に真っ二つに分かれる。別に喧嘩をしているわけではないが、カープとライオンズをサポートする職員は、明確に区分されているのだ。観光協会のある建物の外には「広島東洋カープ日南協力会」と「埼玉西武ライオンズ南郷協力会」の看板が並んでかけられている。

JR九州も両駅名を「カープ油津駅」「ライオンズ南郷駅」にした。この企画にいっちょかみをしているのだ。いい意味でのライバル意識で、春季キャンプを盛り上げているのだ。

日南市は宮崎市の南に隣接しているが、過疎化が進んでいる。

1950年代半ばには旧日南市、南郷町、北郷町合わせて8万人以上の人口があったが、今は5万5千人。宮崎との動脈であるJR日南線の本数も減り、商店街もシャッターが閉まった店舗が目立つようになった。

しかし「カープ一本道」「カープ油津駅」は大きな話題となり、全国から熱心なカープファンが押し寄せる聖地となった。「ライオンズ南郷駅」は、「油津=広島」対「南郷=西武」という対抗意識を盛り上げるインパクトある演出だ。

これからも、こうした「演出合戦」で、春季キャンプ、そして地域を盛り上げてほしい。

  • 取材・文・撮影広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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