高校生デビュー バスケ河村勇輝が語る「プロより大学を選ぶワケ」
現在Bリーグで最も注目を集めている選手といえば、三遠ネオフェニックスの河村勇輝選手をおいて他にはないだろう。
福岡第一高校で素晴らしい実績を残し、高校ナンバーワン選手の名をほしいままにした逸材で、卒業前に特別指定選手として三遠に入団。1月25日の千葉ジェッツ戦でプロデビューを飾ると、Bリーグの最年少出場記録(18歳8ヵ月23日)を塗り替えている。
さらにデビュー翌日の同じ千葉戦第2試合で21得点の活躍をみせると、デビュー3試合目で先発ポイントガード(PG)に抜擢。ここまで7試合に出場し、1試合平均14.7得点、2.4リバウンド、2.7アシスト、1.1スティールを記録するなど、早くもチームの主要メンバーとして完全に機能している。
身長172cmとPGの中でも小柄な方だが、そのスピードと類い稀なパスセンス、高いシュート力はBリーグの舞台でもファンを魅了するほど異彩を放っている。ここまでのプレーを、当の河村自身はどう感じているのだろうか。
「個人的にはいろんなところを含めて、全然(Bリーグで)やっていけるなという気持ちはあります。その中でチームメイトとの連携のパスの合わせだったり、そういうところがまだまだチグハグな部分もあるので、そういったところは試合を重ねていけば、もっともっと自分がやりやすくなると思う。周りの選手を生かしていけば、周りの選手もやりやすい環境になっていくんじゃないかなと。それは、時間がものをいうんじゃないかなと思います」
PGはチームの司令塔ともいうべきポジションだ。チーム戦術を理解し、各選手の特長を把握しなければ、チームを牽引するのは簡単ことではない。本来であれば入団したての選手が先発PGを務めるのは常識外れともいえる。むしろ河村がチグハグ感を抱きながらも、現在のようなプレーができていること自体脅威というしかない。
Bリーグの舞台でもこれだけの活躍ができる背後には、18歳とは思えない冷静な状況分析と適応力があるからではないだろうか。2月8、9日の滋賀レイクスターズ戦で、そんな思いを強くした。
河村は11得点(シュート成功率33.3%)に終わった滋賀戦第1試合終了後に、以下のように話している。
「個人的には最悪でスタッツ(個人成績)なものであったり、プレー的なものも全然ダメで、チームの負けの要因の1人になってしまったことが一番の反省点です。チーム的にも、いろんなところでまだまだダメな部分が多く出たなというのが印象があるので、この負けをいい負けとしてしっかり認識して、明日の試合に臨めるようにしたいと思います。
今日は自分のシュートセレクション的なものもあまり良くない部分もあったので。それは自分で感じているというか、もう分かっているので、明日はちゃんとしたシュート選択をするすることで、もっともっと周りも生かせる。自分もやっていけるんじゃないかなと思っているので、明日は反省点を生かしてやれるんじゃないかなと思います」
「逆にやられちゃうのかな」

この言葉通り、翌日の第2試合では試合には敗れたものの、シュート成功率66.7%まで引き上げ19得点を記録。類い稀な適応力をみせつけている。
河村とマッチアップした、滋賀の齋藤拓実選手は、驚きとともに河村の才能を賞賛している。ちなみに齋藤自身も、身長171cmながら攻撃型PGとして頭角を現してきた25歳の若手有望選手だ。齋藤が語る。
「僕がいうのもあれなんですけど、実際マッチアップしてみて伸びしろが凄いなというのを感じて、やっぱりプレー、プレーの判断の部分だったりとかは少し若さがあるのかなという風に感じました。
でも河村君自身がどういうプレーヤーなのか僕自身もわからないですけど、しっかりアジャストしてくる力があれば、たぶん明日はやられてしまうと思うので、そこをやられないようにこっちも臨まないといけないのかなとは感じています。
でも僕が高校生の時って考えたら、正直あんなに上手くないですし、あそこまで活躍もできていないので、そういう気持ち(プロの先輩としてプライドを持ってマッチアップする)を持ってしまうと逆にやられちゃうのかなという感覚というのが自分の中にあったので、そういう気持ちは捨てて試合に入りました」
実際にコート上でマッチアップしながら、齋藤が河村に対して一種の脅威を感じていたのが伝わってくるだろう。
あくまで今回の河村の契約は特別指定選手であり、4月からは名門・東海大学への進学が決まっている。もちろんBリーグと比較すれば、大学のレベルはどうしても下がってしまう。すでにBリーグでこれだけのプレーができる河村に、このままBリーグに挑戦するという選択肢はなかったのだろうか。
「大学に行かずにプロでやるメリットもあります、逆にデメリットという部分もちゃんと自分は把握しています。大学に行くことのメリットの方が大きいんじゃないかなと思ったので、今は大学という選択肢をとったんです。大学でしっかりといろんなことを吸収しながら、こういう風に大学でやっていても3ヵ月間特別指定でやったり、大学生活の中でプロとして戦っていくということもできると思う。やっぱりプロ選手になった時には大学生活とか、大学のいろいろなことが学べないなと自分としては考えた。メリット、デメリットを考えた時に大学の方が少しメリットがあるかなと……。親とか井手口先生(福岡第一高監督)とか、いろいろな方としっかり話し合った結果です」
河村が話す通り、これからも大学に在籍しながら特別指定選手として短期間ながらBリーグでプレーすることができるし、馬場雄大選手(当時アルバルク東京で現NBAGリーグのテキサス・レジェンズ)や中村太地選手(京都ハンナリーズ)のように、現役大学生でもBリーグにフル参戦する道を選択することもできる。
冷静な判断ができる河村のこと。もう大学で学ぶものがなくなったと判断すれば、迷うことなくプロの道を選択するのではないだろうか。いずれにせよ今後の成長が楽しみでならない選手であることに変わりは無い。



取材・文・撮影:菊地慶剛
1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂英雄投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始める。20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技を取材。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、近畿大学で教壇に立ちスポーツについて論じている。