韓国「再びクラスター発生」からいま日本が学ぶべきこと | FRIDAYデジタル

韓国「再びクラスター発生」からいま日本が学ぶべきこと

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韓国ソウルの繁華街・梨泰院地区にあるクラブで集団感染が発生。新型コロナの第2波が襲う(2020年5月10日) 写真:AFP/アフロ
韓国ソウルの繁華街・梨泰院地区にあるクラブで集団感染が発生。新型コロナの第2波が襲う(2020年5月10日) 写真:AFP/アフロ

韓国は最近自称するようになった“K防疫”、徹底した「PCR検査」と「隔離」によって新型コロナウイルスを封じ込めた。新規感染者数が激減したこともあり、韓国では5月6日から人々が日常生活の中で感染防止を心がける“生活防疫”が新たに始まった。

マスクの着用や他人とのソーシャルディスタンスなど細かなルールはあるが、再び経済は動き出している。

ところが、自粛要請を解除した直後に再び集団感染が発覚。感染速度の速さと追跡のしづらさから、これまで自粛生活に耐えてきた韓国国民を震撼させている。

ソウル繁華街にあるクラブでの集団感染

韓国の中央防疫対策本部によると、5月6日に感染が確認されたのは20代の男性。この男性が2日にソウルの梨泰院(イテウォン)にあるクラブに来店していたことが発覚した。梨泰院は外国人が多く、日本でいうなら六本木のような街だ。

ちなみに、Netflixで日本での視聴数ベストテン上位に居続けているのが韓国ドラマ『梨泰院クラス』。熱血青年セロン(パク・ソジュン)がここ梨泰院で飲食店を開店する。古くは実話を基に描き、チャン・グンソクも出演した映画『イテウォン殺人事件』の舞台でもある。

今回、集団感染で注目されたのはクラブだが、ショッピングストリートとして発展した梨泰院はいろいろな意味でホットなスポットとなっている。

感染が発覚した男性はこの日だけで5軒ものクラブと酒場をはしごしている。店に居合わせた人の数は7,200人に上ると推定され、すでに77人の感染が明らかになった。だが、クラブという特性からか連絡のつかない人も多く、これまでの“K防疫”とは違った展開を見せている。

韓国では4月20日から消毒やマスク着用、換気、来店者の名簿作成を条件にクラブの営業再開を許可していた。

ところが今回の集団感染を受けて、韓国の中央災難安全対策本部は6月7日までの1ヵ月間、全国のクラブや酒場など遊興施設の営業自粛を勧告。営業の禁止ではないが、万が一、防疫処置を怠って感染者が出た場合、自治体が店舗に対して損害賠償を請求することができるのだ。

ソウル市においてはもっと厳しい。ソウル市長はクラブだけでなく、風俗やキャバクラ等の営業を禁止すると発令した。これは期限なしの禁止命令となる。自粛を緩和したばかりの韓国だが、ソウル市は第2波を懸念して強硬策に出たようだ。

感染した男性と同じ京畿道に住む韓国人女性は
「政府がこれだけ警戒しているのに、夜通し遊んで感染を広めるなんて本当に許せない。ネット上でも『本当に能がない』と皆、呆れています」と怒りをにじませた。

3月から始まっていた自粛疲れ 芸能人にも批判殺到

首都をロックダウンせず、国民に外出自粛を要請していた韓国だが、自粛疲れはかなり以前から始まっていた。

韓国では3月になると政府による配給でマスクが手に入りやすくなった。皮肉な話だが、マスクの安定供給が人々に安心感を与えたという声もある。

「高性能マスクが格安で買えるのはありがたかったけど、幸か不幸か、そのマスクをつけて散歩に出かけるどころか、山登りに出かける人まで増えました。外出を自粛している人がいる一方で、不要不急の外出をしている人も少なくなかった。カフェでお茶している人もいました」

と韓国在住の日本人女性は振り返る。

また、外出を自粛せず、感染が明らかとなった芸能人は容赦なく批判された。

アイドルグループSUPERNOVA(旧:超新星)のユナクは日本を中心に活動しているが、3月24日に韓国に帰国。27日に発症すると、4月1日に感染が判明した。その間、外出して大型風俗店の女性従業員と会っていたことが問題となったのだ。この女性も4月2日に陽性となっている。しかもユナクが外出時にマスクを着用していなかったことも公表された。

ユナクの存在を知らなかったという韓国人女性は
「韓国ではユナクの知名度なんてサッパリで、擁護するファンもいない。こんなバカがいるからいつまでもコロナが収束しないんだ」と憤った。

今回、感染が発生したクラブには元KARAのギュリが訪れていたことも伝えられている。陰性判定だったギュリはすぐに謝罪したが、国民の怒りは収まりそうにない。

新型コロナウイルスのクラスター感染が発生した韓国ソウルの梨泰院(イテウォン)地区。再度、全てのクラブとバーの閉鎖が命じられた(2020年5月10日)。  写真:AFP/アフロ
新型コロナウイルスのクラスター感染が発生した韓国ソウルの梨泰院(イテウォン)地区。再度、全てのクラブとバーの閉鎖が命じられた(2020年5月10日)。  写真:AFP/アフロ

“気温の上昇”と“気の緩み”日本にも同様の課題

4月以降、新規感染者数が減った韓国は新たな局面を迎えた。

「4月には『新規感染者も一桁台だし、もう大丈夫じゃない?』という雰囲気になりました。花見の時期も重なり、外に出る人が目に見えて増えたんです。マスクも『いちいち買っていたらお金がもったいない』とか『暑いし、息がしづらい』と言って、着用せずに外を歩く人も増えて怖いです」と韓国人女性は語っていた。

同じ頃、地方の観光地でも自粛とは程遠い光景が見られた。
「済州島や江原道の菜の花畑に観光客が押し寄せてしまい、せっかく咲いた菜の花をトラクターで押しつぶしたんです。そこまでしないと行く人がいるってことに呆れました」ソウル近郊に住む韓国人はそう嘆く。

5月には政府がまだ自粛を呼びかける一方で、ソウルから済州島行きの飛行機が増便され、観光客が増えた。

これについてソウル在住の韓国人男性は
「韓国は検査体制が整っているから、また感染が発覚してもこれまでと同様に抑え込める」と自信を見せていた。

が、ずっと自宅で自粛生活を送っている人たちからは「学習能力がなさすぎて腹が立つ」といった声も聞かれた。

韓国政府は“生活防疫”について「これは感染の終息を意味するものではない」と慎重な姿勢を見せているが、現在、ソウルの街には人が溢れている。

梨泰院のクラブから広がった集団感染はすでに二次感染も確認され、ソウル市長は記者会見で「一瞬の油断で、すべての努力が水の泡となる」を怒りを隠さなかった。

だが、前出の男性のように「政府が抑え込んでくれる」という甘えや過信も見え隠れし、そこには危機意識への齟齬が生じているようだ。

コロナ疲れの反動で、新たな集団感染を引き起こした韓国。日本も同じ轍を踏む危険性は十分にある。

  • 取材・文児玉愛子

    (ライター)
    韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。
    新聞や韓国旅行サイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムも寄稿。

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