感動が再び!『愛していると言ってくれ』の再放送を見逃すな
25年前の豊川悦司と常盤貴子に涙する!
テレビ各局では、続々とドラマの再放送がされている。本来であれば4月から放送するはずだった“2020年春ドラマ”の単なる穴埋めにならないよう、作品を厳選してきているのがわかる。特に人気作品を多く持つTBSは、セレクトが絶妙だ。
現在放送中の『中学聖日記』(2018年)は教師と生徒の禁断愛を描いた人気作品。5月31日(日)からは『99.9-刑事専門弁護士- SEASON1特別編』(2016年)を放送する。ともに古すぎず、新しすぎず、
「またやるの? え、観ようかな!」
という、視聴者の声がそのまま聞こえてきそうだ。その2作品に加えて『愛していると言ってくれ』(1995年)の再放送、特別版の放送が5月31日(日)から、4週連続、全4回で決定したとビッグニュースが飛び込んできた。今から25年前、当時の若者(私含む)の心を鷲摑みしにして、ブルンブルン震わせたあのドラマが帰ってくるだと……? リアルタイムで見ていた世代はもう“観る”という一択しかないけれど、最高視聴率28.1%を記録したヒット作の醍醐味を、知らない人たちに向けて伝えたい。
韓流ドラマを彷彿させる、波乱だらけの展開
まずはドラマの簡単なあらすじを説明しよう。
“聴覚障害を持つ榊晃次(豊川悦司)は新進気鋭の画家。そんな彼と恋に落ちたのは、女優を志す水野紘子(常盤貴子)。愛し合う二人には、晃次の耳が聞こえないという障害以外にも、恋のライバル、元カノと次々に問題が訪れ、二人の絆を壊していこうとする。”
新型コロナウイルス感染による自粛期間に『愛の不時着』がブームになった。韓流ドラマの特徴といえば、あり得ないシチュエーションの連打、古臭さ、ベッタベタな展開が挙げられる。1995年に放送された『愛していると言ってくれ』には2020年のいま振り返ってみると、韓流ドラマの香りが漂ってくる。
まずメインテーマである、晃次と紘子の恋愛の進行がどうにもこうにも“じれったい”。晃次の聴覚障害は、二人の愛を深く結びつけるエッセンスのようなもので、ここに問題は見られない。むしろ手話によって、相手をよく見て話す行為がとても好印象だった。1995年はヒロインが聴覚障害を持つ『星の金貨』(日本テレビ系)も同時期に放送していた効果もあって手話教室、大学のサークルに人が大挙。私も調子に乗って、手話ガイドブックを購入した記憶があるが、今となっては一つも手話を覚えていない。
じれったさの原因は、ほぼ二人を取り巻く外野にある。紘子のことを好きな幼なじみの小賢しいちょっかい、晃次の絵のライバルや、義妹の紘子に対する嫉妬、元カノの存在。現代ドラマでは考えられないほど多くの俳優が出演して、毎回、地味に問題を落としていく。これが視聴するうえでのアクセント。韓流ドラマ以上、『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系・2020年)の濃厚さ未満の“ドラマティック”が詰まったイメージだと、理解して欲しい。
25年前のトヨエツはキムタクと接戦の色男だった
ドラマの見どころは主演俳優・豊川悦司のイケメンぶりへと続く。当時じわじわと人気を見せ始めていた彼が、大ブレイクを果たした本作でもあるのだ。今は演技派の大御所でもあり、時にはコミカルな一面も見せるトヨエツが、ただただかっこいいだけの存在だった。
まずは爬虫類系と分類された、シュッとした顔つき。ジャニーズに見られるようなはっきりとした顔立ちを抜いて、ヘビ顔が話題に軍配が上がりつつあった、25年前。昨今では、綾野剛や松田翔太に見られるけれど、実は火付け役がトヨエツだった。そして印象的だったのは、作品でユニフォームのように晃次が着ていた清涼感100%の白シャツ……。この白シャツに下駄を合わせるという、こだわりがあるのかないのかわからないコーディネートで登場していた。でも不自然さを感じさせなかったのは、カッコ良さゆえだ。
ヒロインの常盤貴子もただ可愛いだけではなく、女優志望の垢抜けなさもどこかに表現していたビジュアルを思い出す。今回は主演二人によるリモート同窓会も放送が決定しているのだが、彼女に関しては25年前とほぼ見た目が変わらず、女として劣化していないことに驚かされた。本当に同じ人間だろうか。
余談だが、この二人によるドラマのオープニングロールの映像をぜひチェックしてほしい。ドリカムの『LOVE LOVE LOVE』にのせながら、ドラマの内容とは離れたトーンの世界観がそこにある。25年前のドラマ界では違和感がなかったかもしれないが、思い返すと作品の大ファンの私でさえも狐につままれる。
さあ、放送が待たれる『愛していると言ってくれ』。リアタイ軍は古き青春時代を思い出しながら。初めて観る人たちは、新しく触れるラブカルチャーに期待を寄せて恋の行く末を見守ろう。
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文:小林久乃
エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。
写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ