俺さま第一から共演者第一へ!『BG』に見る俳優・キムタク第2章 | FRIDAYデジタル

俺さま第一から共演者第一へ!『BG』に見る俳優・キムタク第2章

トレンディドラマ時代と違った木村拓哉の演技に注目せよ!

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撮影: 原一平
撮影: 原一平

コロナ禍による自粛が解除されて1ヵ月。

止まっていた春ドラマが次々とスタートしている。

その中にあり『BG~身辺警護人~』が好調なスタートを切った。初回の世帯視聴率17.0%2話14.8%他のドラマに大きな差をつけている。

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2月中旬の週末、キムタクとCocomiは仲良く二人並んで、愛犬の散歩に出かけた  撮影:西圭介
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動物病院から帰宅する木村拓哉と工藤静香夫妻。Tシャツ&短パン姿のキムタクは新鮮である  撮影:山田宏次郎
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好調の理由は、18年冬に放送した第1章と比べて今回の第2章が「身辺」警護から「心辺」警護へと深まっているある。

同時に主演の木村拓哉が、トレンディドラマ時代の“俺さま”ぶりから、共演者を輝かせる“魅力的な主役”に進化を遂げている点が見逃せない。

キムタクへの毀誉褒貶

インターネット調査のパイルアップ社は、春ドラマのスタートを前に、ユーザー1200人を対象に主役として最も魅力的と思う男性俳優のアンケートを実施した。

主役として最も魅力的と思う男性俳優(性年代別)
主役として最も魅力的と思う男性俳優(性年代別)

それによるとトップ5は阿部寛・木村拓哉・大泉洋・唐沢寿明・竹内涼真の順となった

この結果で興味深いのは、首位の阿部寛が男性視聴者、特に50~60代に圧倒的に支持されているのに対して、木村拓哉は女性30~50代と男性10代で首位となった点だ。

キムタクは2000年代まで、anan」(マガジンハウス)の毎年恒例「好きな男」特集で、15連覇を達成した。トレンディドラマ全盛期トップスターならではの偉業だった

実際に彼が主演するドラマは大ヒットの連発だった。

『ロングバケーション』(96年春・フジ・29.6%)※数字は世帯視聴率、各ドラマのクール平均(以下同)。

『ラブジェネレーション』(97年秋・フジ・30.8%)

『ビューティフルライフ』(2000年冬・TBS・32.3%)

『HERO』(01年冬・フジ・34.3%)

『GOOD LUCK!!』(03年冬・TBS・30.6%)

『プライド』(04年冬・フジ・25.2%)

『エンジン』(05年春・フジ・22.6%)

ただし時とともに、その“俺さま”ぶり反発も生んでいた。

2010年代では、「文春オンライン」による毎年恒例のアンケート企画「嫌いな俳優」ランキングで、6連覇という“偉業”を達成中だ。

「自分だけ活躍する姿にうんざり」

裸の王様状態が気の毒

何役をしてもキムタクの枠から出られない

批判の声は、かなり辛辣だ。

ただし小説・映画・番組や俳優について、毀誉褒貶が激しいのは存在感がある証拠。しかも男性10~20代や女性20代の支持も高いトレンディドラマ全盛期を知らない世代は、40代になったキムタクの円熟の演技を支持している可能性がある

『アイムホーム』(15年春・テレ朝・14.8%)

『A LIFE』(17年冬・TBS・14.5%)

『BG』(18年冬・テレ朝・15.2%)

『グランメゾン東京』(19年秋・TBS・12.9%

『教場』20フジ・15.2

“身辺”から“心辺”へ

今回の『BG』第2章は、世帯視聴率が高いだけではなく、接触率の波形も美しい。

『BG』接触率動向〜初回と2話の推移〜
『BG』接触率動向〜初回と2話の推移〜

関東地区で約69万台のインターネット接続テレビの視聴動向を調べるインテージ「Media Gauge」によれば、初回も第2話も、CMを除き接触率基本的に右肩上がりとなった。物語が面白かったので、途中で視聴をやめた人は少なかったのである。

さすがに9時50分台は、裏でCMやミニ番組でザッピングする視聴者が多く、流入が多かった分、流出も多少増えた。それでも途中から見はじめ、そのまま最後まで見入った人が多かったため、終盤の接触率は急上昇した。

ドラマの内容に力があった証拠である。

第2章初回は、主人公・島崎(木村拓哉)序盤で会社を辞めてしまうという意外な展開で始まる

第1章の舞台・日の出警備保障、IT系総合企業「KICKS CORP.」に買収されていた。ところが経営者(仲村トオル)が、会社の評判を高めるために暴行事件を仕組んだことを知り、許せなかったのである。

利益やブランドのために、手段を択ばず最短距離を行こうとするトップに対して、護るべき倫のために敢えて遠回りをする、ストイックなキムタクとの構図が面白い。

第2章は、身辺警護の派手なアクションやスリリングな展開に加えて、心を守る“心辺警護”に踏み込む闘争宣言が新シリーズ開始早々になされたと受け取った

“共演者ファースト”へ

第2章初回で際立ったのは、元講師・松野を演じた青木崇高と、島崎バディを組んだ高梨(斎藤工)

犯罪者の汚名を着せられた松野は、実は教授(神保悟志)の犯行暴くところが教授の道連れで低温室に閉じ込められた松野と島崎。そのピンチを危機一髪で救い出したのが、バディを組んだ高梨

松野の正義を全うさせることで、主人公・島崎の存在感が浮かび上がる。

しかも島崎のやり方に共感し、バディを組む決意をした高梨は、最後に島崎の車に乗り込むことで、主人公への共感を示す。

“俺さま”的展開が多かったトレンディドラマ時代と違い、『BG』は共演者を活かすことで、結果的にキムタクの良さが伝わる“間接フリーキックの妙”で攻めている。

高梨と島崎のタッグ最高すぎ

木崇高さんが非常にイイネ なんかグッとくる

初回なのに最終回的なクオリティ

「(キムタクは)いい年の取り方をしてらっしゃる

SNSのつぶやきにも、こうした見せ方への評価の声が少なくない。

2話は、目の不自由な天才ピアニスト・守尾恵麻(川栄李奈)が際立つ。

身辺警護の迫力としては、キムタクの体を張った“階段落ち”シーンが圧巻だ。ただし自傷行為に走り、誰にも心を開こうとしない恵麻本心に迫り、結果として姉・美和(谷村美月)確執を氷解させるプロセスこそが本当の見どころった

今回のハイライトは階段を一気に落ちるキムタクスライダー

川栄ちゃんがこんなに演技派だとは知らなかったです 

やっぱり可愛いし演技上手…泣いてしまった

名コンビぶりと人間ドラマで引き込む

組織力に頼めない“フリーの道”を選んだ主人公は、きっと数々の壁にぶつかるだろう。

そこで妥協することなく、迂遠な道を黙々と歩むのだろう。そしてドラマとしては、共演者の持ち味を活かすことで、主人公の魅力を滲み出させる展開を行くのだろう。

一歩退くことで際立たせるキムタクの味わいは、第2章のラストでどんな感動に到達するのか。

制作陣と出演者の腕に期待したい。

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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