相次ぐ大物芸能人の独立「そのメリットとデメリット」
連載 スタッフは見た!週刊「テレビのウラ側」Inside story of Television
長瀬智也(41)が来年3月をもってジャニーズ事務所を退所すると発表した。残ったメンバーは『株式会社TOKIO』を設立して社内独立。ジャニーズグループ傘下で活動を続ける。今年に入り、中居正広(47)や米倉涼子(44)など大物芸能人の独立が相次いでいるが、広告代理店関係者は「背景には公正取引委員会の警告がある」と指摘する。
「独立した香取慎吾(43)ら元『SMAP』メンバーの3人を番組で起用しないようテレビ局に圧力をかけた疑いがあるとして、’19年に公取委がジャニーズ事務所に注意をした。これで、どこも露骨な圧力をかけられなくなったのです。万が一、テレビ局が忖度(そんたく)して地上波に出られなくなっても、SNSやYouTubeで発信すればいいし、収益化もできる」
今年6月にジャニーズ事務所を退所した元『NEWS』手越祐也(32)は、早々とYouTubeチャンネル登録者数が145万人を突破。年収億超えは時間の問題だと言われている。
フリーなら、やりたい仕事だけやればいいし、事務所にマージンを抜かれることなくギャラを満額手にすることができる。芸能人の独立が相次ぐのも納得なのだが……キー局プロデューサーが独立のデメリットを解説する。
「トラブルがあった際、取材対応から訴訟対策まで、ひとりでやらねばならない。第三者に任すとしても、PR会社や弁護士の選定や打ち合わせ、費用の交渉も捻出もイチからやらざるを得ない。満島ひかり(34)や小泉今日子(54)クラスでも、週刊誌などのスキャンダル記事の対応は自分でやっているといいます。これは相当な手間ですよ。
香取らは『SMAP』を担当していた辣腕(らつわん)マネージャーと一緒に独立しています。業界に精通していてかつ、自分たちの強みも弱みも知り尽くしているブレーンがいたからこそ、独立後もいろいろと展開できているのです」
このプロデューサーが指摘するように、独立したタレントがぶつかる大きな壁が「営業と展開」だ。
「人気タレントがいる事務所ならバーターで仕事を回してもらえますが、フリーはその恩恵にあずかれない。オーディションの情報は自ら集めねばなりませんし、テレビ局等への挨拶回りも自分でやらなければならない。SNSやYouTubeの展開にしたって、優秀なブレーンがいなければ、すぐにネタが枯渇(こかつ)してしまう。落ち目になれば、すぐに忘れられますよ」(芸能プロ幹部)
独立後、再び大手事務所にお世話になるケースが散見されるのは、そのためだ。
「代表的な例だと水野美紀(46)ですね。’05年にバーニングプロダクションから独立するも仕事が激減。その後、大手と業務提携を結んで復活しました。水川あさみ(37)は’16年に所属事務所から独立。同級生にマネージャーをやってもらっていましたが、結局、1年ほどで大手芸能プロと業務提携を結んでいます」(前出・キー局プロデューサー)
出て行ったタレントのネガティブ情報をマスコミに流したり、独立したタレントに「5年間はテレビドラマに出ない」という念書を書かせたりと、古巣に妨害されるケースも少なくない。
勢いで独立しても、徒手空拳で生き残れるほど芸能界は甘くはないのだ。
『FRIDAY』2020年8月14日号より
撮影:田中俊勝