見た目イジリで大炎上…「令和のテレビ」の新しいルールとは
連載 スタッフは見た!週刊「テレビのウラ側」Inside story of Television
9月10日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の企画、『若手女芸人』が大きな反響を呼んでいる。
「女性芸人を『見た目インパクト』『キレイ系』『トーク・ネタ』『リアクション』で分類するというコーナーがありました。出演していた『ラランド』のサーヤ(24)が指摘していましたが、数年前であれば『見た目インパクト』は『ブサイク』と表記されていたはずで、多様性を認める昨今の風潮が反映されていた。それが視聴者には新鮮だったようですね」(バラエティ番組スタッフ)
昨年の『M-1グランプリ』のファイナリストとなった『ぺこぱ』のように〝誰も傷つけない優しいお笑い〟が支持を広げるなど、バラエティ業界で表現方法や笑いの取り方が変化している。
「吃音(きつおん)などの障害はもちろんのこと、ブス、デブ、ハゲなど身体的特徴を揶揄(やゆ)する言葉も大炎上するのでNGになりました。デブは〝ぽっちゃり〟や〝巨漢〟というふうに表現を変えて使うしかない。
ただ〝おデブ〟や〝おブス〟など可愛らしい表現にしたり、薄毛の芸人が自分のハゲネタをイジるのはOKと、抜け道はありますが……」(キー局プロデューサー)
お笑い芸人の場合、見た目のインパクトは大きな武器となるだけに死活問題となっている。若手芸人が嘆く。
「相方が太っているのに全然イジらないのは、スカしているみたいで微妙ですよね。正直、迷いながらネタを作っています。もちろん、見た目をイジるのは自分たちだけ。ほかの芸人さんをイジることはありません。
配慮というより――単純にウケないんです。若いお客さんの前で見た目をイジるようなツッコミをすると、〝これは笑ってはいけないのでは?〟と面白さより、配慮が上回ってしまうようで、シーンとしてしまう」
冒頭で触れた女性に関する表現はもっと厳しい。「ここ数年で消えつつある定番企画がある」と放送作家が語る。
「『女流作家』など『女性版○○』といった表現はもう難しいでしょうね。台本でも女優は俳優と言い換えるようになってきている」
女性を守るための配慮が逆風となっているのがグラビアアイドルだという。
「番組に華を添える貴重な存在だったのですが、グラドルが水着やセクシーな衣装で番組に出ているだけで『セクハラだ!』と局に抗議がくる。『Fカップ美女』といったセクシャルな肩書を入れるだけでもクレーム対象となってしまう。今後さらに、グラドルたちの出番は減る可能性がある」(民放ディレクター)
4月に『ナインティナイン』の岡村隆史(50)がラジオで「コロナが明けたら美人さんがお嬢(風俗嬢)をやります」と発言して炎上したのは記憶に新しい。
「深夜ラジオだし、このくらいは許されるだろう――という感覚がすでに古すぎます。明石家さんま(65)さんも『男なら~』とか『女のくせに』など、男尊女卑の傾向があるので、制作サイドはヒヤヒヤしている。
ベテランタレントほど時代に合わなくなってきています。感覚をアップデートできないと、いくら面白くても怖くてテレビでは使えないですよ」(前出のキー局プロデューサー)
時代の変遷とともに、バラエティ番組も様変わりしていくのである。
『FRIDAY』2020年10月23日号より