コロナ感染国会議員が明かす「感染したからわかる、この国の盲点」 | FRIDAYデジタル

コロナ感染国会議員が明かす「感染したからわかる、この国の盲点」

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大島新監督の政治ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(通称『なぜ君』)の衆議院議員・小川淳也議員が11月17日、新型コロナウイルスに感染したことが報じられた。国会議員で3人目の感染者である。

小川議員の感染経路は不明。「濃厚接触者」にあたるのは家族や事務所の方々などわずか数名で、いずれも検査は「陰性」だったという。しかし、11月19日にご本人が病床からTwitterにアップした動画を拝見し、衝撃を受けた。そこで語られていたのは、「検査を受けられるクリニックまで、公共機関も利用できず、39度台の熱で、徒歩で歩いていった」ということなど。考えてもみなかった「盲点」である。 

そこで、11月27日に退院、在宅・リモートで仕事を行う小川議員に、感染を経験して感じたことなどを伺った。 

実は小川氏へのリモート取材の真っ最中に、新たに別の国会議員の感染が発覚。感染を知らせる館内のアナウンスが、PCごしに生々しく聞こえてきた

――いま、体調はいかがですか。

小川淳也(以下 小川) 退院後は熱も36度台で落ち着いていて、だるさもずいぶんマシになりましたが、完全には抜けていないんです。ただ、肺炎や血栓、血液の炎症などがなかったのは、不幸中の幸いで。退院後は毎日検温し、ネットで買った酸素濃度計で酸素濃度を計っているんですよ。この数値が下がると、肺炎が進行している可能性があるということで、退院後も2週間は注意が必要だと言われています。

――発熱されたのは、16日夜だそうですが、日中は兆候もなかったんですよね。

小川 日中は元気で、仕事も運動もしていたんですが、家に帰ってから熱っぽい、しんどい感じがあって、熱を計るとその段階では37.5℃くらいで。そこから深夜にかけて39℃台まであがり、翌朝一番で東京都の「発熱相談センター」に電話しました。最初はインフルエンザかもしれないとも思ったんですよ。 

それで、発熱相談センターに教えてもらったクリニックまでなんとかたどり着いて、コロナとインフルエンザの両方の検査をしてもらったんですが、インフルエンザは陰性、コロナが陽性でした。もし39℃台まで上がった熱が、いったん下がってそのままだったらインフルエンザに似ている気もします。でも、コロナは高熱の第二波、第三波があり、10日近く続いたので、ずいぶんしつこく手強いと感じましたね。

――報道でもときどき耳にしますが、39℃台が何度もぶり返す症状でも「軽症」扱いなんですね。

小川 そうですね。私の場合、最初の日が39℃台で、2日目が38度℃後半、3日目が38℃ちょっとで、4日目に37.1℃までいったん下がったんですよ。それで公人としての責任を果たそうと、ようやく病床からの動画をあげたんですが、ちょっと愕然としたのは、あの時点でも春先の基準では「37.5℃が4日続かないと検査できない」状態だったということです。 

春先は亡くなった後に陽性が判明したり、なかなか検査してもらえないという声が巷に溢れていたりしました。そこからいろいろ改善していますし、私自身に関して言うと、保健所の対応も丁寧で迅速で、病院でもしっかり看護していただいて、感謝の一言しかありません。 

ただ、今の感染拡大のペースでは、キャパシティをすでに超えているとも報道でたくさん言われていますし、どのくらいの感染拡大を想定し、それに見合う準備をどこまでやっているのかについての検証は必要じゃないかと思います。 

それに今回、非常に不憫だと思ったのは、国会内で一緒に仕事をしている方々や事務所の秘書さんなど、マスク着用で短時間接触した「非濃厚接触者」の方々にも、検査圧力が社会的にかかったことです。マスクを外していれば、公費で検査できるのに、マスクを着用していたがために多額の検査費用を自ら払わなければいけないというのは、大きな矛盾で、制度の穴だと感じています。

――「重症」の定義も自治体ごとに異なると言われます。

小川 そうですね。いま、亡くなる方も増えていますが、軽症・中等症扱いからその後すぐに亡くなる人もいる、とも言われていますよね。もちろん重症者数は注意深く見ていかないといけないと思うんですが、死者が増えれば増えるほど、重傷者数は減ります。だから、日々重傷者数だけを追っていく数字のレトリックにも気をつけなければいけないと感じています。 

――感染の疑いがあるときの最初のアプローチは「かかりつけ医に電話で相談」となっていますね。でも、基礎疾患などがないと、かかりつけ医がない人も実態としては多い。それに、小川さんご自身もそうでしたが、症状が出てからでは、かかりつけ医は対応できないことが多いですよね。災害と同様に各自で備えておく必要があるんじゃないかとも思いました。

小川 私の場合は、相談センターも一発で電話が通じて、検査のために、なんとか徒歩で1キロくらい先にあるクリニックまで行けましたが、あれが地方都市や郊外だったら、1キロでは済まないですよね。 

それと、一つ課題があるかなと思ったのは、検査や治療ができる病院は公表していないこと。秘密にすることで、医療現場の混乱や院内感染を防ぐという意図なんですが、それだけに「事前に備える」ということは非常に難しく、国民の立場からすると安心できないですよね。 

――感染が疑われる場合、発熱相談センターに案内してもらうよりほかに方法がないんでしょうか。

小川 検査で陽性が確定すると、保健所の管理下に入り、入院時に防護車両でピックアップしてもらうなど、便宜をはかってもらえるんですが、陽性が確定するまでは、全部「自助努力」が求められるということですよね。 

国によっては、防護タクシーのようなもので移動支援を図っているところもあると言われますし、もうちょっと前広に潜在的な患者への対策支援も含めて、射程範囲を広げておかなきゃいけないんじゃないかという気はします。そのためには人員の張り付けや、病院・自治体に対しての備えも、春の時点から厚くやっておく必要があったとは思います。 

私自身、以前、厚生労働委員会で「仮に圧倒的な準備をして、秋冬に言われているほどの感染拡大にならずに設備や人員が無駄になったとしたとして、それで怒る国民がいるだろうか」と問題提起しているんです。 

これは根拠のない話ではなく、先に緊急事態宣言で事実上のロックダウンをしたとき、当時のGDPが27%マイナスという大きな損失になったことを踏まえた話です。

専門家の試算によると、仮に全国民の希望者に検査を徹底的に拡大し、無症状の人を含めて圧倒的物量で早期隔離に成功すれば、かかる費用は数千億円だというんですね。国民の活動を止めると、GDPでは経済的被害が100兆円、200兆円になるのに対し、圧倒的な検査の拡大と隔離体制の整備をするのであれば、コスト的には数千億円で済むんです。 

10月に、民間の臨時調査会が政府のコロナ対策を検証したんですね。その最後に政府の担当者からの言葉として出ているのが、「場当たり的な対応を繰り返してきたけど、結果オーライだった」というもので。この言葉は10月時点のものですが、このままのモチベーションでいくと、全く手に負えない状況になるんじゃないかと危惧しています。 

異例の観客動員3万人を突破し、ロングランを続けている『なぜ君は総理大臣になれないのか』より。大島新監督が17年間、それまでほぼ無名だった小川淳也議員を追い続けたドキュメンタリーだ。ポレポレ東中野ほか全国ロングラン中 ©️ネツゲン

――春の第一波から半年間で改善された点もたくさんあると思いますが、何に効果があって、何に効果がなかったのか、データの集積・分析は行われているのかということも気になります。

小川 実は夏にオンラインの対話集会があって、そこに参加して下さったニュージーランドの方から、最近、お便りをいただいたんです。ニュージーランドはコロナをうまくおさえ込んだ地域として知られていて、バイデン大統領もニュージーランドのアーダーン首相に助言を求めたとも言われています。

それで、お便りに書いてあったのが、「自分はこんな国に住んでいるんだということに感動して涙が出る」という言葉なんですね。 

ニュージーランドでは、いわゆるロックダウンの決断をした後、学生のアルバイトを含め全国民に6カ月間の生活保障を出して、それで国民はみんな「この人たちについていこう」という気持ちで、耐えたんだそうです。そこから発症がゼロになり、旅行も宴会も全てフリーになった。 

でも、ある日一人の陽性者が出て、「全部おさえ込んだはずなのに、どこからウイルスが出たのか」と国民が不思議がったんですよ。実はニュージーランドでは、ウイルスの遺伝子解析をして、誰からうつったかがわかり、それを説明しているそうです。 

そこでわかったのが、帰国者が2週間隔離されているホテルでボヤが出たとき、近所の公園にいったん避難し、そのときにたまたま同じ地域の公園に避難してきた近所の人と隔離者が数分会話をしたということでした。その帰国者の中から陽性者が後に発見され、二つのウイルスの型式が一致して、ルートが説明できたそうです。 

これは、感染者にとっても、国民全体にとってもすごく安心なことですよね。しかも、そのとき、政府は「帰国者と一般の方を同じ公園に避難誘導した方針が、政府として誤りで、謝罪したい、改めたい」と反省の言葉を述べたそうです。 

一事が万事で、こうした言葉、姿勢に、国民はついていこうと思うでしょう。ニュージーランドでは、医療従事者も退職者を何万人と再雇用し、体制整備にあてています。こうした信頼感の行き着く先が、お便りで書かれていた「こんな国に住めていて感動で涙が出る」ということなんです。日本とは対極で、羨ましすぎる話ですよね。

――ご自身が罹患された経験は、今後の感染対策で大いに生かされると思います。そのうえで、今後政治ができること、しなければいけないことについてどうお考えですか。

小川 私も厚生労働委員会にずっといたので、「自分がもし今、厚生労働大臣か、あるいは責任ある立場だったら、どうするだろう」ということは、常に想像しながら質疑に立っていました。

そこで出たのが、先述の「秋冬に無駄になっても良いので、責任は全て自分がとるという覚悟で、圧倒的な検査体制を整えて、隔離施設を準備することに集中しただろう」ということです。 

それともう一つ、ニュージーランドの例を聞いて感じたのは、もし日本でもウイルスの遺伝子解析によって1対1で感染ルートを明らかにすることが技術的にできたとして、それは安心材料である反面、個人の行動歴を含めてプライバシーと天秤にかけなければいけないということです。 

ここで問われるのが、まさに政治の力量であり、政治家と国民との信頼強度でしょう。 

しかし、桜を見る会の問題も含めて、常に保身に走り、都合の良いことだけ出して、都合の悪いことは隠し立てするような政府や政治家では、それは難しいだろうと。 

だから、自分がもし責任者だったら、無駄になったときの責任をとる覚悟で圧倒的な準備を整え、全部自分の体ひとつで引き取る責任感や覚悟で一つの方向づけを行い、旗を振ること。 

そして、ウイルスとの戦争に打ち勝つため、もし可能であるなら、個人情報、個人のプライバシーを国のため、国民全体のために少々みんなで出し合わなければならないことも含めて、ついてきてほしいと真顔で言えるかどうかですよね。 

そういう指導者がほしいし、それが真実だと思います。それを今の政権に求められる気がしないのは残念ですが、都合の良いこと、悪いことを両建てで「自分の責任でやらせてほしい」とちゃんと言えるかどうか。そんな気がします。 

11月11日のインタビューの様子。この1週間後に感染が発覚した

ちなみに、小川淳也議員に当サイトが「アメリカ大統領選をどう見たか」についてインタビューしたのが、11月11日。しかし、そこからコロナ感染の知らせを事務所から受けたのが、17日だった。

そこで初めて、これまで報道などで見聞きしていた「濃厚接触者」の定義「発症前2日間」「マスクを着用せず、1メートル程度の距離に15分以上いた」を、我が事として認識した。当然だが、国会議員だって感染するし、誰もが濃厚接触者になりうる。そんな当たり前のことを身を持って実感し、この感染症の恐ろしさを痛感せずにいられなかった。

■『なぜ君』小川淳也議員が説く「米大統領選後の世界の読み方」はコチラ

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

  • 撮影岡田こずえ

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