コロナ治療薬で再注目「イベルメクチン」日本版EUAが重要な訳 | FRIDAYデジタル

コロナ治療薬で再注目「イベルメクチン」日本版EUAが重要な訳

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ワクチン接種の遅れ、医療崩壊…日本の医療が緊急時に対応できない原因とは? 

先進国だと思っていた日本が実は後進国だったのか……ワクチン接種が遅々として進まず、接種率がOECD諸国で最下位となった報道などを見聞きしながら、そんな無力感に苛まれた人は多いだろう。しかも、入院することができず、治療薬もなく、自宅療養のまま急速に重症化し、場合によっては命を落とす人も多数いる。 

そんな状況を打開すべく、6月8日、立憲民主党が衆院に提出したのが「新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び仕様に関する特別措置法案」(通称:日本版EUA整備法案)だ。 

米国では食品医薬品局(FDA)が緊急時に未承認の医薬品の許可をしたり、既承認薬の適応を拡大したりする制度「緊急使用許可(Emergency Use Authorization : EUA)」の枠組みを通じてワクチンが迅速に供給されているが、日本では緊急時に対応できる柔軟性を持った制度がない。そのため、「療養」と「医療」の間にある壁を解消しようというのが、この法案だという。いったいどんなものなのか。 

3ヵ月の会期延長要求を求める野党が提出した不信任案は衆院本会議で否決され、通常国会は会期末の16日に閉会された。写真は、16日の衆院本会議での立憲・枝野氏(写真:アフロ)

医師の裁量で使っても良いけど、副作用が生じた場合に国は責任を持たない!?

北里大学大村智記念研究所感染制御研究センター長で、感染創薬学の花木秀明教授は言う。

「現在、厚生労働省は医療機関向けの『新型コロナウイルス感染症の診療の手引き(第5版)』において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬としてすでに薬機法上の承認を受けた医薬品のほか、薬機法上の承認は受けていないものの、新型コロナウイルス感染症の治療薬に転用が可能な別の疾患用の既存薬について、イベルメクチンなど10種類の薬剤を公表しています。 

イベルメクチン等は現状、適用外の使用ということで、医師の裁量権で使えるものの、用法・用量の問題・安全性・有効性が確認されていないとの理由から、医薬品副作用の被害救済制度の対象になりません。 

『医師の裁量で使っても良いけど、副作用の救済制度はない』と言われたら、医師は使いづらいですよね。医師としては懸命に患者を救おうと頑張っているのに、もしも何かあった場合には、その医師が何千万円もの損害賠償を払わなければいけなくなる。そうすると、当然自己保身が働きますから、使いづらいと思います」(花木秀明氏 以下同) 

「イベルメクチン」がコロナの治療薬として再注目されるも…

イベルメクチンは、北里大学特別栄誉教授の大村智博士が1974年に発見した微生物が生み出す「アベルメクチン」をもとにした化合物(誘導体)だ。

アメリカの製薬会社・メルク社との共同研究で、家畜やペットの寄生虫や回虫などの治療薬として開発されたが、「大型動物に効くのだから人間にも聞くだろう」との予測から、アフリカや中南米・中東などの河川盲目症の治療薬として使われ、犬のフィラリアの特効薬となり、さらにダニによる疥癬症や糞線虫症などの予防・治療薬として世界中に広がったことなどから、大村教授がキャンベル博士とともに2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞するきっかけとなる。

それが今、新型コロナパンデミックにおいて、コロナに有効として、再び世界中の注目を浴びている。治療薬開発とワクチン接種にはまだ時間がかかるうえ、医療経済学の観点でも安く副作用がほとんどないことなどから、使用すべきという声が強まっているのだ。しかし、日本ではイベルメクチンの使用がなかなか進まない。

「イベルメクチンの使用を反対する人は『データがない』と言います。 

しかし、6月11日の段階で、全世界で58個の治験と観察研究が行われており、そのうちの半数の29個は非常に厳格な管理下で行われるRCT(ランダム化比較試験)で治験を行っています。 

さらに、現時点では1万8000名くらいの患者さんに投与されていて、有効か無効かが議論されている中、COVID-19を克服することを目的として世界的に有名な救命救急医師・学者のグループによって結成されたアメリカの組織『FLCCCアライアンス』では予防効果で85%、軽症などの初期治療には78%有効としています。 

これだけ多くの人に投与されているにもかかわらず、データがないから使えないという論理展開は矛盾があると思います。 

さらに、『新型コロナに対する基礎データが少ないから』というのですが、臨床においてある程度の有効性がわかっているにもかかわらず、基礎データが少ないから躊躇するというのは、薬を作る段階をご存じない先生方の発想のような気がします」

新型コロナパンデミックにおいて、コロナに有効として、再び世界中の注目を浴びている「イベルメクチン」
1974年に発見した微生物が生み出すアベルメクチンをもとにした化合物(誘導体)「イベルメクチン」は、大村教授がキャンベル博士とともに2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞するきっかけとなった。写真は、2015年ノーベル賞の授賞式

世界的権威のコリー博士のアドバイスを“スルー”していたJOC

FLCCCアライアンスでは予防効果も治療効果も高い数値が出ており、なおかつ副作用もほとんどないということから、コリー博士がオリンピック開催の方向で進んでいる日本のオリンピック委員会宛てにイベルメクチンの投与を提案した書簡を送っている。

しかし、その件について、立憲民主党の中島克仁議員が6月11日の衆議院厚生労働委員会の中で質疑を行ったところ「事務局では把握をしておりませんでした」「日本オリンピック委員会、JOCの方に問い合わせをしまして、先ほど、えー、色々と確認をしていただきました結果、メールで届いていたことに6月7日に気が付いて、そのままになっていたということで伺っているところでございます」と”放置“されていた事実が明らかになったのだった。

疫病対策は、「予防」と「治療」の両輪で進めることが重要

さらに「ワクチンしかない」と言い続ける菅首相と政府与党の方針そのものも、問題視されている。

「新型コロナウイルスに限らず、疫病対策は、歴史的に見ても『予防と治療』の両輪でやっていくのが当たり前です。感染が起きた人は周りに広げていくため、同時に治療していかなければいけない。一方だけに頼るのは非常に危険です」

コロナ対策に限らず、日本では治療法や薬剤の認可が非常に遅いという問題は、これまでずっと指摘されてきた。

国内での治験が足りないなどが理由として挙げられるが、国民性なのか。それともアベノマスクやGoToなどに利権が指摘されてきたように、何らかの利権が食い止めているのでは……と穿った見方をする人もいるが。

「一番の理由は、有事の対策というのが我が国ではほとんどないことです。有事に対して、平時の対応しかしていない。こういった疫病が起こることもたぶん想定していなかったと思います。 

薬を作るのはそもそも申請から1年かかりますし、基礎データをとって進めていくと5年以上はかかります。 

では、5年以上もの間このパンデミックを放っておくのかと。世界中でこれだけ多くの人が使っていて、臨床した人のデータもあるのに、何もしないで放置しておくのは、政策としてまずいと感じています」

こうした状況を鑑みて「日本版EUA」が議員立法で出されたわけだが、そこでは副作用救済給付の実施の法制化や、保険適用の法制化、当該医薬品の確保のための必要な措置を講じること、生産体制の整備に対する財政上の措置なども盛り込まれている。

花木教授は今年初め頃から与党・野党の医療系議員のもとに足を運び、何度も講演も行い、データも示してイベルメクチンの使用を提唱してきたという。その感触は良く、個々には賛成する議員がほとんどだったそうだが、それでも約半年経つ今も進んでいない。

「目の前に患者さんがいれば有事の対応になるのだと思いますが、おそらく”遠い話“なのでしょうね。 

実際に患者さんの治療にあたる医療従事者にとっては毎日が有事そのものですから、実際、福岡記念病院や、オノダクリニック、東京では池袋メトロポリタンクリニック、中目黒消化器クリニックなどで使用していますし、どのくらいの量をどの期間投与するのが有効か、的確な治療の為に臨床データをとろうという動きも出ています。 

その一方で今、予防としてイベルメクチンを個人輸入して(個人輸入は不法ではありません。個人の権利ですが、何かあっても保証はされません)飲む人も増えているようですが、医師の管理下で使用しないと、不安だからという理由でただただたくさん飲んでしまう可能性があるので、危険も感じています」 

忘れてはいけないコロナ感染回復者の「後遺症」 

製造会社側は「経済的メリットがない」、政策側は「(臨床データはあっても)基礎データが少ない」という理由で、目の前の患者が置き去りにされ、ワクチン頼みの予防一本で進んでいる現状に対し、花木教授はこんな苦言を呈している。

「新型コロナウイルスは、若者でも感染後にかなりの後遺症が残ります。例えば自宅待機で39度の熱が5日間続くと、臓器の損傷がかなり起きていると思われます。 

そこから回復していっても、後遺症を引きずりながら治していくので、普通の生活ができなくなる人も多数います。後遺症が重症で働けなくなる人も、トイレにはって行くような人もいますし、味覚嗅覚障害が1年間残っている人もいます。 

さらに今、感染力が強いデルタ(インド)株にどんどん置き換わっていますし、これからベトナム株なども入ってくるでしょう。だからこそ、感染症では、予防はもちろんですが、早期治療が重要です。有効とされる様々な薬を使える状態を作ることが、今の事態を変える大きな一歩となるのです」

花木秀明 北里研究所部長、抗感染症薬研究センター長、感染防御学講座特任教授、感染制御研究機構教育担当部門長などを歴任。現在大村智記念研究所感染制御研究センター長・教授。COVID-19対策北里プロジェクト代表。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

  • 写真アフロ

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