親がクスリ強要、望まぬ出産…暴力団の娘たちの「悲痛な告白」 | FRIDAYデジタル

親がクスリ強要、望まぬ出産…暴力団の娘たちの「悲痛な告白」

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親が指定暴力団の構成員だという娘たちの数奇な人生。夜の街に消えていく人も…(写真・AFLO)
親が指定暴力団の構成員だという娘たちの数奇な人生。夜の街に消えていく人も…(写真・AFLO)

H子やK恵のケースとは別に、常用者の親が直接子供に対して覚醒剤の使用を勧めるケースもある。

千葉県には、関東を本拠地とするC会二次団体の事務所があった。その構成員の子供として生まれ育ったS美がそうだ。母親が育児放棄したため、S美は親戚の家をたらい回しにされたり、施設に預けられたりして生きてきた。

【前編】幼少でクスリ、シノギ加担…暴力団の娘たちが語る「悲惨な現実」

中学になって親戚宅で暮らすようになるが、間もなく家出をする。最初は友人の家に泊まらせてもらっていたが、そこにいられなくなり、先輩の紹介でC会系の構成員たちが共同生活をしているマンションへ身を寄せる。

このマンションに出入りしていたのが、S美を育児放棄した実の母親だった。母親は覚醒剤の常用者で、このマンションに買いに来ては構成員らとキメセクをしていたのだ。母親は再会した娘がシンナーを吸っているのを見て、バカにするように言った。

「おまえ、まだアンパンなんてやってんのかよ。ガキだな。ほら、クスリ(覚醒剤)をやれよ」

S美は、自分を捨てた母親にそう言われて逆上した。

「うるせえな。なら、やってやるよ!」

母親に見下されるのが嫌だったのだろう。だが、これをきっかけに、S美も母親同様に覚醒剤の闇を転げ落ちていった。

壊れたロボットのよう……

その後の人生は惨憺たるものだ。S美の頭の中は覚醒剤をつかったセックスの快楽に支配され、構成員からただでもらってはセックスをするという日々だった。壊れたロボットのように、その快楽を得ることしか考えられなくなっていたのだ。

驚くのは、10代から40代半ばまでの人生の半分以上を少年院や刑務所で過ごしているにもかかわらず、すべて父親の違う子供を7人もつくっているところだ。覚醒剤をつかった無計画な性行為の代償だろう。

S美は言う。

「ムショを出た時に、どの男(構成員)がシャバにいるかは違うでしょ。そいつとくっついて子供が生まれても、すぐに逮捕されてムショにもどることになる。そこで子供を生んで数年して出所したら、またシャバにいるのは別の男。そいつとヤッてまた捕まる。そのくり返しだから父親がバラバラになるんだよ」

密売人は頻繁に逮捕と出所をくり返しているので、S美が出所した時に町で会うのは常に別の男だ。そして覚醒剤ほしさにすべての男と交わるため、父親の異なる子供を出産しつづけるのだ。

S美は刑務所にいる期間の方が長いので子供はすべて施設に預けている。それなのに、なぜ子供を産むのか。

彼女は言う。

「刑務所にいると、小学生とか中学生とかになった子供から手紙が届くだろ。暇だから嬉しいんだよ。それに、こんな親だけど、施設に会いに行ったら、『ママが来てくれた』って喜んでもらえる。そういう時はこんなボロボロだけど、生きててよかったってマジで思うね」

現在、S美は生活保護を受けて暮らしているが、覚醒剤の後遺症できちんとしゃべることもできないばかりか、がんに侵されている。そんな彼女をサポートしているのが、通信制高校に籍を置く次女だ。少し前まで児童養護施設に暮らしていたものの、母親であるS美が生活に困っているのを知り、身の回りの世話をするために施設から逃げ出してきたのだ。娘にとっては、こんな母親でも「世界にたった一人のママ」なのだという。

その言葉通り、17歳の娘の腕には、「Family is my treasure(家族は私の宝物)」というタトゥーが彫り込まれている。18歳以下の未成年が入れるのは条例違反だが、母親に紹介してもらった実の父に彫師を紹介してもらったという。

暴力団構成員は逮捕を恐れて身をひそめる傾向にあるため、なかなか子供が置かれている実態が表に出てこない。

だが、今回見てきたように、違法薬物を生業とする暴力団構成員の下で生まれ育つということは、想像を絶する暮らしぶりを強いられるということなのだ。

ノンフィクション『ヤクザ・チルドレン』(大洋図書)を読んでいただければ、より深く彼らを取り巻く状況がわかるはずだ。

違法薬物を扱う暴力団を取り締まるのは急務だ。だが、同時にその家庭で育っている子供たちを保護し、常用者の再生産を止めることにも力を入れなければならない。そのためにも、こうした家庭で育つ子供たちの現実を知ってほしい。

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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