北朝鮮で『イカゲーム』を観た学生が収容所送りに…非道の背景 | FRIDAYデジタル

北朝鮮で『イカゲーム』を観た学生が収容所送りに…非道の背景

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『イカゲーム』に登場する「だるまさんが転んだ」の少女。北朝鮮でも密かに試聴されている(画像:Lee Jae-Won/アフロ)
『イカゲーム』に登場する「だるまさんが転んだ」の少女。北朝鮮でも密かに試聴されている(画像:Lee Jae-Won/アフロ)

USBメモリを購入した学生は、「地獄」と呼ばれる強制収容所で無期労働教化の刑。一緒に視聴した生徒は同刑を5年。USBメモリを販売した業者は、「見せしめ」のため公開で銃殺――。

1123日、米国メディア『ラジオ・フリー・アジア』が報じた北朝鮮の判決は衝撃的だった。1115日ごろ、北部・清津(チョンジン)市内の高級中学(日本の高校)に通う男女の生徒7人が不法映像物を視聴したとして、韓流ドラマなどを取り締まる「109常務連合指揮部」が摘発。重罰を科したという。

「生徒たちが見たのは、韓国で大ヒット中のドラマ『イカゲーム』です。北朝鮮は、この人気ドラマに警戒感を強めています。10月には対外メディア『メアリ(こだま)』が、次のように皮肉をこめて批判しました。〈南朝鮮(韓国)で、ドラマ『イカゲーム』が人気を集めているという。極端な生き残り競争と弱肉強食体質が蔓延した、南朝鮮と資本主義社会の現実を暴いているからだろう〉と」(韓国紙記者)

『イカゲーム』とは、今年9月からコンテンツ配信サイト「Netflix」で公開された作品だ。全世界で1億5000万近い世帯が視聴し、「Netflix」最大のヒット作となっている。内容は拉致された456人の人々が、456億ウォン(約45億円)の賞金を求め「だるまさんが転んだ」などのゲームに参加するというもの。負けると容赦なく命を奪われ、凄惨な惨殺シーンも多い。

北朝鮮の人々が『イカゲーム』で想起するモノ

今回、重罰が科せられた背景には、北朝鮮の国内事情が関係している。

「今年1月に行われた労働党党大会で、最高指導者・金正恩氏が徹底を強調した新しい法律が影響しています。『反動的思想・文化排撃法』です。同法では、韓流をはじめ外国のコンテンツに厳しく規制。不法映像物を流布した者を死刑、視聴者は懲役15年の刑に処するとしています。

今回の厳罰は、同法が青少年に適応された初めての事例になりました。生徒たちが所属する学校の校長、担当教員などは解雇。党員名簿から外され、炭鉱などで重労働をさせられるといわれます。世界的に人気の『イカゲーム』は、北朝鮮でも影響力が大きいんです」(同前)

北朝鮮が、残虐なシーンも多い『イカゲーム』に過敏になるのには理由がある。朝鮮半島情勢に詳しい『デイリーNKジャパン』編集長・高英起氏が語る。

「北朝鮮の人々が『イカゲーム』を見たら、どう感じるか。まず想起するのは、日常的に行われている公開処刑でしょう。韓国だけでなく、北朝鮮の現実も反映していると。金正恩氏への批判意識が芽生え、体制の不安定化にもつながるかもしれません。凄惨なシーンを露骨に描いた『イカゲーム』は、男女の恋愛をテーマにしヒットした韓流ドラマ『愛の不時着』より、当局にとっては脅威となる作品なんです」

一方で、ワイロの横行する北朝鮮では「抜け道」もあるという。高氏が続ける。

「『イカゲーム』の視聴者は、今回摘発された生徒だけでありません。隠れて見ている人々は、大勢いるでしょう。経済的に余裕のある親は、取締官に3000ドル(約345000円)のカネを払い見逃してもらっているという話もあるんです」

北朝鮮社会でも広がる経済格差。「持たざる者」が無残に処刑される一方、「持てる者」は当局の捜査を逃れ、不法映像物を平気で視聴できる矛盾をはらんでいる。

  • 写真Lee Jae-Won/アフロ

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