吉高由里子『最愛』が宇多田ヒカルと見せたドラマと主題歌の関係性 | FRIDAYデジタル

吉高由里子『最愛』が宇多田ヒカルと見せたドラマと主題歌の関係性

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個性的なファッションも様になる吉高由里子。隣にいる美輪明宏をも圧倒的する存在感だ

(本稿にはドラマ『最愛』の考察および展開の説明が含まれております。未鑑賞の方はご注意ください。)

吉高由里子主演の金曜ドラマ『最愛』(TBS系)。最終回が終わった今もピアノのメロディが繰り返し蘇り、「最愛」が奏でる切ない物語に多くの視聴者の心は金縛りにあったまま。宇多田ヒカルが歌う主題歌『君に夢中』とともに、その余韻は今だ冷めずにいる。

「このドラマは、殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央(吉高)と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に描くオリジナルのサスペンスラブストーリー。

回を追うごとに犯人を巡る”考察合戦”がSNSでは繰り広げられ、最終話ですべての真実が明らかになると、最愛の人を守るために罪を犯して姿を消した加瀬、最愛の人のために秘密を背負って生きていく大輝の姿に多くの視聴者が心奪われました」(ワイドショー関係者)

この作品は、同じ金曜ドラマの枠で『中学聖日記』『アンナチュラル』『MIU404』といった話題作を手掛けた新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督の手によるもの。それだけに始まる前から、注目度も高かった。

「新井・塚原のコンビは‘13年『夜行観覧車』、‘14年『Nのために』、‘17年『リバース』と湊かなえ原作のサスペンスで高い評価を得て以来、久々に取り組んだサスペンスドラマ。しかもオリジナル作品であるためストーリー展開が読めず、犯人探しと共に梨央を巡る恋の行方も気になって、何度も見直す視聴者が続出していました」(前出・ワイドショー関係者)

そんな視聴者をまず釘付けにしたのが、冒頭のモノローグ。登場人物が毎回”自分の最愛”について語りかけるオープニングは、ありがちなストーリーの”振り返り”とは違い、事件の謎を解くヒントでもあり、その後の展開を予感させる絶妙な仕掛けとなった。

「そうした登場人物の思いを心の奥底に閉じ込めるかのようにCGのブラックボックスが意味深な音を残して閉じる。そしてタイトル。この謎めいたオープニングこそ、ドラマ『最愛』の見どころのひとつでもありました」(制作会社プロデューサー)

第1回のオープニングでは、大輝(松下)が15年前の岐阜県白川郷を描く回想シーンの中で

「気付いた時にはもう、この世の中でたった一人の特別な人になっている。もし遠くへ行ったとしても、側にはいられないとしても、その人が胸の中から消え去ることはない」

と語りかける。このオープニング。最終回を終えた今、改めて見返してみると、大輝の胸に秘めた想いに込み上げてくるものがあった。

そして運命の最終回。ブラックボックスの中に閉じ込められていた事件の真相が、次々に明らかになっていく。真実を知り、驚きがやがて悲しみに変わるその刹那。宇多田ヒカルが歌う主題歌『君に夢中』とドラマのあざやかな化学反応が始まる。

バスを待つ梨央は、行方知れずになった加瀬を想って

「どうして私たちの前からいなくなったのか、話せる日が来たら戻って来てください」

その後「君に夢中」のサビが降って来る。すると梨央は愛しそうに加瀬からもらった手帳を開き

「どんな事実でも私たちは受け入れる覚悟です。加瀬さんが無事にいてくれる方が私と優(弟)には大事です。どうか元気でいてください」

『君に夢中』のサビからは一転して、涙をこらえる梨央の切なげなモノローグへと変わる。吉高由里子の渾身の声の演技には心を奪われるばかりだ。

そして思い返せば第一話でも、駅伝を走る大輝と、故郷を後にする梨央の狂おしいほどの別れが『君に夢中』と絶妙のハーモニーを奏でる。

「梨央を歩道橋から必死に探す大輝。梨央を乗せた車が、その後をスローモーションで過ぎ去って行く。まさにその瞬間を捉えて、”君に夢中 人生狂わすタイプ まるで終わらないデジャブ バカになるほど君に夢中”とサビが流れるこのシーンは、繰り返し見ても心を揺さぶられました」(制作会社ディレクター)

『アンナチュラル』では『LEMON』、そして『MIU404』では『感電』。今をときめく米津玄師とコラボしてきた塚原監督には、主題歌に対する矜持とも言えるこだわりがある。

「常日頃から『主題歌がないとカット割りができない』と話す塚原監督はカット割りだけでなく、現場でいつも主題歌を爆音で聴いています。塚原監督にとって、主題歌こそドラマを作る上でなくてはならない触媒みたいなもの。

『最愛』の場合、第3話か第4話まで台本を渡し、それを元に宇多田ヒカルは『君に夢中』を書き下ろしています。塚原監督にとって主題歌は、単なるタイアップ曲などではありません。主題歌のサビをどこに当てるか、そこに徹底的にこだわる。だからMA(音入れ)の最中でも監督はなんども編集室を往復して、ドンピシャのタイミングを狙います」(前出・制作会社ディレクター)

さらに「最愛」は、撮り方にもこだわりが見られる。細かいカットを積み重ねたと思えば、梨央と大輝をロングショットでじっくり捉えて見せる。さらに時折見せる”逆光・煽り・ワイド”を駆使するカットは、「金曜ドラマ」が金字塔を打ち立てた70年代後半から80年代にかけての名作の数々が思い出される。

「今でこそ、”ドラマのTBS”の看板枠は日曜劇場と言われていますが、当時は山田太一、倉本聰、向田邦子をはじめとする人気脚本家たちが話題作を生み出していた”金ドラ”こそ、ドラマ界の頂点。『最愛』には”金ドラ”のDNAを思い起こさせる作家性が感じられます」(前出・制作会社プロデューサー)

どの作品にも、作品にかけるスタッフの思いがある。その思い、こだわりが強いほど、そのドラマは私たちの心を揺さぶる。「最愛」は、視聴者の記憶の中に眠る禁断のブラックボックスを開けてしまったのかもしれない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO田中 俊勝

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