コロナ禍の視聴者の心理を掴んでM-1優勝「錦鯉」魅力の秘密
スタッフは見た!週刊テレビのウラ側
日本一の漫才師を決める『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)。’21年の王者に輝いたのは、史上最年長となる50歳の長谷川雅紀を擁する『錦鯉』だった。

「前年王者の『マヂカルラブリー』はセンターマイクから離れ、ステージ上で暴れまわるネタだったことで、“あれは漫才じゃない論争”が巻き起こりました。対照的に『錦鯉』は世代を問わない、わかりやすいネタ。遅咲きの苦労人ということもあって素直に祝福されています。昨今のトレンド“誰も傷つけない笑い”にマッチしていたのも大きい」(放送作家)
’19年の『M-1』ファイナリスト、『ぺこぱ』が“誰も傷つけない笑い”でブレイクしたのは記憶に新しい。
「視聴者が癒(い)やしを求めるのはコロナ禍で世界中が不安に覆われているから。オミクロン株が急速に広がっていますから、この傾向はしばらく続くと見ています。毒のあるネタはまだまだ受け入れられないのでしょう。
『錦鯉』の仲のいいおじさん二人の掛け合いは見ていてホッとしますし、安心。苦労人が成功を掴むプロセスを通じて、視聴者は勇気づけられるのだと思います」(制作会社ディレクター)
ニュースを一切扱わず、朝から「スイーツランキング」などの“ゆるネタ”を展開するTBSの朝の情報番組『ラヴィット!』。’21年3月の放送開始当初こそ、視聴率は低空飛行だったが、新型コロナ報道だらけのワイドショーに不快感を示した若い世代を中心に支持を集め、情報番組では異例となる『TVer』での見逃し配信が始まった。
「若い世代が自宅にいる祝日だと『めざまし8』(フジテレビ系)の視聴率を抜くこともあります。とくにTBSの人気番組『水曜日のダウンタウン』とコラボをして話題になってからは“朝のバラエティ番組”として認識され、お笑い好きの視聴者を取り込んでいる。MCを務める『麒麟』川島明(42)の評価がうなぎ上りですよ」(キー局プロデューサー)
『ラヴィット!』の成功を受け、’22年はMC陣の世代交代が進みそうだ。
「年末年始の特番MCは30〜40代の芸人が起用されるケースが多かった。ベテラン勢は、腕こそあるものの、毒舌やワンマンプレーに走る人が多い。テレビ局が重要視するコア層(13歳から49歳の男女)からのウケも悪い。ビートたけし(74)や上沼恵美子(66)ら大物の番組卒業が目立ちますが、“リストラされるよりは先に自ら身を引こう”という意味合いもあると見ています」(同前)
新型コロナの感染状況次第だが、’22年は異色キャラで売る芸人が台頭するという声もある。前出の放送作家が指摘する。
「『M-1』も『THE W』も、ファイナリストに『ヨネダ2000』や『ランジャタイ』のようなぶっ飛んだ芸人が入っていました。視聴者の目も肥えてきて、いろんなタイプの笑いを許容できるようになってきた。強烈キャラが大ブレイクする土壌ができています」
’22年のバラエティ界は世代交代に加え、多様性がカギとなりそうだ。
『FRIDAY』2022年1月21日号より
PHOTO:結束武郎