「女性用風俗」で働く男たちの過酷な労働環境 | FRIDAYデジタル

「女性用風俗」で働く男たちの過酷な労働環境

佐々木チワワ 現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま……第8回

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写真はイメージです(AFLO)

「バレンタインイベント開催中!」とポップな文字が躍るホームページ。こちらは何を隠そう、女性用風俗のトップページだ。「男性セラピストにチョコをプレゼントすると、無料で30分延長!(チロルチョコもOK)」とある。女性用風俗の料金は1時間1万円が相場なので、20円のチロルチョコで5000円がお得になるというのだ。

こんなシステムでもキャストが儲かるとはずいぶん太っ腹なお店……と思いきや、そうではない。女性向け風俗の男性セラピストたちのなかには、ブラック企業もビックリな搾取構造のなかで働いている者もいるのである。

女性用風俗は「出張性感サービス」が基本だ。つまり、ほとんどがデリヘルの男女逆転版のようなシステムである。本番行為はもちろん禁止されており、オイルを使った性感マッサージなどが楽しめる。

利用料金はだいたい120分2万円。男性向けの風俗と違い、40分などのショートコースは用意されていない店がほとんどで、店舗側も120分以上の利用を推奨している。女性は男性よりも性的サービスに至る過程やマッサージ、コミュニケーションに比重を置くこともあり、長時間のほうが「楽しめる」そうだ。

客が払う利用料金の約半分が、男性セラピストの取り分となる。売り上げの大きい人気キャストになると、給料が上がる店舗も存在するらしい。

さて、この「客払いの半分がキャストの取り分」というのが罠なのだ。店舗は時折新規客向けに割引サービスを実施する。「ご新規限定! 60分無料!」「新人セラピスト限定! コース料金半額!」などである。男性向け風俗店では、こういったキャンペーンを打った場合、店の取り分を下げて従業員には通常通りの給料を払うものなのだが……。

「払われないんですよ、ウチは。客が払った金額のキッカリ半分しかもらえない。たとえば、90分で予約した客が60分無料サービス券を使った場合、料金は5000円で、俺の取り分は2500円だけです。何のために風俗で働いているんだろうって思いますよ。よく調べないでこの業界に入ったことをマジで後悔してます」

そうこぼすのはセラピスト歴半年のハジメ(仮名、21)だ。ハジメは現役の専門学校生。奨学金を借りているが生活費が足りず、女性風俗店の扉を叩いた。俳優を目指しているというハジメは、授業の合間をぬってほぼ毎日出勤している。

「俺は正直、ツイッターのDMとかで営業をかけるのが苦手で。だから本指名がなかなか取れない。毎日毎日客と連絡とって、やっと月に1回来てくれるかどうかだと、正直、やる気にならないんです。こんなことなら、おとなしく時給1500円くらいのボーイズバーとかで働いたほうがよかったかもしれない。

けど、最初に登録料として7万円も払っているので、もったいないと思ってずるずる続けちゃってました。だけど、今回のバレンタインイベントで、やっとやめる決心がつきましたよ。どれだけタダ働きをさせる気だよって、マジで嫌になりました」

ハジメの店舗では、20円のチロルチョコで30分の無料サービス、さらにホワイトデーには「お返し」として無料で60分のサービスを客側は利用できる。合計90分無料サービスをしなくてはならないのは、なかなかにハードだ。

「いま、女性用風俗は買い手市場なんです。セラピストが増えたから本指名してくれる客がたくさんついていないと稼げない。しかも、いくらプレイが良くても、『でも連絡遅いから』とかで簡単に指名替えされてしまう。働けば働くほど、取りたくもない連絡の通知だけが増えて行って……。

女性向け風俗のセラピストとして稼げている奴は、たぶんどこいっても成功するんじゃないかな。ホント、地道な作業です。いままでは女の子とよく遊んでましたけど、この仕事始めてからその気力もなくなりました」

女性向け風俗のセラピストたちは、客の体だけでなく、メンタルのケアまで求められているのだ。しかもこれで薄給とあれば、長くは続けられないだろう。流行りの女性向け風俗だが、現状が続けば、男性セラピストがどんどん辞めていくことになるかもしれない。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

『FRIDAY』2022年3月11日号より

  • 取材・文佐々木チワワ

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