外国人ADが重宝される「テレビ局改革のスゴい実情」
スタッフは見た!週刊テレビのウラ側
日本テレビがアシスタントディレクターを指す「AD」という呼び名を廃止したと報じられ、波紋を呼んでいる。
「下っ端、寝る時間もないほど多忙、山ほど雑用をこなす……といった負のイメージを払拭するため、YD(ヤングディレクター)という呼称に変更するというのですが、ヤングなんて呼ぶ方がダサいとADたちから不評です(笑)。散々指摘されていますが、仕事内容や待遇が変わらなければ意味がない。このままウヤムヤになって、結局、『AD』に戻ると見ています」(制作会社ディレクター)
働き方改革の影響で、ADの待遇自体はかなり良くなってきている。
「パワハラになるからADを怒鳴る上司はいなくなりましたし、社員ADに関しては、だいたいどこの局も残業はNGになっています。それでも、テレビ業界はいわゆる“9時~17時”の世界ではないからハードに感じるのか、辞める若いADは後を絶たない。人材を補填するために、最近は外国人のADを採用する制作会社が増えました。日本のアニメやエンタメに憧れて祖国を飛び出してきた人たちが応募しているので、日本人ADよりやる気もあって優秀なケースが多いですね」(キー局プロデューサー)
根性以外にも、外国人ADが重宝される理由がある。前出の制作会社ディレクターが続ける。
「通訳としても活躍しているのですよ。いまはどこの局も制作費が削減されているので、通訳代わりになる外国人ADは貴重な戦力。コロナ前は、インバウンドで外国人に取材することが多かったので、活躍の場が多かったですね」
AD確保のため、テレビ局側はさまざまな“飴”を与えている。
「テレビ朝日は’20年から深夜帯のバラエティー枠『バラバラ大作戦』をスタートさせ、若手ディレクターに冠番組を担当させています。スタッフの人材育成が主な目的ですが、『ADを数年頑張れば、番組を任せてもらえるかも』と新入社員のモチベーションを高める狙いもある。テレビ東京が特番制作を懸けたコンペ『テレビ東京若手映像グランプリ』を開催しているのも同じ理由でしょう」(放送作家)
配信での視聴を意識してテレビ局が公式YouTubeや見逃し配信に注力していることも、若手スタッフを重宝する理由だ。前出のプロデューサーが言う。
「ネットネイティブな若手たちはSNSを使いこなすのが上手く、拡散力がある個人アカウントを持つADもいます。ネットでのバズり方などはベテランスタッフよりもわかっていますからね」
だが、ここ最近のAD厚遇の流れは「デメリットの方が大きい」と前出のディレクターが苦笑する。
「ADに残業させられないぶん、外部スタッフやディレクターら上司が徹夜しています。昔のように厳しく指導できないから、凡ミスも増えました。情報解禁前の番組の打ち合わせを兼ねた食事会を手配させたら、個室のない安居酒屋で呆然としたこともあります。残業してでも現場を学びたいという志の高いADもいますが、例外は認められていないため、AD本人も含めて、現在のルールにモヤモヤすることは多いですね」
“箱入りAD”の育成はテレビ業界にとって吉と出るか凶と出るか。
『FRIDAY』2022年3月18日号より
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