『ザワつく!金曜日』でサバンナ高橋が創り出した新たな司会像 | FRIDAYデジタル

『ザワつく!金曜日』でサバンナ高橋が創り出した新たな司会像

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「へりくだる司会者」

昨年の大晦日、紅白歌合戦のウラで一番の視聴率をあげたのはテレビ朝日の『ザワつく!金曜日』の特番だったということは、案外知られていない。2018年に深夜枠でスタートした同番組は、主要メンバーが放つ独特な空気感が次第に人気を呼び、金曜日のゴールデン枠に進出。現在では視聴率ランキングの上位に堂々と並んでいる。

バイオリニストの高嶋ちさ子(53)、長嶋一茂(56)、そして気象予報士でタレントの石原良純(60)の3人が横並びで出演し、世の中で起こった様々な事象や問題に独自の視点から答えていく…といういたって単純な構成になっているが、この出演者のキャスティングが絶妙なのが人気の秘密であろう。

実は後輩からは頼れる兄さんとしても尊敬されている高橋。その使い分けが彼の魅力なんだろう
実は後輩からは頼れる兄さんとしても尊敬されている高橋。その使い分けが彼の魅力なんだろう

辛口でバッサバッサと小気味のいいコメントを吐く高嶋ちさ子に同感する視聴者も多いだろうし、長嶋一茂の「宇宙人的発想」のコメントに「さすがはミスターの血を引いている」と感じる往年の野球ファンも少なくないだろう。また石原慎太郎の息子でありながら、いたって常識的なコメントを出す良純に安心感を持つ人もいるはず。

しかし、この番組を成立させているのは、お笑いコンビ「サバンナ」の高橋茂雄(46)だ。彼は、まったく新しい司会者像をこの番組で作り上げたと言っても過言ではない。

というのも、従来の司会者といえば番組を進行させてまとめるのが主な役割だった。『笑っていいとも!』のタモリに代表されるように、出演者を上手く転がし、話を進める。あるいは、番組が大盛り上がりしているときには一歩引いて、自分の存在を消す。これもまた、司会者としての伝統的な立ち居振る舞いであった。

ところが、この番組での高橋の司会は、そうした従来のイメージを超えたものになっている。

一言で言えば、高橋は司会者ながらに3人にへりくだることで彼らを気持ちよくさせ、そのうえ、彼らからいじられる役割を進んで買って出ているのだ。

出題に対する高橋の意見に異議があると、一茂が「高橋!それ違うだろ!」とツッコミを入れるのが番組の定番になっている(よく考えれば、一茂の父と高橋は同じ名前だ)。それを合図に、それに高嶋や良純も次々と高橋にツッコミを入れていく。冷静に観ればわかるが、この番組内での一番の常識人は高橋である。ところが、彼はあえて常識的な視点を投げかけることで、彼らをヒートアップさせ、彼らの特異さを際立たせるーーこれが番組の味となっているのだ。

司会が冷静すぎても成立しないし、3人の意見をうまくまとめるタイプでも、番組がこぢんまりとして終わってしまう。「サンドバッグ状態にしてもいい司会者」を置くことで、3人が生き生きと動けるーーこれが視聴者にウケたのだ。

毎回「猛獣」の檻に投げ込まれたかのようにおびえながら、この攻撃にひたすら耐え、時には猛反論する高橋。高橋は出演者たちよりも年下であり、もともと芸人の世界でもいじられやすいタイプであったから、このポジションが適任だったのだろう。

ただ、「サンドバッグ」とは言っても、観ていて心苦しいものではない。出演者の3人が、高橋のことを愛したうえでいじっているという気持ちが画面から伝わってくるのだ。この、「猛獣」たちに愛される力こそが、高橋の本当の魅力だろう。

歯医者でも敗者でもなく

自らを「芸人界のスネ夫」と称している高橋。目上の人に逆らわず、ひょうひょうと振る舞いながらこの世界を生き抜く彼の才能と、発言の端々から伝わってくるスマートさは、おそらく子供のころから培われたものだろう。

高橋茂雄は京都市の中心部で生まれ育った。実家は地元で有名な老舗の歯科医院であり、祖父や父も歯科医で、親族には歯科医が大勢いるという環境だった。同家の関係者が当時の様子を振り返ってくれた。

「彼には兄がいて、両親は2人とも歯科医にさせようとしていたんです。京都大学の先生を家庭教師に付けるなど、教育にとても熱心だった。

ただ、高橋さん本人は相当のプレッシャーを感じていたはずです。彼は子供のころから漫画やアニメ、格闘技観戦が好きで、勉強に集中するより、日々を楽しく過ごすことを望んでいた。

お兄さんは秀才で歯科医の道に進みましたが、弟の彼は、結果的には両親の期待に沿うことはできなかった。そのあたりに『自分は兄より勉強ができないから、とにかく兄を立てておこう』という気持ちが生まれたはず。

ところが、もともとお笑いやギャグマンガが好きだったことから、その気持ちを変にこじらせることなく、自分の立場を笑いに変えることで、昇華していたのではないでしょうか。そうやって培ったへりくだりとユーモアが、成り行きで進んだ芸人の道で存分に発揮されたんです。

もともとの頭の回転の速さが、医療の世界ではなく芸の世界で発揮されたんですから、彼のご家族もいまの活躍を喜んでいますよ」

高嶋も青山学院に小学校から通っていた“お嬢様”であり、一茂はミスターの長男で桁が外れた“超ボンボン”、そして良純も慶応幼稚舎から育った、石原家の“お坊ちゃま”である。高橋は「ボンボン気質」がどういうものかがわかっているからこそ、彼らを気持ちよくさせ、そして愛されることに成功したのだろう。

この番組、テレ朝内での評判もよく、「強いキャラクターをもつ3人の存在が欠かせないことはもちろんだが、彼らだけでは、ただの『異質な番組』で終わっていたはず。それを、高橋さんを司会に置いたことで、番組としてのまとまりが生まれた。類似の番組はなく、テレビマンがもっと研究すべき番組だと自負しています」(テレビ朝日関係者)と絶賛する声が聞こえてくる。

「ザワつく」という番組名、誰がザワつくのかは明示されていないが、高橋の想像以上の活躍に対する業界人の胸の内を表している…のかもしれない。

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