苦境のテレビ界に現れた救世主「番販」とはいったい何か? | FRIDAYデジタル

苦境のテレビ界に現れた救世主「番販」とはいったい何か?

スタッフは見た!週刊テレビのウラ側

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地上波のレギュラーが減るなか、ビートたけしはライブと動画配信サービスにシフト。Amazon Primeでの『風雲!たけし城』は渡りに船だ
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’91年に放送開始した人気バラエティ番組『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)が、世界中で注目されている。

「ヨーロッパでは’00年代から放送されていましたが、今年3月にNetflixで世界190ヵ国に向けてダイジェスト版が放送されたことで『日本はなんて治安がいいんだ!』などと話題沸騰。いわゆる”海外番販(番組販売)”と呼ばれるものですが、動画配信サイトの定着で『はじめてのおつかい』のほかにも、意外な番組がネットでバズるようになりました。

自社制作の番組やコンテンツを活用する番販は以前からテレビ局にとって”金のなる木”でしたが、配信の隆盛によってより大きな利益を産み始めています」(キー局プロデューサー)

番販はオリジナル版をそのまま放送するパターンと、現地版制作のためのフォーマットを販売するパターンがある。

「’80年代後半にブームになった『風雲!たけし城』(TBS系)がAmazonPrime Videoで来年、復活することになりました。今回もTBSが制作し、ビートたけし(75)以外の出演者は一新されるそうです。今夏の収録に向けてTBSの緑山スタジオ・シティでは、同局の『SASUKE』チームが中心となってセットを制作。本家版を超える豪華な仕上がりになりそうです。制作費もケタ違いですよ」(TBS関係者)

キー局以上に番販に力を注いでいるのがローカル局だ。以前、本連載で見逃し配信サービス『TVer』の定着でローカル番組に全国区のタレントが参入していることを紹介したが、「番販にローカル局の存続がかかっている」と制作会社ディレクターが指摘する。

「テレビ不況のあおりを受けて予算を大きく削減されたキー局が、ローカル局の番組を買って安く枠を埋めるケースが増加。動画配信サービスへ番組を提供するケースも増えたため、ローカル局が番販を想定して全国区のタレントやスタッフを起用するようになりました。番販で大きく利益を出している局と、番販で売れる番組を作れない局とで、差が開き始めています」

優秀なテレビ人材がABEMAなどネット系メディアに流出していることは本連載で報じたが、ローカル局への人材流出も始まっているという。

「キー局はローカル局より注目度が高いぶん、コンプライアンスに縛られており、攻めた企画が通りづらい。その点、地方局は自由度が高く、若い才能を積極的に起用する局もあるので、ギャラは高くないものの優秀な人材がローカル局に流れ始めていますね」(放送作家)

番販ブームにテレビ局が活路を見出す一方で、「制作現場にはあまり恩恵がない」と前出のキー局プロデューサーは嘆く。

「番販はコンテンツビジネスの部門が行うので、総合プロデューサー以下の制作スタッフには基本的に知らされません。売り上げも制作担当部署には入らない。高額な利益を出した元番組の制作費やスタッフのギャラが上がったなんて話も聞かないですね。制作費は下がる一方なので、せめて番販が好調な番組ぐらいは制作費を上げてほしいですよ(苦笑)」

現場への還元は今後の課題だろうが、番販という武器を使いこなせた局の生き残る確率が上がるのは、間違いない。

『FRIDAY』2022年6月24日・7月1日号より

  • 撮影山田宏次郎

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