インフレ、円安…つみたてNISA「S&P500」一刀流は正解か | FRIDAYデジタル

インフレ、円安…つみたてNISA「S&P500」一刀流は正解か

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金融市場の動揺が収まらない。6月に入って、底打ちの気配を漂わせていた米国の株式市場は、インフレ懸念の再燃を受けて年初来安値を更新。6月17日時点、NYダウは今年の高値から-18.8%、S&P500は-23.4%となっている。ここ数年、国内では米国株投資ブームが起きていただけに、不安に駆られている人も多いだろう。現在、米国株に投資している人はどんなスタンスで対処すればいいのだろうか。

金融市場の動揺が収まらない。米国株ブームで「つみたてNISAはS&P500連動型ファンドだけでいい」という声も聞くが…。6月15日、外国為替市場は1ドル=135円台と、1998年10月以来の円安・ドル高を記録した(写真:アフロ)

米国株ブームを起こしたS&P500連動型ファンド

昨今の米国株ブームを牽引したのが、『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』という投資信託(ファンド)だ。2018年7月の販売開始にもかかわらず、すでに純資産総額は、2022年5月末時点で1兆2209億円と、国内第2位の巨大ファンドとなっている(以下『eMAXIS (S&P500)』と略す)。

このファンドは、名前のとおり、米国の株価指数S&P500に連動するように設計されている。S&P500とは、米国を代表する500社の株価を合成して算出した指数(インデックス)で、単純にいうと、このファンドを買えば米国の株式市場全体に投資できる(指数に投資するのでインデックス投資と呼ばれる)。他にも、S&P500に連動するファンドはいくつもあるが、『eMAXIS (S&P500)』は信託報酬という手数料が割安であるため、大ヒットした。

なお、指数を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社によると、5月末時点、S&P500に連動する金融商品の総額は約4兆6000億ドルに達するという。1ドル=135円なら約621兆円となる計算だ。

『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』の純流入額と純資産総額の推移(単位:億円、2018年7月3日~2022年2月10日)⋰2022年2月発表の三菱UFJ国際投信のプレスリリースより

米国株ブームには投資初心者も参入

実は、このファンドを購入した個人投資家には、投資経験が浅い(もしくはゼロに近い)20代、30代の若年層が少なくない。ネット証券関係者によると、『つみたてNISA』を通じて積立て投資をしている人も多いという。

ベテランの個人投資家なら、損失に何度も遭い、株式投資の〝山あり谷あり〟を経験しているはず。しかし、投資を始めてから損失を知らず、順風満帆で来た場合、足元の米国株の下落は大きなダメージとなる可能性がある。米国株ブームに乗って、海外株式で運用するファンドのリスクについて、あまり分かっていない状態で投資を始めていれば尚更だ。その結果、投資そのものをやめてしまう人が続出するのではないか、と懸念している。今回の下落局面が、近年の下落とは様相を異にしているからだ。

2020年2月下旬に起きたコロナ・ショックは、今回を上回る下落幅だったが、すぐ3月下旬には底を打ち、8月下旬に暴落前の高値を上回った。おそらく、「うわ、どうしよう!」と慌てているうちに下落は止まり、反発したことで胸をなでおろした人も多かっただろう。その前の下落局面は、米国の長期金利上昇をきっかけとして、2018年9月中旬から12月中旬まで続いたが、下落幅および下落期間ともに今回と比べて軽微に留まる。

下落相場は年内続く可能性も

今回の下落は、2022年の年初から始まり、すでに6ヵ月近く経つ。S&P500は、高値から2割以上下落したため、過去の経験則からは「弱気相場」に転じた可能性が高い。いったん弱気相場入りとなれば、株価が大底を確認するまで1年以上、大底までの下落率は30%を超えるケースが多い。

これを今回に当てはめると、やや楽観的なシナリオは、年内は下落相場が続き、まだ10%程度の下落余地がある、ということになる。これは、あくまでも過去の経験則から単純に導き出されたデータなので、今回の下落は軽くて済むかもしれないが、逆に深刻になる可能性もある。ただ、「しばらくは下落相場が続く」と想定していれば、気持ちの準備ができるのではないか。

悲観論に惑わされずに投資を継続する

すでにネット上には、経済や金融市場、株式相場に関する様々なニュースや見解が溢れており、その中には、個人投資家の混乱を煽るものが目立ってきている。おそらく、今後、相場が乱高下するにつれて、そうした悲観論は増えていくだろう。投資について疑心暗鬼になっているときに、そうした記事を見聞きしてしまうと、投資を止めてしまう人が出かねない。それを防ぐためにも、気持ちの準備は大切だと言える。

すでに、『つみたてNISA』などで積立投資をしている人は、現状維持が正解だ。そもそも、個人投資家の資産運用は、基本的に長期投資を前提とすべきもの。特に、積立でインデックス投資をする場合は、少なくとも15年、20年といった運用期間が条件となる。「長期投資をすれば必ず利益が出る」ということは理論的には言えないのだが、リスク・リターンは安定する可能性は高くなる。投資を止めないことが最も重要なのだ。

「ナンピン買い」は賢明ではない

もしかすると、この下落をチャンスとばかりに、追加購入や積立金額を増やすことを考えている人もいるかもしれない。株式投資で言う「ナンピン買い」で、安くなった価格で買い増して保有分の平均購入単価を下げ、上昇に転じたときの利益を大きくする、という手法だ。よほど資金的に余裕があるなら別だが、基本的にはお勧めはしない。下落期間が想定以上に長期にわたった場合、投資を止めてしまうリスクが高くなるからだ。

『eMAXIS (S&P500)』の資金流入額を細かくみると、2021年12月、過去最高となる835億円の月間資金流入を記録した。それまで米株式市場は絶好調で、S&P500も右肩上がりだった。2022年以降は、下落に転じたことで資金流入額も減少傾向にあったが、底打ちの気配を出した5月には、流入額は707億円と持ち直している。底打ちと見た投資家がナンピン買いを入れたと推測される。このときに買い増しをした投資家の含み損は、現在、膨らんでいることだろう。積み立てる金額も現状維持が賢明だ。

分散投資の効果を上げる

余裕資金があって、S&P500連動型ファンドでしか運用していない人なら、「TOPIX(東証株価指数)」に連動するファンドへの積立投資を検討してはどうか。S&P500だけでは、運用対象が偏ってしまい、分散投資の効果はあまり期待できない。例えば、月1万円ずつ『eMAXIS (S&P500)』に積立投資しているのなら、別枠でTOPIX連動型ファンドに月3000円の積立てをスタートさせる。低成長国となっている日本に投資するのは気が進まない人もいるだろうが、分散投資の効果は確実に高まる。

実は、S&P500は、一部の構成銘柄の値動きに影響されやすい。株価指数としてのS&P500を説明する際、冒頭でも述べたように「米国の株式市場全体を表す」と言われることが多い。事実、S&P500の時価総額合計は、米国の上場銘柄の約8割を占めている。但し、S&P500の時価総額は上位5銘柄が約2割を占めている。アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、テスラの5社で、こうした銘柄の値動きに影響を受けやすい。

裏を返せば、昨年までのS&P500のパフォーマンスは、こうした銘柄の上昇によるところが大きかったのである(2010年から20年までの10年間、S&P500から上記の『GAFAM』とテスラを除くと、パフォーマンスはTOPIXと大して変わらない、という試算もある)。

米国株投資には円安は追い風

最後に、円安のおかげでショックが軽減されていることを指摘しておきたい。S&P500は、高値から-23.4%となっているが、『eMAXIS (S&P500)』の基準価額(ファンドの価格のこと)は-11.2%に留まっている。その理由は、S&P500はドルで計算されるが、『eMAXIS (S&P500)』は「為替ヘッジ」がされていないので、円で計算されているからだ。年初から大幅な円安が進行したため、ドルの価値が上がり、S&P500の下落が軽減されている。

『eMAXIS (S&P500)』に限らず、海外株式に投資しているファンドは、為替ヘッジがされていなければ、同様に下落が多少緩和されているはず。これは、海外の金融資産に投資しているメリットであり、国内投資家にとって、円安による資産の目減りをある程度防いでくれる。但し、今後、円高に振れた場合、S&P500が下落しなくても基準価額は下落する点に注意が必要だ。

昔から、投資を長く続けるためには、「投資していることを忘れる」のが有効であると言われてきた。相場の動きに一喜一憂せず、何事もなかったかのように投資を続けるというスタンスで、筆者もこれがおそらく〝最強〟ではないかと思っている。「それができないから困っている」という声が聞こえてきそうだが……。

  • 取材・文松岡賢治

    マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。情報サイト「オールアバウト」クレジットカードガイド。

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