マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡 賢治

<h3><span class="strongInContent">改悪・メガバンク提携…今後有望な「共通ポイント」は</span></h3>
<p><span class="strongInContent">ポイントサービスの〝改悪〟が止まらない。今年に入ってからも、楽天ポイント、d払い、Pontaといった、おなじみの共通ポイントで還元率の悪化が続く。その一方で、TポイントとVポイントの統合など、メガバンク系の金融グループとの連携などが続々と浮上。これまでは、携帯キャリア中心のポイ活がセオリーだったが、そこに死角はないか？　いま、最もお得な「クレカ積立」とは？　再び激動期に入った業界動向を整理し、今後有望なポイントを探る。</span></p>
<h3><span class="strongInContent">「Vポイント」ショックでポイント勢力図に異変</span></h3>
<p>共通ポイントとは、運営企業が異なる複数の店舗での支払いに使えるポイントのこと。おそらく、まだ<span class="strongInContent">Tポイント、Ponta、楽天ポイント、dポイント</span>を、4大共通ポイントと思っている人が多いかもしれない。しかし、足元の現実は大きく様相が異なる。</p>
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<p>まず、2021年2月に〝事件〟が起きる。三井住友カードのポイントである<span class="strongInContent">Vポイント</span>が、突如、5番目の共通ポイントになったのだ。それまでのVポイントは、三井住友カードの利用や三井住友銀行での取引で貯まる、三井住友フィナンシャルグルーブ(SMBCグループ)内で流通するポイントに過ぎなかった。だが、2021年2月にリリースした「Vポイント」アプリによって、Apple PayおよびGoogle Payと連携したのである。</p>
<p><span class="strongInContent">これは、「Visa」に加盟するリアル店舗で、Vポイントが支払いに使えることを意味する。Visa加盟店は全世界でざっと1億。したがって、利用可能な店舗数や決済額で見れば、Vポイントは5番手ではなく5大共通ポイントの1番手ともいえるのだ。「Vポイント」アプリのリリースがコロナ禍の真っ最中だったので、大きな話題にはならなかったが、この一手で勢力図に地殻変動が起きることになる。</span></p>
<figure id="attachment_270126" aria-describedby="caption-attachment-270126" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c989c63c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/70be671e6f1c4d2c169ac3c48c23ddb2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-270126" class="wp-caption-text">2021年2月にリリースされた「Vポイント」アプリは、Apple PayおよびGoogle Payと連携し、「Visa」に加盟するリアル店舗で支払いが可能だ（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">共通ポイントの「覇権争い」はこれから山場へ</span></h3>
<p>そして、2022年3月、<span class="strongInContent">ソフトバンクがTポイント陣営から離脱</span>。それまでは、ソフトバンク傘下のZホールディングスが運営する<span class="strongInContent">「Yahoo! Japan」</span>の各種サービスで、Tポイントが貯まっていたが、自前の<span class="strongInContent">「PayPayポイント」</span>へと全面的な切り替えが行われた。この時点で、6大共通ポイントの時代を迎え、共通ポイントの元祖だったTポイントは苦境に立たされてしまう。</p>
<p>共通ポイントの覇権争いは、前例のない群雄割拠に突入したかと思われたが、2022年10月3日、意外な展開を見せる。SMBCグループとTポイントを運営するCCCグループの資本・業務提携だ。<span class="strongInContent">VポイントとTポイントを統合し、新しいポイントを創設</span>するという。新ポイントサービスの運営は、持株比率がSMBCグループ4割、CCCグループ6割となる新会社が行う見通し。持ち株比率から、この資本・業務提携は、Tポイントの生き残りをかけてCCCグループが主導したと推測される。</p>
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<p>統合時期や新ポイントの名称は未定だが、今後1～2年以内には6大から再び5大に戻ることになる。新ポイントの注目点は還元率だろう。三井住友カードのレギュラーカードのVポイント還元率は0.5％で他の共通ポイントより低い。おそらく、この部分は変えず、現在のTポイント加盟店で＋0.5％あたりに着地するのではないか。実現すれば、1％になる店舗も出てくるので、他の陣営には脅威になりそうだ。</p>
<figure id="attachment_270127" aria-describedby="caption-attachment-270127" style="width: 2933px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="99f34db7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/9157e14efc709402a864bd341173301e.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-270127" class="wp-caption-text">（CCCMKホールディングス株式会社のプレスリリースより）</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="今後、どの共通ポイントが有望なのか"></div>
<h3><span class="strongInContent">勢力図を決めるのは「ポイントを生み出すサービス」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>では、今後、どの共通ポイントが有望なのか。そこを見極める点は、<span class="strongInContent">毎月、一定のポイントが貯まるサービス</span>があるかどうかだ。これは共通ポイントとなる必須条件である。初期の<span class="strongInContent">Tポイントには、レンタルDVDのTSUTAYA</span>があった。レンタルするごとにTポイントが貯まり、月数千円程度の出費は当たり前に行われていた。そして、<span class="strongInContent">楽天ポイントには楽天市場</span>があり、<span class="strongInContent">携帯キャリア各社のポイントは、いうまでもなく携帯電話料金</span>がポイントを生み出す原資となっている。</p>
<p>携帯料金は、もはや公共料金並みの不可欠の出費となっているため、「ドコモユーザーならdポイント」といった具合に、迷う余地がなく、使っているキャリアのポイントがメインとなる。したがって、携帯各社のポイントは盤石と思われていたが、ここにきて、陰りが見え始めた。ここ数年で、<span class="strongInContent">携帯料金が劇的に下がり、生み出されるポイントの量が減っていること、加えて、スマホ決済におけるサービスの改悪が相次いでいる</span>ことだ。</p>
<p>例えば、これまで、<span class="strongInContent">「au PAY カード」</span>で「au PAY 残高」へチャージをすると、1％分のポイント還元があったが、2022年12月1日からは、レギュラーカードのチャージポイントが廃止される。また、<span class="strongInContent">「d払い」</span>の支払い方法をdカードにすると1％還元だったが、2022年12月10日から廃止され、0.5％還元の「dカード支払い特典」に移行する。</p>
<p>いずれも〝大改悪〟だが、携帯キャリア3社だけを見ると、そもそも<span class="strongInContent">PayPayは基本還元率が低い</span>ため、ざっくり言って横並びの状況となった。スマホ決済にあったポイント二重取りのメリットは薄まり、決済での還元率は、各社、クレジットカード決済時の1％に収斂することになる。他のポイントサービスを含めて、<span class="strongInContent">昨今のサービス内容改悪の動きにより、本格的な低還元率の時代に入った</span>といえよう。</p>
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<h3><span class="strongInContent">携帯料金を超える「クレカ積立」の威力</span></h3>
<p>携帯キャリアのポイントのパワーが衰える一方、存在感を増しているのが<span class="strongInContent">金融サービス</span>だ。ポイント還元のあるものが増え、新たなポイントを生み出す有力な原資となりつつある。そのサービスの中でも、大成功したのが<span class="strongInContent">「クレカ積立」</span>だろう。投資信託の積立投資をするお金をクレジットカードで決済でき、しかも、積立金額に応じてポイント還元されるというもの。2018年に<span class="strongInContent">楽天証券</span>が導入し、現在は<span class="strongInContent">大手ネット証券</span>のほとんどが提供している。</p>
<p><span class="strongInContent">楽天証券では、すでにクレカ積立の設定者数は200万人を突破</span>。投信積立全体の月額設定額は1000億円を超えており、設定額の推移状況から、9割はクレカ積立になっていてもおかしくはない。仮にクレカ積立の設定額を900億円とすれば、毎月9億円分の楽天ポイントがユーザーに還流していたことになる。口座設定をしている人の多くが毎月の携帯料金よりも、積立額の方が大きいのではないだろうか。</p>
<p>管見の範囲では、ポイント関連の金融サービスの中で、この<span class="strongInContent">クレカ積立が最もお得度が高いと思われる。還元されたポイントは、投資信託への再投資が可能で投資効率も高い</span>。一般的な個人が資産形成をするなら、投資信託の積立投資は〝一択〟と言っても過言ではなく、資産運用が前提となってしまうが、今後、共通ポイントを考える上で、クレカ積立が利用できるかどうかは、かなり重要になるだろう。</p>
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<p>以下、大手ネット証券が提供するおもなクレカ積立を挙げておく。</p>
<figure id="attachment_270128" aria-describedby="caption-attachment-270128" style="width: 1607px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dac4cec1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/H-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-270128" class="wp-caption-text">ポイントの還元率は、各クレジットカードの最もグレードの低いものを使ったときの数値</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">2024年の「新NISA」前にはキャンペーン合戦が勃発か</span></h3>
<p>但し、残念ながら、ここでも改悪が始まっている。散々煽っておいて恐縮だが、それは楽天証券だ。<span class="strongInContent">衝撃的だったのは、9月から投資信託の保有コストである信託報酬の水準によって、還元率を変えた</span>こと。個人投資家の人気が高い『eMAXIS Slim 米国株式（S&amp;P500）』は、信託報酬は0.4％未満なので0.2％しか付かない。楽天キャッシュでの積立に切り替えれば0.5％になるが、以前と比べて0.5％ダウンである。なお、2022年12月までは、改悪緩和措置として楽天キャッシュでの積立で0.5％の上乗せを実施、合計1％としている(楽天キャッシュをお得にチャージする裏ワザもあるがここでは省略)。</p>
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<p>表を見る限り、<span class="strongInContent">「auカブコム証券＋au PAY カード(Pontaポイント)」</span>の組み合わせが一歩リードしているものの、還元率をはじめサービス内容は状況に応じて容易に変わる。楽天証券も状況次第で見直すことに含みを持たせている。<span class="strongInContent">クレカ積立は「NISA」(少額投資非課税制度)口座でも使うことが可能で、「新NISA」が2024年からスタート</span>する。来年後半は、久しぶりにキャンペーン合戦が見られるかもしれない。各社の動向はチェックしておきたいところだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="気になるdポイント、PayPayポイント、nanacoの動向"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「ドコモ銀行」「LINE Bank」設立も間近<br>
</span></h3>
<p>他のポイントの金融事業の動向についても紹介しておこう。まず、<span class="strongInContent">dポイント</span>。最近は目立った動きはないが、すでに<span class="strongInContent">ドコモは、2022年中に三菱UFJ銀行と合弁会社を設立し、新しいデジタル口座サービスの開始を表明</span>している。報道発表資料を読む限りでは、銀行免許は取得せず、三菱UFJ銀行のプラットフォームを借りてバンキングサービスを提供する「ネオバンク」的な業態になるのではないか。</p>
<p>この提携は、グループ内でのユーザーの資金の流通をスムーズにすることが目的と考えられるが、周回遅れの感は否めない。ドコモの証券サービスには、SMBC日興証券との「日興フロッギー+docomo」があり、投信積立でポイントが付くものの、0.03％と還元率が低すぎる（クレカ積立は無し）。</p>
<p><span class="strongInContent">PayPayポイント</span>を運営するソフトバンクグループには、証券会社が2つある。<span class="strongInContent">PayPay証券</span>(旧One Tap BUY)と<span class="strongInContent">LINE証券</span>だ。いずれも議決権の50％超を握る子会社なので、PayPayカードやVisa LINE Payクレジットカードで、クレカ積立をやるハードルは高くはない。特に、LINE証券はつみたてNISAにも対応している。だが、<span class="strongInContent">PayPay証券もLINE証券も取扱商品が少なく、魅力に欠ける</span>。新NISAの開始までには、ラインナップを拡充し、クレカ積立をリリースする可能性はある。</p>
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<p>ちなみに、PayPay証券にはソフトバンクが51％、みずほ証券が49％を出資。LINE証券には、LINE Financialが51％、野村証券の持株会社である野村ホールディングスが49％を出資している。ややこしいが、LINE Financialは、みずほ銀行との共同出資によるLINE Bankの設立を今年度中に予定している。</p>
<figure id="attachment_270129" aria-describedby="caption-attachment-270129" style="width: 4589px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b5b1fd42"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/6c474e668a60b256e5502ff866fd525b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-270129" class="wp-caption-text">リアル店舗からデジタルへ…新しいビジネスモデルを模索するメガバンク（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「セブン証券」でnanacoポイントはどうなる?</span></h3>
<p>共通ポイントではないが、<span class="strongInContent">「nanaco」</span>には面白い動きがある。<span class="strongInContent">セブン＆アイグループのセブン銀行は、スマートプラスと提携して、証券サービスを始める見通し</span>。セブン銀行自身は証券業の免許は取得せず、証券会社であるスマートプラスのプラットフォームを利用して、株式投資をできるようにする。</p>
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<p>この提携の最大のメリットは、<span class="strongInContent">セブン銀行の口座のお金で、直接、株式投資が可能に</span>なること。「なんだ、大したことないじゃないか」と思うかもしれないが、銀行口座＋証券口座〝一体化〟の意義は小さくない。これまで、銀行口座と証券口座間の資金融通をスムーズにするためには、証券会社が銀行子会社を設立する、あるいは、銀行が証券子会社を設立して連携させる、といった大掛かりなことが行われてきた。それが、銀行サービスに証券サービスを組み込むという手法で、あっさりとクリアしたのである。当面、投資信託は扱わないようだが、nanacoポイントが付くサービスが出るかどうか、注目したい。</p>
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マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。情報サイト「オールアバウト」クレジットカードガイド。

松岡賢治

ポイントサービスの〝改悪〟が止まらない。その一方で、TポイントとVポイントの統合など、メガバンク系の金融グループとの連携などが浮上している。いま、ポイントサービスはどこがお得なのか？

NISAで最強ポイ活！携帯料金を超える「クレカ積立」の威力

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