マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡 賢治

<h3><span class="strongInContent">新規開設、乗り換え…口座選びの基準は「ポイント還元」！？</span></h3>
<p><span class="strongInContent">&#8217;24年１月から新NISA（ニーサ）がスタートする。現行のNISAと比べて、投資額上限の拡大や非課税期間の無期限化など、使い勝手が大幅にアップする。これを機に、NISA口座の開設や、金融機関の乗り換えを考えている人も多いだろう。では、どこの金融機関がよいのか？　「ポイント還元」の観点から比較検討をしてみたい。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_319143" aria-describedby="caption-attachment-319143" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3ab911b7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/47d846094acee0e2bd773098784e0831.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319143" class="wp-caption-text">６月13日、三井住友フィナンシャルグループ（FG）とカルチュア・コンビニエンス・クラブ（CCC）は、来年統合するVポイント事業の概要を発表した（PHOTO：共同通信）</figcaption></figure>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<h3><span class="strongInContent">新NISAで投資上限は大幅拡充、非課税期間も無期限に</span></h3>
<p>NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」。その名のとおり、投資で得られる利益にかかる税金がゼロになるという国の制度だ。’14年１月から始まり、今年で10年目を迎えている。金融庁が発表している『NISA口座の利用状況調査』をみると、’22年12月末時点の総口座数は約1804万件。現在、国内の20～79歳の人口は約9200万人なので、おおよそ５人に１人はNISA口座を保有していることになる。’20年からは、20代、30代の若年層の口座開設が顕著に増加している。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>新NISAの税制優遇は大きく拡充される。現行のNISAには、株式や投資信託に投資する「一般NISA」と、投資信託に積立投資する「つみたてNISA」があり、それぞれ年間投資額に上限が設定されている。一般NISAは年120万円、つみたてNISAは年40万円で、どちらかを選択しなければならない。それが、新NISAでは、一般NISAに該当する「成長投資枠」は240万円に、つみたてNISAに該当する「つみたて投資枠」は120万円と、それぞれ大幅にアップ。しかも、両方が併用できるため年間投資額上限は合計360万円となる。</p>
<p>また、現行NISAの非課税期間は、一般NISAが５年間、つみたてNISAは20年間だったが、新NISAではいずれも無期限に。いくら投資で得られる利益に税金がかからないといっても、損失が発生すれば非課税のメリットはない。株式や投資信託の投資では、５年間ずっと損しっぱなし、といった事態も考えられるため、非課税期間は長ければ長いほうがいい。</p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>
<h3><span class="strongInContent">NISA口座は「ネット証券以外選択の余地なし」！</span></h3>
<p>NISAを取り扱っている金融機関には、証券会社、銀行、信用金庫、信用組合、農協などがあるが、口座開設をするならいわゆるネット証券一択だろう。その理由はおもに３点。<span class="strongInContent">１つめは、証券会社以外では株式投資ができないこと。</span>当面、株式投資をする予定がなくても、選択肢は広い方がいい。</p>
<p><span class="strongInContent">２つめは、投資信託のラインナップが豊富であること。</span>NISAの投資対象となる投資信託は、金融庁が定めた条件をクリアしたものに限られる。そして、ネット証券以外は、取扱銘柄数が必ずしも多くはない。例えば、現在のつみたてNISA対象の投資信託は、全部で235本（’23年６月時点）。ネット証券の取扱本数は180～190本程度だが、メガバンクや大手証券では10本前後のところが少なくない。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>投資信託には、例えば「日経平均株価連動型」といった中身はまったく同じだが、保有中にかかるコスト(＝信託報酬)が異なる、という銘柄が複数存在する。したがって、そうした類似商品がある場合、最も割安な信託報酬の銘柄を選べばよいことになる。しかし、品揃えが少ないと、比較検討して選ぶということができない。</p>
<p>一部の銀行や証券会社は、自社系列の運用会社が運用している投資信託を中心に、ラインナップをしている。そのため信託報酬が割安な類似商品は排除される傾向にある。おそらく、こうした事情は新NISAになっても、あまり変わらないだろう。たまに<span class="strongInContent">「数が多すぎて何を選んだらいいのかわからない」という意見を聞くが、少なすぎて選べないという方が、損をする可能性が高いということを、覚えておきたい。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_319144" aria-describedby="caption-attachment-319144" style="width: 924px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ec6421a3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/d0704c9adec44ef32662bbe3cc9d116c.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319144" class="wp-caption-text">総合比較メディア「HonNe」を運営しているEXIDEAが今年３月に行った「ネット証券に関するアンケート調査」（調査対象人数：1,539名 有効回答数：300名）</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="NISAのクレカポイント還元は「赤字サービス」"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<h3><span class="strongInContent">「クレジットカード決済」でNISAでもポイント還元</span></h3>
<p><span class="strongInContent">３つめの理由は、ネット証券には、投資の際にポイント還元が受けられるところがあること。</span>クレジットカードでの買い物でもらえるポイントと同様、現金ではなく、クレジットカードで資金決済をするとポイントが付くのである。<span class="strongInContent">特に、メリットが大きいのが投資信託の積立投資によるポイント還元。クレジットカードで決済すると、月々の積立金額に応じて一定のポイントがもらえるのだ。</span></p>
<p>実施しているネット証券の多くは、つみたてNISA口座にも適用している。このサービスは、おそらく新NISAでも引き継がれるだろう。毎月数万円を積み立てるなら、還元されるポイントも大きくなる。このサービスを使わない手はない。以下、ネット証券会社ごとに、貯まるポイントと還元率をまとめた。</p>
<figure id="attachment_319145" aria-describedby="caption-attachment-319145" style="width: 1547px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="429d9da3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/b367b12ee8bcb78d1fa1e1145680c693.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319145" class="wp-caption-text">いずれも年会費無料のカードの場合（マネックスカードは実質無料）</figcaption></figure>
<p>掲載した４社の中では、ポイント還元率だけをみると、<span class="strongInContent">auカブコム証券</span>と<span class="strongInContent">マネックス証券</span>が一歩リードしている。但し、表中でも触れたが、<span class="strongInContent">SBI証券</span>と<span class="strongInContent">楽天証券</span>は、カードのランクによって還元率が変わる。<span class="strongInContent">楽天証券</span>の場合は、楽天プレミアカードでも１％なので、<span class="strongInContent">auカブコム証券</span>と<span class="strongInContent">マネックス証券</span>に並ぶ水準だが、<span class="strongInContent">SBI証券</span>は、ゴールドカード・クラスで1.0％、プラチナカード・クラスなら2.0％までアップする。SBI証券で還元されるVポイントは、’24年春にTポイントを統合する予定。共通ポイントの一大勢力になりつつあるが、この金融分野でも存在感を高めている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3><span class="strongInContent">クレカ決済ポイント還元は完全な「赤字サービス」</span></h3>
<p>このクレカ決済で投信積立をするとポイント還元される、というサービスは、<span class="strongInContent">楽天証券</span>が’18年10月に始めたもの。当時の還元率は１％で、ポイントサービスのブームも相まって大ヒットを記録、他のネット証券各社も次々に導入した。しかし、その楽天証券は、’22年９月から信託報酬の低い銘柄の還元率を0.2%に引き下げた。この〝改悪〟の影響で、同社の投信積立の設定額は減少に転じ、他社に流出したとみられている。そのため、楽天証券はこの’23年６月から、還元率の再引上げを余儀なくされた、という経緯がある。</p>
<p>現在、つみたてNISAで投資する投資信託の信託報酬は、比較的割安なものが多く、0.1％前後も珍しくない。そうした投資信託の購入に対して１％のポイント還元をすると、証券会社の実質的な手数料収益(信託報酬の３分の１程度)を考慮すれば、元を取るのに30年はかかる計算となる。つまり、投信積立ポイントサービスは、証券会社にとっては完全な〝赤字〟商品なのだ。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="5d5f159f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/8031cb5a979a762b4194e8675af30d34.png" alt=""></a></p>
<figure id="attachment_319147" aria-describedby="caption-attachment-319147" style="width: 924px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0c6896f6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/9ad15c7a76e6e30d545e3e1d36fe414f.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319147" class="wp-caption-text">SBI証券と楽天証券の「満足している点」を問う設問では、楽天証券の３位が「ポイントが貯まるところ」という結果に（EXIDEA「ネット証券に関するアンケート調査」より）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「つみたて投資枠」はいくらまでポイント還元の対象となるか</span></h3>
<p>したがって、将来的に各社の還元率などのサービス内容は、「いつ改悪されてもおかしくない」といえる。目先は、’24年からの新NISAスタートを控えて、顧客獲得競争が激しくなっているため、改悪されることはないだろう。そして、少なくとも’24年中の改悪も考えにくい。あからさま過ぎてユーザーの離反を招く可能性がある。</p>
<p>とはいうものの、前述したように、ずっと続けられるサービスとも言い難い。ここは、メリットが大きい間に積極的に活用した方が賢明だ。還元されたポイントは、株式や投資信託の購入にも使えるところが多い。例えば、新NISAの「つみたて投資枠」で還元されたポイントを、「成長投資枠」の投資信託の購入に使うことができる。投資信託の購入単位は通常100円単位となっている。還元されたポイントを再投資することで、パフォーマンスの向上が期待できる。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>あとは、新NISAの「つみたて投資枠」の上限額120万円のうち、どこまでがポイント還元の対象となるか。「つみたて投資枠」の月間最大積立額は10万円だが、現状、各社のクレカ決済ポイント還元の対象となる金額の上限は５万円に設定されている。<span class="strongInContent">楽天証券</span>のみ、電子マネー『楽天キャッシュ』決済によるポイント還元の対象金額が５万円あり、合計10万円となっている。</p>
<p>そもそも、金融商品取引法で、金融商品のクレジットカード決済は禁止されているのだが、内閣府令（第百四十八条）に、積立投資を例外とする規定がある。しかも、上限額は月10万円となっているのだ。今後、楽天証券に追随するところが出てくるのか、注目したい。</p>


マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡賢治

来年１月から新NISAがスタートする。これを機に、NISA口座の開設や、金融機関の乗り換えを考えている人も多いだろう。では、どこの金融機関がよいのか？「ポイント還元」の観点から比較検討をしてみたい。

「V＋Tポイント」統合の先に透ける「新NISA」顧客獲得の皮算用…新NISA開始までやるべきこと

あなたへのオススメ

関連記事