月収600万円超も…歌舞伎町で元サラリーマンホスト増加中のワケ
現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま…… 第21回
ホストほど学歴や職歴がバラバラな職業は珍しい。高校生のときから歌舞伎町に入り浸っていた人もいるし、名門大の現役大学生もいる。だが、最近になって増えてきていると感じるのが、アラサーになってから転身した元サラリーマンホストだ。大学卒業後にやりたいこともなくて……といった感じではなく、ちゃんとした企業に就職した人がホストを選んでいるのだ。

「以前は大手ゲーム会社の子会社にいました。同世代の人に比べれば、わりと給料はもらっていたほうだと思います」
そう語るのはホスト歴2週間のシュン(仮名・31)。今年3月に会社を辞め、数ヵ月のニート期間を挟んでホストデビューした。
「会社勤めする前から、ホストをやってみたいと思っていたんです。給料は青天井だし、自分を客観視するきっかけにもなる。前の仕事ではゲームのシナリオを作ってたんですけど、ホストクラブで働くってちょっとゲーム性があるから似てるなとも思います」
いまはまだ会社員時代のほうが給料はいいが、働き甲斐が圧倒的に違うという。
「毎日違う人に会えるのは新鮮です。あと会社だと、自分の生涯年収が見えちゃうじゃないですか。うまくいかなかったらまた昼職に戻るかもしれませんが、行けるところまではホストとして頑張ろうと思っています」
大手コンサル会社から転職して2年目のサトル(仮名・33)は、月収300万円近くを達成している中堅売れっ子ホストだ。月の最高売り上げが600万円を記録したこともある。
「ホストは個人コンサルに近いですね。女の子のモチベーションとか性格を見極めて、どんな会話が好きかとか、どんな営業したらハマるかをいつも考えています」
会社員経験のあるホストならではの強みもあるという。
「女の子の中には『ザ・ホスト』みたいなブッとんだヤツが好きな子もいるけど、昼職のしんどさをわかってくれるようなホストを求めている子もいるんです。お金を稼ぐ大変さを知ってるよ、ってアピールはポイント高いっすね」
元サラリーマンホストが増加している背景には、昨今の経済状況も少なからず関係しているようだ。広告代理店の営業からの転職組であるソラ(仮名・30)はこう語る。
「コロナ禍によって、サラリーマンが安定してる、なんてのは幻想ってのがわかったじゃないですか。やってみてわかったんですが、ホストの楽さは味わうとなかなか抜け出せない。スケジュールは自分で調整できるし、急に会社に呼ばれることもなく、残業もない。社員旅行もゴールデンウイークもありますし。裏でタバコ吸うのも自由だし、たとえ売れてなくてもクビになることはめったにない。自由すぎる環境なうえ、売れればサラリーマンじゃ考えられない収入を得られますからね」
コロナ禍以外にも増加の理由はある。「おじさんホスト需要」の高まりだ。昨年の歌舞伎町年間最高売り上げである5億2000万円をたたき出した有名ホスト・降矢まさきは32歳。40代の月間1000万円プレイヤーも誕生している。大人の余裕を感じたい女性客が増えているのである。
「若くないと稼げないわけじゃなくなったいま、ホストは転職先としてかなりイイと思うよ」(前出・ソラ)
自由や収入を求めてホストになった元サラリーマンたち。ちなみにホストはサラリーマンとの兼業バイトも可能なので、気になった方は一度体験入店に行ってみてはいかがだろうか。
佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
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『FRIDAY』2022年7月8日号より