キャバクラ通いで三段目降格 元大関・朝乃山「驚きの謹慎生活」
観客もまばらな会場で、土俵に上がったのは午後0時半過ぎだ。締めているのは、幕下以下がつける地味な黒いまわし。だが強さは圧倒的だった。相手力士を得意の右よつでねじ込むと、わずか3秒ほどで寄り切る――。
7月11日、元大関・朝乃山(28)が418日ぶりの本場所の土俵を白星で飾った。取組後は、報道陣へ神妙な表情でこう語っている。
「許されたわけではないですけど、土俵の上で戦っていく姿を見てもらいたいです。応援、信頼を取り戻していきたい」
朝乃山のスキャンダルが発覚したのは21年5月だ。『週刊文春』が朝乃山のキャバクラ通いを報道。新型コロナウイルスが感染拡大し、相撲協会が外食を禁じていた中でのコンプライアンス違反だった。
「東京・神楽坂のキャバクラに、朝乃山が気に入っている女の子がいたんです。多い時は、週3回通っていたと思います。朝乃山の本名は石橋広暉なので、『バッシー』と呼ばれていたとか。
報道後、相撲協会の心証を悪くしたのが朝乃山の対応でした。芝田山・広報部長や尾車・コンプライアンス部長らが『こういう記事が出るけど大丈夫か?』と問いただすと、『事実無根です』と頑なに否定。辻褄が合わない部分が多いので再度聴取すると、『すいません』とキャバクラ通いを認めたんです」(相撲協会関係者)
若手に交じり稽古場を掃除
相撲協会は事態を重くみて6場所の出場停止と6ヵ月の報酬減額50%の処分をくだし、朝乃山の謹慎生活が始まる。処分から1年超……。三段目まで降格した朝乃山が、再び土俵に戻ってきた。
「元大関だからといって、特別扱いはありません。幕下以下は関取ではなく、力士養成員という立場です。同然付け人はつかず、身の回りのことは1人でしなければならない。
朝乃山は稽古場をほうきで掃除し風呂場を洗うなど、若手に交じり雑用をこなしています。食事の際は、配膳もしているとか。治療など特別な場合を除いて、近所のコンビニにも行けなかったと聞いています。大関時代は月に250万円あった給与も、現在はゼロです」(同前)
朝乃山に、さらなるショックが襲う。昨年6月に祖父が、続いて8月に父親が亡くなったのだ。一時は気力が衰え、引退も頭をよぎったという。
「支えてくれたのは恩師たちです。師匠の高砂親方(元関脇・朝赤龍)は『親御さんのためにももう一回がんばれ』と激励。高校(富山商)時代のコーチ中村淳一郎さんは、こう言って励ましたそうです。『絶対辞めるなよ。辞めたら応援してくれた周りの人に背を向けることになる』と」(スポーツ紙担当記者)
朝乃山は、四股名の下の名前を高校の監督で故・裏山英樹監督にちなんでつけた「英樹」から本名の「広暉」に変更。その理由を「不祥事を起こし先生の名前を名乗れない」と語っている。再起の白星後、朝乃山は報道陣へこうも話している。
「お客さんたちに1年間待ってもらいました。もう一度相撲を取らせていただけることが、すごく嬉しい」
己の甘さから地獄を見た朝乃山。屈辱をバネに再び大関を目指す。
- 写真:共同通信社 アフロ