空気階段・水川かたまりが明かす「賞レースで勝つコントの作り方」 | FRIDAYデジタル

空気階段・水川かたまりが明かす「賞レースで勝つコントの作り方」

独占インタビュー KOC(キングオブコント)王者 ウケる回数よりも一発の大きさ、客層を見ながら言葉を変える……

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売れっ子になっても水川の穏やかでちょっとシャイな性格は全く変わらず、芸人仲間からも愛されるキャラだ
売れっ子になっても水川の穏やかでちょっとシャイな性格は全く変わらず、芸人仲間からも愛されるキャラだ

「休みは全然ないなぁ。『キングオブコント』(以下KOC)で優勝してから3日だけ。(相方の鈴木)もぐらの誕生日と、もぐらの次男の誕生日と、もぐらの家族旅行の日の3日だけ。ずっと変な感覚なんだよね。現実味がないまま、テレビとかずっと出てる」

慌ただしくも充実した日々を送っているお笑い芸人「空気階段」の水川かたまり(32)。昨年10月、KOC決勝1本目のコント「火事」で史上最高得点をあげ、芸歴10年で王者に輝いたが、それまでの道のりは波乱に満ちたものだった――。

’15年、芸歴4年目にして空気階段はKOC準決勝進出をはたした。新人芸人は「芸歴5年で準々決勝進出」を夢見るというから、異例の快挙だ。ブレイクの背景には何があったのか。賞レースが本格的に始まるこの季節。王者が「舞台裏」を明かした。

「ネタの作り方を変えた。それまではまず『設定(シチュエーション)』を考えていた。ネタの設定をもとに面白いセリフ、やりとり、ボケを加えていくみたいな感じでコントを作ってたんです。

でも、3年目の途中くらいから”キャラクターを掘り下げよう”と考え始めた。『こういうネタの設定だから、こういうキャラが出てくるでしょ、こういうキャラが出てきたらこういうセリフが出てくるでしょ』と考えるようになってから劇場でのウケ方が変わった。芯を食ったウケ方をするな、って感覚がでてきて。KOCでもやっぱりウケた」

賞レースを勝ち抜くコツを掴(つか)んだように思えた翌’16年は、一転して2回戦で敗退してしまう。

「準決勝に行けたことで、『何をやってもウケる無双状態に入った』と思ってしまった。慢心があって……。ものすごくすべって落ちた。気が緩んだわけではなくて……。ネタの選び方に慢心があった気がする。

その時のネタは、もぐらが一言もしゃべらなくて、ツッコミもボケもない。かなりトリッキーなネタを選んでしまった。『そういうネタをやっても勝てるでしょ』と思ってしまった」

水川はしっかり笑いをとらないと、前へは進めないことを知った。

’18年、3年ぶりに進出した準決勝で、空気階段は、「電車のおじさん」「クローゼット」の2本のネタで会場に爆笑の渦を巻き起こした。

「絶対に決勝行った! と思った。会場のウケもすごくよかったし。でも行けなかった。ネタバトルや賞レースで納得がいかなかったのは、あの1回だけ」

その夜、水川は飲めない酒を飲んで酔っ払い、正体をなくした。その姿を見た当時の彼女からも別れを告げられた。

「私生活がダメだと何もやる気が起きない。ネタも書かなくなったし、お笑いのことも考えられる状態じゃなかった」

水川はボロボロの状態だったが、お笑いファンの注目は”謎の準決勝敗退”で一気に高まっていた。

「お客さんの期待感みたいなものをすごく感じるようになった。『僕たちは注目されている』と思った。同じネタをやっても食いつきが全然違っていた」

決勝の舞台で空気階段を見たい――。そんなファンたちの熱は翌年までまる1年、ずっと続いたという。

翌’19年、空気階段は初めて決勝に進出し、9位。’20年は3位。もう優勝は目前まで迫ってきた。

そして昨年。1本目の「火事」で水川は、登場人物の名前を準決勝の「つじむら」「かごむら」から、「やまさき」「さきやま」に変えている。

「それまでは『モー娘。』からとってたんだけど、耳馴染みがないでしょ。決勝はシンプルにテレコ(互い違い)にした。準決勝と決勝だとお客さんの層が少し違っている。準決勝は、お笑いのコアなファン。とんがった言い方やひねった言葉でも受け止めてくれる。決勝のお客さんは抽選で当選したお笑いのライト層。柔らかい言い回しとか、わかりやすい言葉にしたほうが伝わると思った」

史上最高得点をあげたものの、水川には不安もあった。

「2本目のネタは、もぐらがセグウェイに乗り続ける『メガトンパンチマン』。万一セグウェイから落っこちたら終わりだなって思ってた。『火事』がめちゃくちゃ動くネタで、もぐらの体力消耗が激しい。実際ライブでもこの2本を同時にやった日は、あんまり出来がよくなかった。じつは2本目の前、もぐらは『途中で降りるかもしれない』って言ってた。失敗して落ちるより、途中で自分から降りる安全策をとろう、という話までしてた」

火事場のクソ力というのだろうか、もぐらはしっかりセグウェイに乗り続け、空気階段は悲願を達成したのだった。

結局、賞レースで勝てるコントとはどういうものなのか。

「いいコントと賞レースで勝てるコントは違う。いいコントってべつに爆笑がなくてもいいわけだけど、賞レースに限っていえば、”大きい笑い”を起こした人が勝ち。笑いの量に一番重きを置かなくちゃいけない」

笑いの量とは、笑いが起きる回数なのだろうか。一発の大爆笑なのだろうか。

「どっちかっていうと、(回数よりも)大きさかな。あとは構成も大切。大きい笑いが最初にきて、その後は小さい笑いが続くっていうのもアレで……。右肩上がりを狙うというか、最後まで面白いものを作るべき」

ところで、水川は、”燃え尽き症候群”になっていないのか。

「全くない。賞レースが苦痛に感じることもあったから……。じつはKOCは去年が最後っていうのは決めてた。超すっきりした。本当にもう超すっきり。『戦いは終わった』って感じ」

これからは単独ライブを毎年続けることが目標だという水川。これからも面白いネタを書き続けていくのだろう。

「コントについて、未来について」120分語りつくした!
水川かたまり・FRIDAYGOLD特別インタビューはこちらから

『FRIDAY』2022年8月19・26日号より

  • 取材・文いけるか小机PHOTO東山純一

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