ホストクラブの入り口に大金を置いて帰る女の「意外な動機」 | FRIDAYデジタル

ホストクラブの入り口に大金を置いて帰る女の「意外な動機」

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま…… 第25回

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友人から借りた札束を持ってはしゃぐ筆者。歌舞伎町には大金を持ち歩く女性も多い
友人から借りた札束を持ってはしゃぐ筆者。歌舞伎町には大金を持ち歩く女性も多い

歌舞伎町にはさまざまなお金の使い方をする女性たちがいるが、なかでもとりわけ不思議な存在なのが、今年で28歳になるモエカ(仮名)だ。何と彼女は、ホストクラブに”入らない”で、レジに大金を置いて帰るのである。少し前には、100万円を店に入らずに置いてきたらしい。店に入らず使う、とはいったいどういうことなのか。

「担当のホストが、あと100万円売り上げ足りないって言うから。飲む気分じゃなかったから、キャッシャー(精算を行うカウンター)にポンってお金置いて出てきた。お金使ったって事実があればよかったんだよね」

モエカは関西出身。高校卒業後に会社員をしていたが鬱になり、その後特に目的もないまま上京し、風俗で働いて稼ぐようになったという。

「もともと整形したいって思ってたのもあって、整形費用を稼ぐために風俗を始めた。夜の仕事をしている子たちとツイッターでつながって、そこからホストクラブ誘われて……。めちゃくちゃありきたりなパターンかもね(笑)」

当時、担当ホストに頼まれて毎月150万円ほど使っていたというモエカ。その後別のホストにハマり、2年以上指名し続けた。

「ひとめぼれしちゃって。本当にきれいな顔だな〜って思って。私もともとLINEとか苦手だし、日常会話とかいらないから、ホストクラブ行っても全然しゃべらない。向こうからしたら何にお金使ってるのかわかんなかったかもしれない(笑)。でもホストにハマるようになってから、風俗の稼ぎは確実に上がったと思う」

吉原の高級ソープで人気嬢として働いていたモエカだが、さらにお金を稼ぐために、デリヘルの掛け持ちや海外出稼ぎなど、あらゆる稼ぎ方を試したという。

「ホストクラブでめっちゃ使う! って目標があると一応働く意味があるっていうか。働かないと暇だし。お金の使い道ないのに働いちゃう。ソープが休みの日は出会い喫茶行ったり、パパ活やったり。ホスト行くか、寝るか、オジサンと会ってるかって感じ」

そんなモエカがハマるホストとは、一体どんな人なのだろうか。

「ちょっとぶっ飛んでる人のほうがいい。変な色恋営業をしてくるんじゃなくて、予想できないような突拍子もないことして振り回してくれる人。あと年齢的に結婚も考えちゃうから、そういう話されると少し弱いかも……。でも基本売れっ子しか好きにならないな。ぶっ飛んでる売れっ子。で、自分がエースになれないような感じ」

エースとはホストにとっての一番の「太客」のことを指す。モエカにとってホストにお金を使うのは、「エースを目指すゲーム」に近い感覚があるという。ゲームだからこそ、彼女はホストクラブに”入らない”で、レジにお金を置いて帰ることもするのだ。

モエカの例は極端ではあるが、歌舞伎町には、「お金をただ使うこと」が目的化している女性が少なくない。これだけお金を使っている、消費しているという感覚は、自らがそれだけ稼げるという存在価値の裏付けにもつながっているのではないだろうか。

最後にモエカに、「ホストに何を求めているの?」と聞いたところ、彼女は少し考えた後「思考停止」と言った。ホストクラブに通う女性はなかなかどうして奥深い。

佐々木チワワ

’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

『FRIDAY』2022年8月19・26日号より
  • 取材・文佐々木チワワ

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