「S8」とは…いま「交際クラブ」に登録する女性が殺到するワケ
現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま……第27回
若い女性の間での小遣い稼ぎといえばパパ活が隆盛だが、コロナ禍でじわじわと人口を増やしているのが「交際クラブ」である。「身バレしません!」「会員制なので安心!」といった謳い文句に誘われ、最近は、女の子のほうが多すぎる供給過多状態にまでなっているという。
交際クラブとは、いわば「会員制のデートセッティングサービス」であり、女性は無料でクラブに登録、男性は会費5万〜50万円ほどで女性にデートのオファーを出すことができる。会費の高い会員になればなるほど、出会える女性のランクも上がる。交際クラブによってその内容は様々だが、男性の身分調査・年収審査等もあり、女性からすると「リッチで紳士的な男性と知り合える」という利点がある。男性からしても、「ハイクラスな女性とリスクなく遊ぶことができる」というわけだ。
男女双方にとって都合が良さそうだが、その実態はどうなのか。交際クラブ歴2年のアヤカ(22、仮名)が、その最新事情を語る。
「新規で登録すると一気にオファーが来て、そこで継続的なパパを見つけないとキツい感じかな。一度オファーが来なくなったら、その後もほとんど来ない。だから交際クラブを転々としたり、水商売とか風俗と掛け持ちしてる子も結構多いよ。主婦で何となく登録してるって人もいる。『芸能事務所直結』とか謳っててレベル高いところもあれば、『様々な女性が在籍』って言ってほとんど全員採用しちゃう店舗もある」
交際クラブでは登録後、女性会員には見えない形でランクが決められ、セッティング料金が設定される。ある人気の店舗では、そのうえで女性の「タイプ」を相談して決めているという。「タイプA:食事だけ希望」「タイプB:初回は食事だけ。気が合えば2回目以降のデートで交際に発展する可能性あり」「タイプC:初回デートから交際に発展する可能性あり」「タイプD:初回デートから交際に発展したい」という具合だ。
この「交際」というのはつまりはセックスのことである。交際クラブが売春を斡旋するのは違法なため、あくまでクラブは「デートのセッティング」までが仕事。その後のセックスはあくまで「男女の自由恋愛」というテイである。
一方で、こうした「自由恋愛」の体裁を守っていない店舗もあるという。
「メールで会員に女の子の写真が届くんですよ。ホラ」
交際クラブに登録して3年になるというヒデキ(53、仮名)は、そう言ってスマホの画面を見せてきた。
「会員限定のメールには顔はもちろん、スリーサイズや趣味も書いてある。僕が登録している交際クラブはモデル級に可愛い子ばかりなんだけど、ホラ、写真の下に『S8』とか『S12』ってあるでしょ。これがその子たちのカラダの値段。Sはセッティングの略ってことにしてるけど完全にセックスのことなんだよね(笑)。交際クラブは大体食事+セックスで合計4時間が基本。4時間で8万円だと考えると、高級風俗より断然お得だよ」
パパ活アプリのような無法地帯ではなく、面倒なやり取りもなくタイプの女性とマッチングする。そう考えると交際クラブは男女の出会いの「手間」を省く業態といえるだろう。とはいえ交渉力がモノを言う世界ではあるため、男性がぼったくられたり、逆に女性がとりっぱぐれたりといったトラブルはつきものである。
佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中
取材・文:佐々木チワワPHOTO:Aflo