何十年も歌舞伎町に…52歳ホストが語る「働くのが楽しい」の意味 | FRIDAYデジタル

何十年も歌舞伎町に…52歳ホストが語る「働くのが楽しい」の意味

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま…… 第28回

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52歳現役ホストのKOKORO(本人)。ファッションには人一倍気を使っている
52歳現役ホストのKOKORO(本人)。ファッションには人一倍気を使っている

少子高齢化が叫ばれる昨今、若いイケメンばかりが在籍していると思われがちなホスト業界にも、若者に揉まれながら現役ホストを続ける中年男性がいる。

「KOKORO、52歳です。23年前、28歳の時にホストを始めました」

そう明るく語るのは、歌舞伎町のホストクラブ『ALICE』で働くKOKOROだ。「昨日は22歳の”先輩ホスト”に夕飯を奢ってもらいました。この世界では、年齢の上下ではなく、先に店に在籍していた人が先輩なので」と笑いながら、彼はその人生を振り返ってくれた。

「母がアパレルの仕事をしていて、その影響でファッション業界を志して田舎から上京しました。でも、業界の闇みたいなものに触れちゃって……。そんなときに、好きなファッションで働けて、全国からイケメンが集まるホストという職業を知ったんです。何より、僕は自分の本名が嫌いだったので、源氏名という違う名前で、違う人生を始められると感じたのが大きかったですね」

20年前のホストクラブは理不尽な上下関係があり、飲酒の強要や暴力沙汰が絶えなかった。しかしそれでも、KOKOROにとってホストクラブは居心地が良かった。結婚を考えて別の職業に就いた時期もあるが、最近、10年ぶりにホストを再開したという。

「相手の浮気が発覚して結婚が破談になりまして(笑)。昼の仕事を真面目にしていても結局裏切られるなら、嘘だらけの恋愛とセックスが溢れている歌舞伎町にいたほうが傷つかないし楽だなと。10年ぶりのホストはめちゃくちゃキツいです。今は寮に住んでいるし、指名も売り上げもからっきし。『お父さんより年上なんだけど(笑)』と女の子に言われながら仕事をしています」

周りのホストは20代が大半だ。指名もなく彼らのヘルプに就くことで糊口を凌いでいるという事実は辛くないのか――。そう聞くと、KOKOROは明るくこう答えた。

「若い子たちの中で、いかに自分が不調和な存在にならず、自分らしさを忘れずに接客できるかって考えるのが楽しい。若い子の趣味とかを知り続けられますしね。年齢関係なく、売り上げを上げた奴が偉いというのがホストの良いところ。今でも僕は上を目指していますよ。ただまあ、現実は体力が落ちてきてたりしていて昔のようにはいかないことも多く、そろそろ結果を出さないとマズいという危機感は常に感じていますが……」

寮で共同生活を送る若手ホストからも「バイタリティがすごい。いつも出かけている」と言われているそうだが、休日は何をしているのか。

「インスタ映えスポットに出かけるのが趣味なんです。飲食店や展覧会などデザインされた空間は、クリエイターの才能やこだわりを感じさせてくれる。インスタ映えスポットの話でお客様と盛り上がることもありますし、昼間の自由時間が長いホストという仕事だからこそたくさんの場所に出かけられて楽しいです」

何十年も歌舞伎町にいるKOKOROは、どこまでもポジティブだ。

「昔じゃ考えられないくらいの売り上げをたてるホストが続出しているのは面白いです。これからも最前線に立ちながら、この街で生きていきたいです」

体力の衰えを感じながらも懸命に日々を生きる52歳。酸いも甘いも噛み分けた「おじホス」ならではの魅力を、一度体験してみてはいかがだろうか。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。

『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

『FRIDAY』2022年9月16日号より
  • 取材・文佐々木チワワ

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