歌舞伎町女子が明かす「私が見た本当のクソ客」
現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま……第29回
俳優・香川照之(56)の「銀座クラブホステス暴行事件」には、歌舞伎町の夜職女性たちも大盛りあがりだ。
「高いお金もらってるんだから、このくらいのリスクは負うべきでしょ」
ネット上にはこういった香川を擁護する意見も少しはあるが、歌舞伎町女子のほとんどは「こういう客いる!」と怒り心頭だ。歌舞伎町のキャバクラで働くアカネ(仮名、23)が語る。
「歌舞伎町のキャバは黒服も強面が多いから、香川照之みたいにブラジャー剥ぎ取りまでやる客はあんまりいないかな。でも、服の中に手を入れておっぱい揉んでくる奴は結構いますね。そこからさらにウザいのが、セクハラを嫌がると『ほかの子はサービスいいよ?』とか言ってくる客。じゃあそっち行ったらいいじゃん、ってカンジ」
セクハラ行為は当然のこととして、その他、キャバ嬢たちが例外なく嫌うのがこんな「クソ客」だという。
「『客扱いされたくない!』って言い出す人(笑)。何回か来てお金使ってくれてるならまだしも、初回からいきなり言ってくる客もいる。いやいや、こちらも仕事ですからってなる」
キャバクラと似たようなサービスで、現在都心を中心に流行しているのが「ギャラ飲みサービス」だ。アプリで任意の場所に女性を呼ぶことができ、一緒に飲むというシステムである。複数名の女性を飲み会に呼ぶこともできるし、1対1で買い物や食事を楽しむことも可能だ。
そんなギャラ飲み女子の間では、「自己中低評価男」が最も嫌われるという。ギャラ飲み歴3年目のミカ(仮名、25)が明かす。
「身体の関係を迫ってきて、ヤれないとアプリ上で女の子に低評価をつける奴。なかには、『勝手に時間を延長された』みたいな嘘の報告を運営にしてまで、女の子の価値を下げようとする人もいる。ダサすぎるよねー」
風俗業界における「クソ客」はさらに多様だ。本番行為を無理やり求めるような客から時間外サービスを要求する客などさまざまだが、最近、風俗嬢たちのSNSで盛り上がっているのが「60分フリー田中」というワードである。
60分のショートタイムで指名をしないで入る客のことで、「田中」というのは風俗を訪れる客のなかで最も多い偽名なのだという。つまり、「ショートタイム指名なしで入る客」のことを総称して「60分フリー田中」と呼ぶらしいが、なぜこの客が嫌われるのか。
「指名料金の2000円をケチるために、こっちがヒマで待機している時間を狙ってフリーで入ってくるの。で、部屋で会ったら、『〇〇ちゃん来ると思って狙ってた! ラッキー!』とか直接言ってくる。そんなに会いたいなら2000円くらいケチるなよって感じ。正直、相手が『フリー田中』だと、接客も手抜きになりますね」
挙げ句の果てに、泥酔して部屋で脱糞するまさに「クソ客」までいるというから驚きだ。
カネを払っているんだからと、水商売や風俗の女性をモノ扱いする男性客も少なくないが、そのカネはサービスに対する対価である。それ以上のことを強要したりすれば、当然、「クソ客」認定を受けることになる。
ちなみに、ツイッターで「♯クソ客のいる生活」と検索すると、さまざまなクソ客エピソードが見られるので暇つぶしに覗いてみてはいかがだろうか。
佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
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取材・文:佐々木チワワ