ずん飯尾和樹「暇すぎて床ズレするほど寝てた僕を救ってくれた人」
スペシャルインタビュー
伊東四朗、小松政夫、小堺一機や関根勤ら濃すぎる〝師匠〟たちの影響を受けて辿り着いた
芸能界での「ちょうどい〜い立ち位置」

「お笑い芸人になる前は、3ヵ月ほど劇団に入っていたんです。何を勘違いしたんですかねぇ。体のラインが出るタイツみたいな衣装でダンスの練習をしている時に、『あ、やめよう』って思いました(笑)」
そう苦笑いするお笑いコンビ『ずん』の飯尾和樹(53)が芸歴32年目を迎える今年、役者として大活躍しているのだから不思議なものである。
『ガリレオ』シリーズの映画第3弾への出演が発表されたほか、9月22日に放送開始のドラマ『5分後に意外な結末』(読売テレビ・日本テレビ系)では、モデルの莉子(19)と番組ナビゲーターを務める。
「初めて演技のお仕事を頂いたのは、’03年、『KinKi Kids』の堂本剛くん(43)主演のドラマ『元カレ』(TBS系)。八百屋の店主を演じました。
共演者は同じ事務所の同期『キャイ〜ン』の天野(ひろゆき)(52)で、当時は、関根勤さん(69)の舞台『カンコンキンシアター』でコントを一緒にやっていたので、全然緊張しなかった。『ドラマに出られるんだ!』ってワクワクするばかりでした」
その後、徐々に役者の仕事が増え、NHK朝ドラやドラマ『アンナチュラル』(TBS系)などのヒット作にも出演を果たす。今でこそお笑いと俳優業を両立し、”ちょうどい〜い立ち位置”を築いた飯尾だが、不遇の時代は20年にもおよんだ。
「若い時は地味過ぎてコントで舞台に出ても『見える透明人間』なんて言われていました(笑)。20代の頃はヒマでヒマで床ズレするほど寝ていましたから。同期の『キャイ〜ン』には、家が一軒建つくらい奢ってもらいましたねぇ。『キャイ〜ン』は結成してすぐに売れて、圧倒的な実力の差を目の当たりにしていたので嫉妬とかはなかったです」
しかし、『ずん』を結成して5年目の’05年に転機が訪れる。
「37歳の時、年末に忙しそうにしている『キャイ〜ン』と、喫茶店でのんびりしている自分を比べて、これじゃダメだと一念発起したんです。お笑いも演技もスタッフさんを信用して、もっと出し切っていこうと決意しました。
でも、すぐには結果が出ず、40歳になった頃、家賃も払えない状態になった。後輩芸人が立ち上げた清掃会社でバイトさせてもらいました。そうしてしのぐうちに冠番組を持った『ナインティナイン』、『ネプチューン』など仲が良かった同期や、昔仕事をしたスタッフが番組に呼んでくれて、徐々に食えるようになった。苦しくても諦めなければ何とかなるもんです。
幼少期に憧れた伊東四朗さん(85)や小松政夫さんのシュールなコントはお笑いを好きになったきっかけですし、様々な無茶振りでバラエティ力を鍛えてくれた関根さんや小堺一機さん(66)――そんな”師匠”たちに感謝、感謝です」
役作りも身近な人物や実体験をヒントにすることが多く、いろんな人に支えられていることを実感するという。
「『5分後に意外な結末』も、台本を書かれた作家さんが知り合いでご縁があったんです。女子高生役の莉子ちゃんにタメ口で話される先生の役なので、僕が学生時代の頃にいたそういう先生をモデルにしました。
今の技術についていけてない教師の役なのですが、実際に、僕自身いまだにガラケー。コロナ禍でのリモート収録では、現場に入ったばかりの22歳の子を〝先生〟と呼んで色々と教えてもらっていました(笑)」
芸人仲間やスタッフから愛され、不遇の時期も乗り越えてきた飯尾。”ぺっこり45°”の低姿勢で俳優としてもゆっくり大成するのだろう。



『FRIDAY』2022年9月30日・10月7日号より
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撮影:濱﨑慎治