年末年始の『まんぷく』、最優秀男優賞は菅田将暉にあげたい

作家・栗山圭介の『朝ドラ』に恋して 第6話

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『居酒屋ふじ』『国士舘物語』の著者として知られる作家・栗山圭介。人生の酸いも甘いも噛み分けてきた男が、長年こよなく愛するのが「朝ドラ」だ。毎朝必ず、BSプレミアム・総合テレビを2連続で視聴するほどの大ファンが、週ごとに内容を振り返る。今回は大人気放送中の『まんぷく』第12~14週から。

NHK連続テレビ小説「まんぷく」公式サイトより

辛かった年末年始のまんぷくロス

平成最後の大晦日。桑田佳祐とユーミンの胸騒ぎの腰つきに酔いしれ、タッキー&翼の卒業式を記憶した。年が明け、箱根駅伝に興奮を抑えきれず、お笑い番組を飽きるまで観ながら、餅とおせちをたらふく食べる日々。こたつライフを満喫する怠惰な正月に思い残すことはない……はずなのだが、何かが足りない。満たしきって膨張した胃袋ではなく、心の、ときめきの満腹中枢が満たされていないのだ。

番組終了三ヵ月前にして、まんぷくロスの予行演習とでも言おうか、初夢枕には咲姉ちゃんのみならず、『まんぷく』のキャストが勢揃いしたのである。筆者を含めたまんぷくロス予備軍にとって、1月4日の放送再開日は、なによりのお年玉となった。

立ち上がる菅田将暉

12週は波乱の幕開け。社員を夜学に通わせるための奨学金が給料に相当し、その分を納税していないから脱税と見なされ、萬平(長谷川博己)は重労働4年、罰金7万円の実刑判決を受ける。いわれなき罪による4年間の収監に、萬平は弁護士の東(菅田将暉)にその胸の内を嘆いた。

「でも希望は捨てないでください。どうか諦めないでください!」

頼りなさげだった東が目を赤くして萬平を鼓舞する。東は罰金7万円を支払うため東京の会社とダネイホンの販売権を売却することを提案し、萬平は渋々提案に応じ罰金が支払われた。しかし萬平と福子(安藤サクラ)にはさらなる悲劇がふりかかる。東京財務局から10万円の追徴課税を命じられたのだ。

東は萬平に、ダネイホンの登録商標と製造方法を売却し、会社を解散すれば財務局がどうすることもできないと提案するが、萬平は激高しながら反論した。

「社員たちはどうなるんですか。先生は所詮、他人事だと……」
「思ってません! 栄養失調の妹の命を助けてくれたのはダネイホンです。僕はあなたに感謝しています。だから今度は、僕が立花さんたちを」

そのひと言で萬平は東を信じ、すべて一任することを決意する。

「そしたらわたしも東先生を信じます。萬平さんと私は一心同体ですから」

福子の言葉に、東の正義心に拍車がかかった。

闘病中で余命わずかな三田村(橋爪功)と世良(桐谷健太)も、福子と東を支援すると約束する。無事、三田村に紹介された会社にダネイホンの登録商標と製造方法が12万円で売れ、『たちばな栄養食品』の社員たちの就職先も決まりひとまず胸を撫で下ろす福子たち。

しかし東京財務局は会社を差し押さえにやってきた。彼らを待ち構え、「会社を解散した」と告げる東に、財務局員、増岡(菅原大吉)は会社を売却した金を徴収しようとするのだった。

写真:アフロ

最期までカッコよかった三田村会長

13週。病室に見舞いに来ていた世良と東に、席を外して福子とふたりだけにしてくれと三田村が言った。

「福ちゃん。生きてさえいれば希望はある。負けるなよ。最後まで立花君を支えていけるのは福ちゃんだけや。どんなことがあっても笑っていなさい」

無理難題、頼み事ばかりしてきた福子に、これほどまでに想いを捧げる三田村には憧れを抱く。人生のラストシーンはこうありたいと、理想まじりの余談を挟まずにはいられない筆者をお許しいただきたい。

三田村の生れ変わりのように誕生した第二子。つかの間の喜びに湧く福子たち家族に、今度は東京財務局が福子の口座に入金された12万円の個人資産を差し押さえにきた。

「我々は進駐軍の命令に従っています」

強行する増岡たちに、東は萬平の同意を得て国を訴えることを決行する。財務局は東の事務所に強制調査として家宅捜査に入るが、東は動じない。もはや東は、新撰組の若き獅子、沖田総司ばりの腹の括りよう。刺し違えも辞さない孤高の艶気がただよう。

東は伝手をたどり、大蔵省主税局から各税務署に、“奨学金は非課税”という通達が出ていたことを確認し、萬平が不当逮捕であったことを確信する。しかし、それを責めたところで進駐軍は、“自分たちは日本の法律に従う必要はない”と開き直るだろうと東は眉をひそめた。すると、世良が「世間を味方につけるんや」とニヤリ。

「そんな通達があるにも関わらず、萬平くんが有罪判決を受けたと新聞に乗ったらどないなると思う?」

すかさず東が加勢する。

「戦争が終わって生活は大変なのに税金を取られ、国民は不満がたまっているはずです。そんな記事がでれば国民はきっと味方についてくれますよね」

世良と東がそれぞれ知り合いの新聞社に記事を掲載してもらうと、世論は萬平の不当逮捕に意を唱えた。東は、旗色が悪くなった国側に、萬平を釈放することを条件に訴えを取り下げると持ち出すと、進駐軍は難なく萬平の釈放を認めた。しかし萬平はそれを良しとしなかった。

「それは、この税金を払うと負けを認めるということですよね。嫌です。僕は訴えを取り下げません」

いつになっても釈放されない萬平に、福子たちは不安を募らせる。しばらく萬平の思いを胸に留めておいた東だが、福子には真実を打ち明けざるをえなかった。

「そうですか。そういう人なんです、あの人は。そうやないとダネイホンなんて作れません」

萬平の釈放、そしてインスタントラーメンの発明へ

福子は生まれたばかりの幸を抱いて萬平の元へと向かい、亡くなった三田村の言葉を伝える。

「生きてさえいれば希望はあるって。そやけど萬平さんに希望はありません。今のあなたは死んでしまっているんですもん」
「どういう意味だ」
「萬平さんは発明家です。みんなを笑顔にする、世の中の役に立つ何かを作りだすのが萬平さんの生きている証やありませんか。そやけど、ここにいたらそれはできない。ダネイホンのように、みんなを幸せにする何かを世の中に送り出すことが、あなたがいちばん、ほんまに、ほんまにやりたいことやないんですか」

言葉に詰まる萬平、状況を見守るしかない東。福子が続ける。

「これからのことを考えてください。源や幸が成長していくこれからのことを」

福子の涙の懇願に、正義感の強い発明家が、ひとりの父親に、夫に戻る。金網越しに幸と手を重ねる萬平が、ほどけた笑顔でそっと呼んだ。

「幸」
「あなたがつけてくれた名前ですよ。私の名前と合わせて、幸福」

萬平は訴えを取り下げることを東に告げる。

「福子と、子どもたちと、新しい人生を」

礼をいう萬平に、東が返した。

「礼を言うのはこちらです。立花さんからは、福子さんからは、たくさんのことを学ばせていただきました」

人はみな、教えられるのではなく、学ぶのだ。

萬平は釈放された。そして新たな風が萬平に吹きこんだ。新設される池田信用組合の理事長になってくれと依頼を受けたのだ。萬平は悩んだ末に引き受けることを決意した。『池田』という地がインスタントラーメン発祥の地になったことは史実が物語っている。

 

前回『朝ドラ』に恋して 第5話(第10~11週)はこちら

初回『朝ドラ』に恋して 第1話(第1~3週)はこちら

  • 栗山圭介

    1962年、岐阜県関市生まれ。国士舘大学体育学部卒。広告制作、イベントプロデュース、フリーマガジン発行などをしながら、2015年に、第1作目となる『居酒屋ふじ』を書き上げた。同作は2017年7月テレビドラマ化。2作目の『国士舘物語』、3作目の『フリーランスぶるーす』も好評発売中

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