”山上徹也容疑者がモデル”映画の監督が明かす「なぜこの作品を撮ろうと思ったのか」
問題作『REVOLUTION +1』足立正生監督インタビュー
「あの日、僕は家にいて、テレビのニュースで事件を知って…」
2022年7月8日。安倍晋三元首相が、奈良県の路上で選挙応援の街頭演説中に銃撃された。
「第一報では生死は不明だったけれど、ああ、これは大きな、時代を象徴する事件だなと。これを映画にしようと、即座に思いました」
映画『REVOLUTION +1』の足立正生監督は、安倍元首相の銃撃事件の日をこう振り返る。
「ニュース速報が出てすぐに、新聞と通信社の記者から電話がありました。足立さん、なにか知ってますかって。そのうち、心肺停止の報が入った」
足立監督は1939年生まれ。映画監督としてデビュー後の1971年、「カンヌ映画祭の帰り道」にパレスチナへ渡り、ゲリラ隊に加わって共闘。パレスチナゲリラの日常を描いた映画『赤軍ーPFLP・世界戦争宣言』を製作した。その後日本赤軍に合流、国際指名手配をされ、1997年逮捕、2000年に刑期満了して身柄を日本へ強制送還されたという経歴をもつ。
作品は、安倍氏銃撃のニュース映像から始まり、タモト清嵐が演じる「川上哲也」の日常、母親が宗教に傾倒していった幼い頃の情景、彼の心のうち、銃撃に至るまでの日々が描かれている。
「実際の実行犯・山上徹也容疑者について、報道以上のことは知りません。もちろん面識もないし、彼の動機もなにもわからない。けれども彼は、個人で決起したんだと僕は思う。結果としての殺人は批判しますが、この社会に対する彼の切羽詰まった思いを、映画にしたかったんです」
事件発生から1週間で脚本を書き、1週間で撮影をしたというこの作品は、安倍氏の「国葬」に合わせて「ダイジェスト版」が緊急上映され、大きな話題になった。
この日のイベントには社会学者の宮台真司氏が登壇、「絶望的な日本。空洞化した日本で、暴走する自力救済」「安倍さんの死去によって瓶の蓋が取れた」と、事件と作品について語った。
なにが「革命」なのか
「レボリューション=革命」というタイトルを冠したその問題作が完成し、24日から各地で上映が始まった。
「最初は『星になる』という仮タイトルでした。その後、考えたすえ『REVOLUTION +1』としました。山上容疑者の実際の事件は、革命とはほど遠い個人的決起でしかないけれど、この作品は、ドキュメンタリーではありませんから。社会の底が抜けて、革命をやろうとした者も底が抜けて空っぽなんです。空っぽなまま、やってしまった。そんな『やりたいことをやった』ということだけを軸に作りました」
「革命ではない」今回の殺人事件をきっかけに、統一教会と自民党の癒着、五輪汚職などさまざまな問題がつぎつぎと明らかになった。
「実際の事件によって、世の中で隠蔽されているものが暴露された。この映画が、広く議論のきっかけになっていければいいと思っています」
国葬当日のイベントに参加した宮台真司氏は先月、何者かに襲われ重傷を負った。宮台氏は、この国の問題を直視し克服しなければ「これからも暴走は続く」と語っていた。
『REVOLUTION +1』が、衝撃の事件を題材に描かれた問題作であることは間違いない。山上容疑者は今も「鑑定留置」中だ。
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- 写真:代表撮影/ロイター/アフロ