『スッキリ』後番組『DayDay』は”朝番組戦国時代”で勝てるのか?日テレ戦略の「意外な不安点」 | FRIDAYデジタル

『スッキリ』後番組『DayDay』は”朝番組戦国時代”で勝てるのか?日テレ戦略の「意外な不安点」

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日本テレビ『スッキリ』の後番組として4月から山里亮太さんMCの『DayDay.』が始まることが発表された。4月から「朝の情報番組の時間帯」に大きな新しい動きが起きるわけで、目が離せない状態だ。

いったい何が起きているのか? そしてそれはどうしてか?…実は「釣り」に例えると分かりやすいのではないか、ということに気がついた。情報番組の制作経験がある筆者が、分かりやすく解説してみよう。

現在の「朝の情報番組」の構図/イラスト:まつもとりえこ
現在の「朝の情報番組」の構図/イラスト:まつもとりえこ

この絵を見てほしい。釣り人たちに人気の、とある「海岸沿い」だ。片方の端っこには「ニュースが好きな魚」が集まる釣りポイントがある。そしてもう片方の端っこには「ニュースが見たくない魚」が集まる釣りポイントがある。この海岸では、魚が多く集まるのはこの2つのポイントで、中間地点にはあまり魚は泳いでいない。

「ニュースが好きな魚」が集まるポイントにいる釣り人が「テレ朝・モーニングショー」だ。「ニュースが見たくない魚」が集まるポイントにいる釣り人は「TBS・ラヴィット!」である。この2人の釣果はなかなかだ。なぜならこの2つのポイントには、多くの魚が集まっているからである。ちなみに、「ニュースが好きな魚」の多くは高齢の魚だ。「ニュースが見たくない魚」には、比較的若い魚が多い。

そしてこの2つのポイントの間で釣り糸を垂れているのが「フジ・めざまし8」と「日テレ・スッキリ」だ。

かつてはこのあたりに「ニュースもそれなりに気になる比較的若い魚」が泳いでいた。しかし、残念ながらコロナ禍で完全に潮目は変わってしまったらしい。比較的若い魚たちは「もうニュースは気が重くなるだけだから見たくない」と思い始めたらしく、場所を移動して『ラヴィット!』のほうへ行ってしまった。だから残念ながら、この場所で釣っている2人の釣り人たちには、厳しい釣果が続いている。

いま、テレビ業界には「脱ワイドショー」の風が吹き始めていると言える。そのきっかけとなったのはやはり『ラヴィット!』の成功で、これを機に「視聴者、特に若い視聴者はワイドショーに嫌気がさしている」と思ったテレビマンが多いのではないか。昼の時間帯で賛否両論の話題を巻き起こしている『ぽかぽか』をフジテレビが振り切った内容としたのも、この潮流の中での動きだと思う。

そこで今回、日テレは「番組改編」をすることにした。まずは釣り人を、加藤浩次さんから山里亮太さんへと変更し、少し若くした。これで多少「若い魚が帰ってくるのではないか」と考えたのと同時に、出演料も若干節約したと思われる。

さらに「釣り竿」も新しいものへと変えた。「即興アンケートやチャットで視聴者のみなさんの意見もリアルタイムでトークに反映、スマホ片手におしゃべり感覚で見られる爽快・情報エンタメトークショー」(日本テレビのサイトより)ということで、若めの視聴者にウケそうな「新しい演出」という「新しい釣り竿」を使うことによって、釣果を上げようとしている。

私にとって少し意外だったのは、「釣る場所をあまり変えなかった」ことである。『ラヴィット!』のような「完全脱ニュース」路線はとらず、ニュースも生活情報も両方扱う番組方針としたのだ。「釣り人も釣り竿も変えたのに、スポットは移動しなかった」わけだ。いや、厳密には『ラヴィット!』寄りの場所に若干移動したのかもしれない。しかし一番の懸念点は「本当にその場所に魚はいるのか?」ということだ。

たしかに、いくらたくさん魚がいるからといって、突然TBSの真横、あるいはテレ朝の真横に座って釣りを始めても、良い結果を生むとは限らない。同じスポットの魚の取り合いになることは必然だし、「ニュースが好きな魚」を取らせたら「テレ朝・モーニングショー」に一日の長があるし、「ニュースが見たくない魚」を釣るのは「TBS・ラヴィット!」のほうがノウハウの蓄積がある。

ましてや、日テレは社風からして、「高齢の魚」を欲しがることは絶対にないだろう。ざっくりした説明をすると、テレビ朝日は「高年齢の視聴者から数字を獲得する」ことを得意としている会社だ。日本テレビは「視聴率をとることよりも、若年層に見てもらうことを優先する」方針の会社だ。だから、『モーニングショー』と同じポイントで釣りをすることは決してないはずだ。

だからある意味、日テレの考え方は真っ当と言える。「新しい漁場を開拓する」というのは前向きで素晴らしい姿勢なので、「その漁場に魚がいること」を願ってやまない。

あともうひとつ、老婆心ながら気になるのは、「スマホでアンケートやチャットをする」というギミックを取り入れて成功した番組の話をあまり聞かないことだ。

私はたぶん「テレビを見るときにそんな面倒臭いことはしたくない」と思う人が多いのではないかと考える。アンケートとか答えるのは面倒臭いものだ。テレビはボーッと見ていたいのではないか。実際、「スマホと連動して双方向」とか本格的にやっているのは、NHKの番組くらいだろう。

特に、午前中の時間帯は、主婦であれば家事をしていて忙しいし、仕事や学校に行く前の人たちもそれなりに忙しいから、なおさら大丈夫なのか? と思ってしまう。深夜ではなく午前中に「スマホ片手におしゃべり感覚で」見てくれる視聴者が果たしてどのくらいいるのか。個人的には心配だが、私も試してみたわけではないから、ぜひ成功することを期待しながら見守りたい。

ということで、大体の現状はお分かりいただけただろうか。こうした目線で、来たる4月改編「朝番組戦国時代」を観察していただくと、一層楽しめるのではないかと思う。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。江戸川大学非常勤講師。MXテレビ映像学院講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)。『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が2月22日発売。

  • イラストまつもとりえこ

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